学園編とかいう子供主人公によくあるアレ
コミックガルドさまにて本日(3/22)より『鬱展開大好き主人公VS優しい世界の』
コミカライズ版の連載開始です!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
すげー良いです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ということをお知らせするための更新です
なおペースはいつも通りクソかと思いますが、頑張ってこの章の完結まで書きますので、気長にお付き合いいただければ幸いです
ハローエブリワン。あまりにも可愛くて清楚な第三王子様こと俺である。
早速だが本題といこう。俺は今年十二歳を迎えるわけだが、うちの王族にはこのくらいの時期に行う恒例イベントが存在する。留学だ。
そもそも自国でも学校自体行ったことのない高貴で優雅な王族様なので、これは学業というより社会勉強の意味合いが強い。慣れない異国で自分の家臣や国民ではない同年代の人々に囲まれ、苦労と友情と勉学に励んできなさいね、という催しなのである。
おおなんということでしょう。つまり俺は日頃暮らしている王宮だの王城だのの賢く優しい人だらけの空間を合法的に抜け出し、よその国で多感な子供達の中に混ざって彼らの友情といがみ合いと成長と苦悩を間近で眺めても良いのである。
ファンタジー学園ものの定番といえばなんだろう?
特に理由のない平民いじめ、許嫁の居る人間がうっかり真実の愛に芽生えて起こる修羅場、いけ好かない教師のあからさまな依怙贔屓、ザル並の危機管理のせいで発生する傷害事件。
あまりにも素晴らしい。
待ち遠しいにも程があるぜ。
この十二年生きてみた個人的感想として、うちの国は何らかの理由で悪意が蒸発し消滅しているんじゃないかと疑いたいレベルで清いが、中心地から離れれば離れるほどに治安が多少は悪化していく。あくまで体感的なものなので実際に統計を取ったわけではないのだけれど、つまりよその国なら鬱展開発見率が高いと期待できるのだ。
そう、期待はできる。できるのだが。
「ライア様、本当に綺麗な町ですねえ」
「そうだなヴォルフ。綺麗で活気があって、良い町だ」
俺は心の中で虚無の顔をしながらも、現実の顔には良い子ちゃんの微笑みを貼り付けそう言った。
場所は隣国、アルニウラ王国。その首都にあるうちの国の大使館的なところだ。若干成り立ちや機能が違うが、大体大使館なのでまあこの呼び方で良いだろ。
俺は高貴で可愛い愛され第三王子なので、よその国に一年も住むとなったら当然大勢の護衛やメイドさん達が一緒に付いてくる。しかし留学の目的は社会勉強だ。側仕えをモリモリに引き連れて便利な邸宅で寛いでいては何の学びもない。
そのため留学先は、大陸の中でうちの次にデカくて歴史があって仲が良いこの国の、これまた歴史ある寮付きの学園になっている。ちなみにうちの国の学園にはこっちの国の王族が留学してくるので、多分平和な今と違って、最初は人質交換的な意味合いもあったんだろうなこの留学文化。
まあそんなわけで、ここまでの移動のために付いてきた大勢の人々のほとんどとは、入学式後にお別れだ。学園にはよその国の王族や貴族や大商人の子息も通っているので、国の威信をかけて警備されているし、設備も整っている。連れて行く護衛や側仕えは最小限というのがルールなのである。
ちなみに今居る大使館の部屋は、俺が学園に通っている間は数名の護衛さんとメイドさん達が維持することになっている。俺が休みの日なんかにここへ来て寛ぐ可能性や、急に帰る必要ができた場合を考慮してのことだ。
ここまで聞いて、きっと薄々おわかりになった方も多いことだろう。
そう、この国も治安が良いのである。
バカがよ!!!!!!!!!!!!!
