EP2-6. ティー・アフター・ミーティング
シルエはジュエルホーンの長老との話し合いを無事に終えることができた。
その後、自分とつながっている糸をたぐりよせてシルツー号へと戻る。
「シルエ、大丈夫だったかい。」
操縦席で待っていたタダヒロは戻ってきたシルエにほっとする。シルエが無事に戻ってきて、とりあえず良かった。丸腰で行ったシルエはすごい子だ。帰ったら、おいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげよう。
「うん、ばっちり分かってもらえたと思う。子供を盗んだやつらの情報も教えてもらった!」
「それじゃあ、ジラフ号に帰って皆に報告しよう。ありがとう、シルエ。」
シルツー号はジラフ号に戻り、タダヒロとシルエはジラフ号のブリッジへと行く。
「よぉ、戻ったか。無事に済んで良かったぜ。」
「ほんとですよ。よかった。ひやひやしましたよ。」
「おまえ、AIのくせにひやひやするのか。」
オーギンさんとチロルがシルエたちを出迎える。
「ジュエルホーンとの接触、お疲れさまでした。すごいです!彼らと会話していたなんて夢のようです。こんな時でなければ研究に活かしてみたいなぁ。」
ミハエルは興奮した面持ちだ。
「ただいま、みんな!」
「無事に戻りました。シルエがやり遂げてくれましたよ。これで前進できるとよいのですが。」
ブリッジのモニタには支部長のガンプが映し出されて、ビデオ通話となっている。
「シルエ君、ご苦労だったね。それで成果の方はどうだったかな。」
「うん、あの子たちにはわかってもらえたと思う。人のいる宙域に行くのも少し待つと言ってくれた!
「そうか、それは良かった。多少時間ができたということだ。それで子供を誘拐した者の特徴は何かわかったかね。」
「それはね。宇宙船としては中型サイズぐらいで、赤色だと言っていたよ。あとは2機小さい宇宙船もいたみたい。」
「なるほど、中型の宇宙船が小型の宇宙船の母艦だとみえるな。ふむ、君たちが行ってくれている間にこちらでも調べていたところ、この星系に宇宙生物を売る犯罪組織が入っていないか調べていたんだ。そこでわかったことがある。情報によればツンドラのサーカスと呼ばれる犯罪組織の宇宙船がこの星系に入っているという特ダネが上がってね。おそらくその赤色の船と関係があるだろう。」
「ツンドラのサーカスと関係があって、赤色の中型宇宙船だと!?まさか、レッドバルーン号のやつらじゃねぇだろうな。まさか、またあいつらと関わることになるなんて!まったく迷惑なやつらだ。」
オーギンは感情的になる。タダヒロは聞いたことがある名前だと思った。それはシルエを保護した後、シルエの存在に気づき奪おうとしたやつらと同じ船だと気づく。
「また、彼らと一戦交えるかもしれませんわね。」
アンナが厳しい声で言う。以前、ジラフ号の面々はレッドバルーン号と一戦交えている。そのときはなんとか撃退したが、次はどうなるかわからない。
「さて、もう一つわかったことがある。それはジュエルホーンの子供が小惑星帯の宙域を一匹で泳いでいるところが発見されたという情報も上がってきてね。知り合いの商船が偶然発見したらしい。理由ははっきりしていないが、誘拐した彼らから逃げてきたと推測される。」
「なんと、誘拐された幼体が逃げ出していたとは幸運だ。それではすぐに保護しなければ。幼体が一匹だけではワームホールでどこかに行ってしまう可能性がある!」
ミハエルは食い気味に反応する。
「その通りだ。群れとの交渉をしてきたばかりの君たちには悪いが、直接その小惑星帯に行ってほしい。」
モニター越しのガンプさんが申し訳なさそうにしている。
「オーギンさん、お願いします。幼体を保護しなければ。」
ミハエルはオーギンに振り向いて懇願する。
「あぁ、わかっている。子供を保護しに行く。それにレッドバルーン号のやつらが発見してまた誘拐するとも限らん。チロル、ジラフ号をその小惑星帯に向けてくれ。」
「アイアイサー!」
チロルは敬礼のつもりかドローンの体を左右に揺らしながら、返事をした。
