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メカナイズド・ハート 73話

眠いので寝ます。


「あと数十秒くらいは持たせてやる。」


そう思い口にしながらも全身が限界に近づきつつあることは明らかだ。


数万ドルはしそうな高価なドアはルーカスが背中を押し当てている中心部分とふちの部分では明らかな歪みが生まれつつある。


数本の大小さまざまな蝶番がかけられてこれなのだ。もしドアが細い入り口に置かれるのではなく、直接道路に面していたら数人の人間が同時にドアに直接体をぶつけることが可能となっていただろう。そのような状況になっていれば、ルーカスの優勢は維持されなかっただろう。


バンッ バンッ バンッ


現役の兵士であるルーカスですら一瞬体を硬直させて首をすくめてしまうほどの衝撃と音がドア越しに響く。


振動はドアを抑えるためにドアに触れている部分からどんな血液の流れよりも早く体の奥深くへと到達して背骨と脊椎を経由して脳みそまで揺らす。


くっそ


ルーカスは痛みと衝撃でクラクラとする頭を必死に覚醒させようとしながらも悪態をつく。


ルーカスは全ての理不尽と不愉快な物事に怒り狂っていた。


なぜ自分の妹が再開直前で動員されるのか?


なぜ自暴自棄となり必死の傭兵部隊に入隊したのか?


なぜ未だにウダウダと生きているのか?


そしてなぜ故郷スペインの植民地から遥か彼方のポーランドのためにドイツの地方都市で戦争をしているのか?


自分の人生のどこで間違えたのだろうかと走馬灯のように感情と記憶が湧き起こり、疑問符だけが残っていく。


しかしやり場のない怒りは走馬灯の中でも消えることはない。むしろ絶えず扉の向こうから押されることで、自分自身で押さえていた感情が溢れ出しそうになる。


必死さのあまり目を閉じて顔をしかめ、アゴの全ての力を使って歯を噛み締めている最中に、僅かに見える視界の中で必死に客や投石物で怪我をした店員を集めて2階を要塞化しようとしているベルが見える。


その姿を見てルーカスは己の体と心を奮い立たせると同時に怒りを一瞬で拭いさり、彼女が必死に行動している中で、嫌な方向にばかり考えが回ってしまう自信の愚かな脳みそを恥じた。


自らの行いに対する反省と健気に戦うエミーを見て、ルーカスの意思は蝶番のように硬くなる。


しかし、蝶番はルーカスと違い根本の部分で固定されているのみである。


しかし奇跡的に回避不能なはずの破滅が、ようやく到着した600kgの業務用冷蔵庫の到着によって防がれる。


「助かった。」


ルーカスの口からわずかに残された力が息を吐くと同時に、全身から体を張り詰めさせていたものが抜け落ちる。そんな死にかけの体から放たれた言葉はまず間違いなく彼と物言わぬドアと蝶番の感情でもあるだろう。

お疲れでございます。

長休暇を取りすぎたので今からペースアップしいくつもりです。

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