いやバカなのは俺なんですけどね。そりゃもう常に俺なんですけど。
でもわかるだろ? 言いたいことはよ。
大使館の一室、俺のようなお偉いさんを泊めるための贅を尽くした美しい部屋の窓から眺めるアルニウラの王都は、それはもうきっちりしっかり発展し、豊かで明るい。
地球にある場所に例えるなら、このへんはロンドンに似た町並みだ。うちの国はファンタジーゲームとパリあたりが融合しましたみたいな王都なので、まあ若干の異国情緒がある。
大使館なんてもんを作るのは当然治安の良い貴族街なので、そのへんに浮浪者やヤク中やヤクザ者がウロウロしていたりはしない。そして学園にもその周辺にも、そんな人間は存在しない。発見され次第生徒の目に触れる前に、「お話」されたり「消毒」されたりするんだろう。穏便に追い払ってるんだろうなあという理性の声はこの際無視していい。
まあ、だから当然期待するべきは学園内で起こる揉め事なわけだ。いくら世界有数の名門校とはいえ、いや、だからこそ権威を笠に着たクズやそれに阿るクズ、血筋が取り柄のアホ貴族生徒なんかが居るはずじゃないか?
そんな期待を胸に、俺は今日入学前のちょっとした見学を済ませてきたわけだが、これがなんていうか、あのね。俺も長年ウルトラ優しい理想郷の箱庭みたいな国で生きつつ鬱展開を探す生活をしてきたからさ、そういう方面に対する嗅覚は鍛えに鍛えられているわけだよ。その俺の鬱展開感知力をもってしても、なんか、こう、とても穏やかで明るくて過ごしやすい空気ばかりが伝わってくるんだよな……。
いやいや、まだわからねえよ。見学した範囲は平和な雰囲気に満ちていたが、いじめとか権力闘争とかってもんは、外部から見えにくい水面下で行われるものだから。存在は全然ありえるから。
そう、ヤケになってはいけない……。俺の学園生活はまだ始まってすらいないのだ。可能性は無限大だ。
そう己を鼓舞して真面目な顔をしていると、当然のように学園にもお世話係として付いてくる予定のヴォルフ(十七歳美少年)は、子供の成長を見守る優しいお兄さんの顔でにっこり笑いかけてきた。
「ライア様、もう数日もすれば寮へお引っ越しですね。慣れないことも多いかと思いますが、私がしっかりサポートさせていただきますから、ご安心ください!」
「ああ、ヴォルフは頼りになるから、そこはもちろん安心しているよ」
「ふふ、光栄です! とはいえ寮生活はさておき、授業中などはお一人で過ごすことになります……。まあ、ライア様でしたらすぐにご友人ができるでしょうけれど」
「そうだといいなあ。……いや、弱気になってはいけない。自分から積極的に友達を作らなくては!」
「その意気です、ライア様!」
こうやってヴォルフは当然のように俺のことを爽やかに持ち上げてくれるわけだが、まあ実際、入学後は即取り巻き候補がいくらでも寄ってくることだろう。
それはそれで構わない。貴族や商人、あるいは学者を目指す将来有望な人間たるもの、有力者にはどんどんすり寄っていくべきだ。当然の心構えと言える。
しかし俺が構築したい人間関係は、友情! 努力! 勝利! の合間に鬱展開! が楽しめそうな、正統派な青春っぽい人々との付き合いなのだ。
勿論、これは簡単に見つかるものではない。だが俺はこれまでの人生の中で、問題が発生しそうなありとあらゆる場所へひたすら積極的に赴く、という愚直な戦法をとり、この世界においてはカスのような含有量である鬱展開および、そこからのハッピーエンドを採集してきたのだ。
トライアンドエラー、当たって砕けろ、七転び八起き。それこそ俺の身上である。
そのためにも、ひとまず最初は学園内の調査および、周囲の人間からの好感度稼ぎを徹底しなくては。
目指せ友達百人、そして探し出せ鬱展開。
最高に楽しい学園生活にしてやるぜ……!!




