動き出す物語
こっから本番じゃあ
白色の消滅が消えた後には何も残っていない。
技が通常に発動したのならその通りになるのだが黒木は最後まできちんと技を発動していない。
「逃げられた?」
逃げられるというのはおかしい。研究室で無詠唱魔法禁止をかけた。
詠唱をする隙も与えていないとすると、
「外部から誰かが手助けした」
その可能性はあまり喜ばしくない。なんせ俺に気づかれずに研究室に穴をあけるなんて、そんな奴がいたら苦戦するかもしれない。
「まあ、いいや」
それにしてもさっきの奴あれで本気か?剣を使う必要がなかった。
弱すぎだろ。
「あ、あの」
俺が考え事をしているとイルデアに呼ばれる。
「どうした?」
俺はいつもどうり話しかける。
「その、ありがとうございます」
最後のほうは消え入りそうになっていたが、
「ちゃんとありがとうって言えるんだな」
傲慢そうな姫だったが案外素直らしい。
「な!私だってありがとうぐらい言えます!」
俺の言葉に憤慨する姫。感情の入れ替わりが早いな。
「おい、トウマ!」
アデルが駆け寄ってくる。
「おーい、もう終わったぞ」
がっ!
「お前なんで俺まで飛ばした!」
いきなり胸倉を掴んでくるアデル。
「なんでって…お前と同じくらいの強さってことは」
俺はいったん区切ってアデルの澄んだ色の瞳を見る。
「お前じゃ足手まといだ」
一瞬呆然としたアデルだったが。すぐに理解したようで手を離してくれる。
「なあ、アデル一つ質問いいか?」
俺は今回の戦闘で疑問に思ったことを言う。
「今、キリシカ聖国の勇者って何人くらいいる?」
「何人?勇者は一つの時代に一人だけだろ。あの召喚陣じゃあ一人しか呼び出せない」
アデルがこちらを不思議そうな目で見つめてくる。
「勇者は一人かあ」
俺はそういうとキリシカ聖国がある方向を見た。
キリシカ聖国 王城
「畜生!」
一人の男が高そうな家具を蹴り散らしていた。
その男は黒髪黒眼の男でさっきまで黒木と戦っていた男だ。
「まあまあ落ち着いてください。ヴィリスタさん」
男に話しかける黒髪の少女。小柄でかわいらしい容姿をしているがその魔力量はグランやアデル並みにある。
「これが落ち着いてられるか!なんだあの化け物!」
さらに憤慨する男。
「はあ」
そんな二人のやり取りを見ていた一人が息をもらす。
水を打ったように静まる二人。
「ヴィリスタ、お前はお使いもろくにできないのか」
「い、いやその、すまなかったよ……シカミ」
男は必死にその声の主に頭を下げる。
「いいんです、ヴィリスタ。確かにエルフの刻印持ちはほしい能力ですが、まあしょうがない」
ほっと息を吐くヴィリスタという男。
「しかし、失敗は失敗ですね」
「ひ」
短く男が悲鳴を上げる。
グシャ。男はそれ以上何もいわずに肉塊へとなる。
ばたりと男が倒れる。その倒れた男は頭のない奇妙な死体になっていた。
「さてと楽しみですねえ、魔族と聖国の戦争」
声の主はくくっと短く笑いをもらした。
魔王城
「なに?もう一度言え」
二人の男が豪華絢爛な部屋で話し合っていた。
二人の片方の男はグラン。銀色の髪に蒼い瞳の美少年。
グランは信じられないといった面持ちでもう一人の男を見る。
その視線を向けられている男はグランから目を離さずにいる。
もう一人の男はヴォルフ。金髪の優男。
優男はいまグランたちの前で見せないような険しい表情をしている。
「はい、ではもう一度ご報告します……天人族の何人かが人族に味方しました」
一息入れるので投稿が遅れるかもです。
ちなみに来週テスト週間です(涙)




