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無題

 ほぼ強制という形で隣国にあるリカルドの城へ連れて来られた僕を出迎えてくれたのは、ふさふさな白髭を生やした優しそうなお爺さんだった。

 僕より少し背の高いその人を目に入れたリカルドは、じいちゃんと嬉しそうに声を張り上げながら駆け寄っていく。

 そこでもしかしてという予感が僕の中に流れた。

「カルダ! おれのじいちゃんだぞ」

 やっぱり!っていうことは物凄く偉い人というわけだ。

 感じるプレッシャーが半端じゃない。粗相をしでかして怒りをかったりなんてしたら無事じゃ済まされなくなりそうだ。

 ここは僕の礼儀正しさを見せつけて好印象を持ってもらわなくては。穏便、大事。

 初めましてとやや緊張気味に言いながらぎこちなく一礼する。

 そんな僕を柔らかな表情で見つめていたお爺さんは、その表情のままこっちへおいでと手招きしてくる。

 おっかなびっくりしつつも近寄っていくと、ぽん、と頭の上に暖かい何かが乗せられた。

 それがお爺さんの手だと理解するまでにかかった時間、3秒。

「いらっしゃい。リカルドのお友達くん」

 なんでそのことを知ってるんだと驚きのあまりズザザッと後ずさりしてしまった僕を見て、お爺さんは楽しそうに笑った。

 どうしよう。

 この人のこういう笑い方、僕の母さんに似てるんだけど。

 まずい。

 苦手だ。

 こんなところで話すのもなんだからと案内された客室は流石王族の城というべきもので。

 揃っている家具も一流だ。埃の一つさえ見当たらない。リカルドから聞いたところ、驚くことにこの城には魔道具が全くないらしい。その変わりに多くの使用人を雇っているんだとか。確かに、王族というのは人に囲まれて一生を過ごすということが人生の大筋だ。幼いころからこうして人とのふれあいを多く経験させておくのは決してマイナスではない。

 こうした処遇を目の当たりにすると、やっぱりリカルドって王子様なんだなあと思う。

 緊張から解き放たれた僕だけど、明日には改めてリカルドのお父さんとお母さんに挨拶をしなければならない。つまりこの国の王妃様と国王様に会うのだ。自分の国の王様にだってまともに会ったことないのに。父さんの場合は別だけど。ちゃんと挨拶できるか不安だ。

 その前にさっきのお爺さんにも挨拶をしなけれは。緊張のあまりろくに口も開けなかった僕を責めるわけでもなく、にこにこ笑いながら受け入れてくれたのだから。

 そんな風に考え事をしていた僕は、部屋の扉がノックされたことにも気づけなかった。

「失礼。聞きそびれたことが…」

「お、お爺さん?! はい、なんでしょう!」

 しまった声が裏がえって変に高くなっちゃった! しかもお爺さんとか素で言っちゃったよ。何もないってことはセーフなのかな。

「なに、そんなに緊張することもなかろうて。さあさ、そこに座りなさい。儂も失礼するよ」

「は、はい」

 互いが対面ようにしてソファに座る。そのふわふわな座り心地を堪能する余裕は今の僕にはない。

 母さん、本当になんで僕の遠征を許可なんてしたの。かわいい子には旅をさせよって言うけれどさ、国を越えるとか旅させ過ぎじゃないだろうか。もう少し規模が小さくてもいいと思うんだ。しかも連れの一人もいないなんて、よくよく考えてみれば可笑しいでしょ。出発する時はうまいこと母さんに言い含められちゃったけど、護衛の一人くらいは必要だと思うんだ。母さんの考えてることなんて僕には到底分かんないんだけどさ。

「あの、さっきはありがとうございました。リカルド…様の友人の、カルダと申します。挨拶が遅くなってすみません」

「いやいや。気にすることはない。儂はユルド。気軽にお爺さんと呼んどくれ。ほれ、さっきのように」

「お、お、お爺さん」

 なんだいとにっこり笑いかけてくれるお爺さんに懐の深さを感じた。

「孫が世話になったな。あんなに生き生きとした顔のリカルドを見たのは記憶に久しい。礼を言わせておくれ」

「いえそんな僕は何も」

 懐かれたので弟みたいだなと可愛がっただけです。

 お姫様もそうだけど、このお爺さんも凄くリカルドを可愛がっているようだ。慈愛に満ちた瞳でリカルドのことを語る彼からはこれ以上にない愛情を感じる。リカルドもお爺さんのことは好きみたいだったし。あれやこれやと世話を焼くお姫様と違って、きっとお爺さんはリカルドの好きにさせてきたんじゃないかな。僕の家にいた時、お姫様の愚痴は止まることなく溢れ出てきていたけれど、そこにお爺さんや国王様のことは含まれていなかったし。精々、怒らせるととんでもなく怖いということくらいだ。

 だから僕も、怒らせないようにと必要以上に緊張しちゃうんだけど。

色々と考えました結果、勝手ながら15話以内で一旦完結させようという結論に至りました。

残り数話となりますが、どうぞよろしくお願いします。

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