メカナイズド・ハート 171話
「大隊長殿!!」
ルーカスが戦闘後に手近な友軍補給艦に立ち寄り整備と休憩を設けていると、副官のミリアム中尉が駆け寄ってくる。
「おうおう、どうした?報告はもう管制官から聞いたぞ?」
「方向ではありません、感謝を伝えにきました。」
「感謝?」
「はい。大隊長殿が援護していただけてなければ私は今ごろ生きていなかったでしょう。ありがとうございます。」
副官の感謝の言葉を聞いてルーカスは目をぱちくりと瞬かせる。長いことポッドパイロットとしてスペイン軍で、あるいはPMCでやってきたがプロパガンダ放送上の空想の国民以外からは感謝されたことなどはない。強いて言えば、街中を進む時に向けられる巨大な力に対する羨望と畏怖だけだろうか?
普段は市街地を民間人ごと粉砕する非人道的行為か、無音の宇宙で敵弾が眼前に迫りながら死を紙一重で回避し続ける連続である。
「そうか・・、こちらこそ援護してもらえて良かったよ。それに逸れた部下たちを集めてこの船の側まで誘導したのも君のおかげだ。君こそ感謝されるべきだよ。」
そう言いながらもルーカスは片手を前に差し出す。その手をミリアム中尉は握り返す。少し照れ臭く今更な気もするが、握手である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で、どうだったかね?」
慌ただしく士官達が無重力の中で飛んで回り、至る所で作戦計画や細かい技術的な課題についての会話を矢継ぎ早に進める中で艦長席に座るフリッツ・ハーパー中将は、そばに控えるペトラ・シュナイダー中佐に感想を求める。
「どうとは?」
「どうも何もないでしょう、敵パイロットを討てていないではないですか。あなたの実力はどうしたのですか?」
老将軍の言葉を聞いてはぐらかそうとするペトラ中佐は、即座に噛みついてきた老将軍の副官の言葉ではぐらかすのを諦めて真っ直ぐ向き直る。
「彼あるいは彼女は相当な実力を持っていると思います。しかし彼の部隊全体ではそうではありません。充分に一般部隊を投入できれば難なくつぶせます。サメ顔のついた敵エースとその僚機はこちらで引き受けますのでお気になさらず艦隊全体の指揮に注力してください。」
「ふん、そうは言うがね?先ほどの戦闘では彼の大隊が頭上から降りかかってきたせいで混乱したところで、正面から敵艦隊に押し込まれて撤退を強いられたのだ。次こそ討ってもらわないと困るのだぞ?」
「わかっております・・・。」
「ならよい。」
普段のらりくらりとばかりしているペトラ中佐の思わぬまじめな様子から本人が真剣に当たっていることを察して老将軍もその副官も追及を控え建設的な議論に話題を移す。




