メカナイズド・ハート 68話
真面目回
ヤッホー!!
雄叫びを上げながらわれ先にとルーカス、エミー、セルゲイはタラップを駆け降りる。
書類仕事という難敵を打ち破った彼らに敗北はあり得ない。ホコリまみれの灰色のコロニーもバラの匂いがする虹色の楽園に感じる。
いまだ専用の跡が残るドックを走り抜け、検問を通過すれば自由な世界だ。
「30分後にレストランで集合ね!!」
「オッケー!!」
エミーと集合場所を確認すると駆け足で電子機器販売店や本屋を回り、面白そうな物を片っ端から購入して回る。
幸いにもドイツ人の優れた合理性の賜物か、全ての販売店がまとまっているため店を回りやすくて助かる。
「なんでこんなに道が空いてるんだろう?」
他の戦闘地域となったコロニーと違い、このコロニーは居住区の中心部でも人影は少なく、道を通る車はほぼ全て占領者であるポーランド軍の装甲車か警察車両だ。
おや?
ルーカスは大通りから横に入った小道に小さな人影が2つうずくまっているのを見つける。どこの国にもよくいるチンピラの類だろう。
「失礼、ひょこひょこもこもこ上着市場という店はどちらにあるか知らないかい?」
その小さな人影に声をかけてみるが反応がない。ふざけているのだろうか?不気味だ。
パチッ
ポケットに入れていた懐中電灯で真っ暗な小道を照らしてもピクリとも動く様子はない。違和感と不気味さは払えない。
「おい。」
片手で押してみると、その恐ろしい軽さに驚く。
蹴っ飛ばされたカラーコーンのように二つのコテッと倒れる。見れば少年と少女である。2人とも幾重にも分厚いボロボロの服を羽織り、道路のアスファルトよりも灰色の顔をしている。
「栄養失調か。」
少年と少女はそれぞれデメキンのような巨大な目を宇宙人のようにガリガリに痩せこけた体から突き出している。
ルーカスは片手を伸ばして少年と少女の顔を自らの方に向ける。彼らの目には光がなく、正気を感じさせない冷たい感触をルーカスの手に伝えるだけだ。
「うおっ。」
彼らの足元からゾワゾワチューチューとネズミが這い出してくる。屍肉漁りだろうか?家猫サイズにまでぶくぶくと肥えたネズミが溢れ出し、赤子すら数分で骨に変える強力な歯をルーカスに向けて自らの晩飯を守ろうと威嚇してくる。
名前も知らない子供2人の哀れな最後を目撃して良い自分はしない。
バキッ
ピッ
声にもならない悲鳴を上げながらルーカスの足元で家猫サイズのネズミが首の骨を蹴り折られて死ぬ。
すでに足の半分ほどを食い荒らされて骨を露出させている少年と少女には何の救いにもならないだろうが、ルーカスの感情によって体は衝動的に動きネズミを喰われるのを待つだけの骸に変える。
「こんなことをしても何にもならないのに。」
自分の行動をどこか他人事のように捉える言葉がルーカスの口から漏れる。
ネズミ大っ嫌い(ネズミーランドのネズミは好き)




