メカナイズド・ハート 177話
編隊を組み直した大隊は再び敵艦隊の頭上から奇襲を決めてやろうとゆっくりと移動を開始する。
残弾、推進剤ともに残りが少ないため慎重に突入のベストタイミングを見極めなければならない。
もしタイミングを見誤れば、十分に打撃力を発揮できず友軍の攻勢で敵艦隊が後退する前にすりつぶされてしまうだろう。たとえどれだけ部下たちが優秀でも全滅させたいわけではない。
「突入は命じられたが、突入のタイミングは命じられていない。こちらでタイミングを計ろう。良いな?」
「了解です。」
ぼーっと艦隊が右往左往して相互に砲弾とミサイルとレーザーを押し付けあう姿を数十分以上ぼんやりとみていると次第に形勢が明らかになってくる。明らかに友軍艦隊が押している。
というよりも敵艦隊が及び腰だろうか?
友軍艦隊が前に押せば押すほどゆっくりと後退していく。特に艦隊中央部は深く押し込まれており、ピザのように薄く延ばされている。剃刀一枚でも深く押し込めれば中央から突き破ることができそうだ。
「これは何もしなくても良さそうですね。残党狩りに参加しますか?」
「さあな、手負の獣に噛まれる趣味もないし敵が逃げればこちらも撤退するまでだ。・・・敵が逃げればだが。」
そして敵は逃げなかった。むしろ戦局は逆向きに作用する。
友軍艦艇は敵艦隊を突き破るために突出しすぎて戦列艦の戦列が乱れて正面火力で撃ち負け始めている。一隻が沈み、二隻目も沈む。二隻沈めば次は四隻とネズミ算的に沈む船が増えていく。
「こりゃあすごいな。」
「気楽に言ってる場合ですか?負けそうなんですが?」
「いや、もっと負けるべきだ。そうすれば敵も歯茎を見せてくれる。その時に奇襲しよう。」
「それは今では?」
「いや、まだだよ。もっと敵軍の追撃が緩くなってからだ。」
そうすれば敵も死にたがり以外は、勝ち戦で死ぬことをおそれて二の足を踏む。そう言おうとした瞬間にルーカスは機体を飛び出させる。爆発的な加速で後方にいた大隊各機は取り残されるも慌てて追いかける。
「隊長殿!?」
「今だよ!!ついてこい!」
ルーカスは罵声を吐きながらも、勢いよく敵艦隊の右翼の一角に向けてまっすぐ飛んでいく。
「目標は敵の艦隊旗艦だけだ!!」
ルーカスはデータリンクを開いたまま、敵艦隊の無数の戦列艦の中の一隻を捕捉して友軍機が射撃できるようにする。直後に後ろから追従してくる友軍機たちから無数の光が伸びて敵戦列艦の装甲にあたる。それを引き金にするかのように宙域が激しく光を発し始める。周囲の敵戦列艦が各艦50問以上の副砲をこちらに指向して猛烈な砲火を送り込む。




