メカナイズド・ハート 143話
「どちらにせよ、始まってみないとわからないか・・・。」
副官と教官二人を前にしながら、ルーカスはうつむきボソッとつぶやく。
そしてその答えは数日後にはわかった。
ルーカスが受け持つ訓練基地におよそ150名近い訓練兵が訪れたのだ。
「まじかよ・・・。ほんの数日前に大隊規模をたった数人で育て上げたのに、今度は連隊規模の150人近い訓練兵を育て上げろと?上の人間は本当に簡単に言うな。」
ルーカスは他の仲間たちと共に頭を抱える。
ここ数日も別にリラックスしていたわけではなく、新たに訓練場の一部だけでなく訓練場全体を借りることになったために引き継ぎと設備の確認で全員忙殺されていたのだ。
わずか数日の間に、周辺住民との打ち合わせ、憲兵隊との巡回の打ち合わせ、兵站局との訓練生のための食事やトイレットペーパーのような日用品やカミソリの刃と靴底に代表されるような消耗品の補充の打ち合わせ、設備補修の申請などを気が滅入るほどやっていたのだ。
その状況でさらに追加で150人分の書類仕事と打ち合わせを始めなければいけない。
以前はわずか2ダース(1ダース12コ)程度しかいなかった憲兵隊は周辺住民とのトラブルを恐れて、装甲車まで持ち込んでいる。それも戦場で使われるようなゴッツイ4輪駆動で一撃で人をバラバラにできる重機関銃もついている。
以前は数十着の服を届ければよかった兵站局は、ルーカスからの問い合わせをフル無視している。
どうやら向こうも、ルーカスの所属するPMCがいきなりこれだけの規模の訓練生を送ってくるとは思わず、対応できないために知らないふりをしているのだろう。
「服は民間からいくらか買い上げるか使い古されたものをもう一度使わせればいいだろうか・・・。しかし、何よりも問題は教官の数だ・・・、どうする?」
ルーカスは自分を落ち着かせて、名案を脳の底から救い出すためにも独り言をぶつぶつと続けて状況を整理すると同時に、自分の感情も爆発する前に開放する。
「訓練隊長どの、訓練生150名整列終わりました。」
ほとんど瞑想状態に陥っていたルーカスの脳に、副官が空気を読まずに語り掛けてくる。
「わかった、ありがとう。」
ルーカスはそう答えつつ、150名の前にある青色の安っぽい金属製の台の上へと一歩一歩階段を上る。彼が一歩上るたびに、目の前に整然と列を作り並んでいる訓練生たちの視線が集まる。しかし、この程度は慣れたものだ。
ルーカスは腹立たしさを込めた幽鬼のような目で、大勢の若いおそらく志願で集まったであろう訓練兵たちを睨めつけていく。
仕事を必死こいて終わらせてみたら、上はさらに期待して仕事を増やしてくるとかいう最悪の展開です。