ジラフ号は引き続いて、幼体の保護のため、その小惑星帯に行くこととなった。
小惑星帯に自動航行で向かっている間、ジラフ号の面々はキッチンルームで一息のティータイムを楽しんでいた。
「ミハエルさんはデザートで何か好きなものはありますか。と言っても出せるものはあまりありませんが。」
「デザートはなんでも大丈夫です。もしよければ紅茶をいただきたいです。」
「紅茶ですか。それならありますから少々お待ちください。今淹れますので。」
「ありがとう、しかし、タダヒロくんがこの船の料理人なんですね。この船の操縦士でもあるのに、兼任は珍しい。」
「ええ、だいたいはチロルが自動航行してくれますし、その間は暇でもあるので料理をしているのです。」
そう言いながら、手際良く紅茶を淹れていく。
「お待たせしました。ダージリンティーです。」
ミハエルの前に紅茶が入ったティーカップがおかれる。フルーティーの爽やかな香りとともにミハエルは紅茶を飲む。
「おいしい……。やっぱり暖かい紅茶を飲むとホッとしますね。」
「それはよかったです。僕もコーヒーよりは紅茶派なんですよ。」
リラックスしたミハエルを見て、タダヒロは満足そうな顔をする。
「いいや、やっぱり男たるもの、コーヒーだな。」
オーギンはコーヒーカップをかかげて自慢げにいう。
「オーギンさん、いくらなんでも言い過ぎですよ。」
タダヒロは笑いながら、その場にいる者たちと会話を楽しむ。だが、シルエが目の前のたっぷり詰まれたフルーツ入りのヨーグルトに手をつけず、タダヒロの方を見つめているのに気が付く。
「どうしたの、シルエ。僕の方を見て。ヨーグルト、おいしくなかったかい。」
「あっ。そ、そんなことはないよ。おいしいよ!」
シルエは慌ててヨーグルトを口へと運ぶ。口に入れておいしそうな顔をする。濃厚なヨーグルトの味とフルーツの酸味が合わさって、とてもおいしく感じる。シルエの大好物のひとつだ。しかし、食べた後も何かぼっーとしてタダヒロのことを見つめていることが多い。
「じゃあ、おかわりかい。いっぱいあるよ、作り置きしておいたんだ。」
「ううん、おかわりはいらない。」
「な、なんだと!?シルエがおかわりをいらないだと!なにか悪いことでも起きるんじゃないか。」
オーギンは雷でも打たれたかのようにびっくりする。いつもは食材が切れるかストップをかけるまで食いつくすシルエがおかわりをいらない。タダヒロも何か心配になる。
「気分でも悪いのかい。交渉で疲れたしね、無理はしなくていいし、ベッドで横になってきたら。」
「大丈夫だよ。体も元気だし!」
シルエは4本の腕を上下に振って、元気さをアピールする。シルエはぼっーとしている理由、それはまだタダヒロへのプレゼントを決めかねているところだった。
その様子を見かねたアンナはシルエに助け船を出す。
「そういえば、タダヒロは最近何か欲しいものとかありますか。ほら、もうすぐ給料が出る頃合いでしょう。」
「えっ、そうですね。んー、今のところ、これが欲しいというものはありませんねー。」
いきなり話題を変えれられて、面を食らう。それでも、何か欲しいものがあるか考える。
タダヒロの趣味はラジオでベールボール中継、それもファンであるナナイロホエールズ戦を聞くことだった。だから、これといって、物欲があるわけでもなかった。
シルエの顔が曇りだす。
「あ、でも!ラジオの調子が少し悪くて買い換えようかと思っていました。」
タダヒロは思い出したかのように言う。
曇りだしたシルエの顔がぱっと明るくなる。顔に出やすいわかりやすい性格だ。アンナはシルエの方を向いてウインクする。シルエはアンナに抱き着いて、ありがとうと言いたいところだったが、すんでのところで我慢した。
「タダヒロ!」
「なんだい、シルエ。そんな大きな声を出して。」
「おかわり!」
「いきなりかい!はいはい、少し待っててね。」
シルエが急に元気になったのを見て、タダヒロはほっとするのであった。
一行は小惑星帯へ向かう。ひとりぼっちのジュエルホーンの子供を保護するために。
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