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第24話【約束……したでしょ?】



「ご、ご主人様……耳加減はどうだニャン」


「ひゃぃ! とても気持ちいです……」

「ここ? ここが良いのね? ふぅ~」

「ふぁっ! 耳ふーはダメですぅ……」


 猫耳カチューシャを付けて、にゃんにゃんポーズをした優花ニャンがやってきたので、、わたしは膝枕をしてもらいながら、優花ニャンに耳かきで耳掃除をしてもらっていました。


「えーと、今更なんですけど……何で猫耳なんですか?」

「だって、百合ってニャンドローネが好きなんでしょう?」

「何で分かったんですか!?」


 ニャンドローネは私が好きな『原人げんにん』のキャラクターで、メイド服を着た猫耳のオートマタの女の子です。


 確かに、わたしが大好きなキャラクターですけど、優花さんが何でそんなこと知って――


「何でって……そんなのこの部屋を見たら言われなくても分かるわよ」

「あ……」


 言われて気づきました。


 そういえば、わたしの部屋はニャンドローネのグッズでいっぱいなんでした。

 本棚にもニャンドローネのイラスト本がありますし、他にもアクリルスタンドに、ぬいぐるみと並んでいます。


「でも、優花さん『原人げんにん』知っていたんですね」

「――っ! す、少しだけよ!」


 わたしがそう言うと、優花さんは顔を逸らしながらそう言いました。

 この反応……もしかしたら、優花さんも推しキャラとかいるんでしょうか?


「……てか、百合。貴方、落ち込んでいた割には元気じゃない? この私に膝枕で耳かきまでさせて……良いご身分じゃない?」


 確かに、今のわたしは優花さんの猫耳膝枕と耳かきのおかげでだいぶ落ち着いています。

 実際に優花さんが戻るまで、わたしは発作のように『ごめんなさい』を繰り返して泣いていましたが……


「……でも、あの真面目な優花さんが猫耳つけて、にゃんにゃんポーズまで決めて『かまって欲しい……にゃん』なんて言って来たら涙も全て引っ込んじゃいました」


 わたしがそう言うと、優花さんは恥ずかしくなったのか、猫耳を両手で抑えて顔を見せないようにそっぽを向きました。


「うっ……し、仕方ないじゃない! だって……これくらいしか、百合を元気にさせる方法なんて思いつかなかったんだもの……」

「なら、メイド服も来て欲しかったです!」


 ニャンドローネは猫耳メイド服のキャラなんで!


「そんなの持ってないわよ! 猫耳だけも付けてあげたんだから感謝しなさいよね!」

「あぁ~っ! ゆ、優花さん! 耳かきはそう言う使い方をしてはいけないで……ふぁああっ!?」


 むしろ、何で猫耳は持っていたんでしょうか?


 すると、わたしの顔を見て優花さんが話題を変えてきました。


「アンタの家庭の話……聞いたわ」

「だから、ですか……」


 ようやく、優花さんが何でこんな格好をしてまで、わたしを慰めようとしていたのか理由が分かりました。


 じゃなきゃ、まともな頭の人は『ゆ、優花ニャンだ……にゃん』なんて言いません。


「あのヤンキー達……百合がやったのよね?」

「……はい、話を聞かせろって呼び出されて……気が付いたらバッドを奪ってボコボコにしていました……」


 バッドを持つ姿が一瞬、お父さんが腕を振り上げる動作と重なった。


 そう思った瞬間、わたしは反射的にバッドを奪って彼らをボコボコにしていました。


 お父さんの時もそうだったけど、わたしは一度そうすると、相手が反撃してくるのが怖くして相手の反応がなくなるまでそれを繰り返してしまいます。


 その度に、頭の中でお母さんの声が頭に響いて……


「わたし、怖いんです……自分がお父さんみたいになってお母さんに嫌われちゃうんじゃないかって……」

「百合……」


「お母さんも……あの時、わたしが何もしなければ今もお父さんと離婚しないで幸せに――」

「それは違うわ!」


 再び声が震えて泣きそうになる私を、優花さんの声が現実に戻してくれました。

 そして、膝枕で横になる私の顔を抱き込むようにして頭をポンポンと叩いてくれました。


「百合、それだけは違うわ……。貴方の所為でお母さんが不幸になったなんて絶対に思っちゃいけない……だって、百合のことが大切だからお母さんは離婚してでも百合と一緒にいてくれたんでしょう?」

「優花さん……」


 それは優花さんにしか言えない言葉でした。


 優花さんの両親も離婚しているからこそ……離婚してお母さんを失った優花さんだからこそ出る言葉です。


 それを、わたしは優花さんに言わせてしまったんですね……。


「ご、ごべんなざい……」

「……いいのよ」


 再び泣きじゃなくって抱き着く私を優花さんは受け入れてくれて、その胸元にわたしの顏を抱きかかえ直し抱きしめてくれました。


「それに、百合。貴方わたしと約束したでしょう?」

「約束……」


 一瞬、わたしがどの約束だろうと迷っていると、抱きしめていた頭を引き離し、優花さんが『ムッ』とした顔でこう言いました。


「……忘れたの?『私のこと裏切らない』って約束したじゃない」

「あっ……し、しました!」



『だから、百合は……私のこと裏切らないでね』

『わたし達は家族ですから……わ、わたしは絶対に優花さんを裏切りません!』



 そうです! あれは初めて二人で同じベッドに入って寝た時の約束でした!

 そう思うとわたし、優花さんと家族になってから約束を沢山している気がします。


「私嬉しかったのよ? だから、私も百合を絶対に裏切らない……。例え、百合がどんな事を起こしても、私だけは百合のことを嫌いにならないであげるわ」

「優花さん……」


 なんだか、今日の出来事が一気に込み上げて、わたしは再び泣きそうになって、優花さんにしがみついてしまいました。


 それでも、優花さんはそんなわたしを抱きしめ返してくれて――



「……もう、本当に泣き虫のお義姉ちゃんね」



 そう言うと、優花さんはわたしの体を引き離してこう言いました。


「でも、寝るのはまだ早いわね」

「へ……?」


「だって、お風呂……まだ入ってないでしょう?」



 どうやら、寝るのはまだまだ早そうです。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――




おまけ【エイプリルフール】



「優花さん、優花さん! 聞いてください♪」


 四月一日、自分の部屋で勉強をしていると、なんかウキウキしている百合が部屋に入って来てウザったらしく絡んできた。


「……百合、なによ?」

「実はですね! わたし、優花さんのことが『《《大好き》》』なんです!」

「……へぇ」


 あえて、私が淡白な返事を返すと、百合がさも残念そうな顔をした。


「どうしたんですか? 優花さん、反応が薄いですね……」

「そうかしら?」


 まったく、今日がエイプリルフールだからって、子供じみたことを……まぁ、良いわ。


「百合、知っている? ウチの学校で前期末のテストで一位を取った生徒には純金製のピンバッチが貰えるのよ」

「え、そうだったんですか!?」


 百合はそういうと「じゃあ、優花さんが学校で付けているピンバッジは純金の……換金しましょう!」とか言って分かりやすく慌て始めた。


「……嘘よ」

「嘘なんて酷いです!」

「エイプリルフールなんだからいいでしょう?」


 すると、百合は私の言葉を聞いてハッとした顔をした。


「あ……っ! 今日はエイプリルフールだったんですか!?」


 ……え?


「何を言っているのよ……。最初に仕掛けて来たのは百合の方でしょう?」


「……はい? わたしは今日まだ何も『《《嘘は言ってない》》』ですよ?」



 ん? それって――



「…………へぇ」



「優花さん……何でにやけているんですか?」

「べ、別に……にやけてなんかいないわよ!」




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