メカナイズド・ハート 141話
自分の執務室に帰ってきたルーカスを出迎えたのは副官といくつかの手紙、そして正式な命令書が一枚だけだ。
「まず手紙からみせてくれ、薄っぺらい命令書なんて厄介ごとに決まってる。」
「わかりました、コチラをどうぞ。」
そうして渡された手紙の一枚目は、セルゲイからの手紙だ。
彼の手紙は大尉への昇進祝いの言葉から始まり、直近の前線の空気、ルーカスの愛機が損傷したためルーカスの訓練基地があるコロニーまで送られるという連絡、隊の仲間たちの状況、ルーカスが残していった中隊がどーのこーのといった具合だ。
最後には締めで、じきにこの戦争も終わる。それまでの間、後方で業務を続けているようにとの言葉で占められている。
二枚目の手紙は、ベルからのものだ。
内容は淡白で全ての手紙の中で一番厚みが薄く、文章量も少ない。
しかし、その少ない文章量をカバーするかのように数多くの写真が入っている。
ベルが真顔でセルゲイと一緒にピースしているものから始まり、隊員たちが一列になって食事をトレーに入れて持っていく食堂の写真、卵をスプーンで割って上品に食べる整備兵たち。
酒の飲みすぎでぶっ倒れているエミーの写真、ミーティング室でセルゲイが大隊長として大隊のパイロット全員をまえに作戦を説明している写真(よく見てみれば、陰に隠れながらもエミーの顔や見知った仲間たちの顔も見える。)、ケチャップとマヨネーズのかかったホットドックに目を輝かせるエミーの写真も入っている。
どれも良い感じだ。
わずか1ヶ月と少しの期間しか隊から離れていないにも関わらず途方もない懐かしさを感じさせる。
「はあ・・・、いつまで俺はこんなところにいなければいけないのか。」
ルーカスは愛する人を戦場に1人で立たせている自らの罪深さと、持ち場を離れて彼女の元へと向かうことができない自分の立場を呪う。
「さてと・・、最後に締めを・・・。」
そう呟きながらも、ルーカスは待ちに待ったエミーの手紙を開封する。
手に取ってみると、その薄さと小ささに少しガッカリする。手で触ってみてもほとんど厚さを感じない。
恐る恐る、戦々恐々としながらも何とか気絶せずに手に取り開ける。
何も入っていない。
泣きそうになりながら逆さにしてみると、コロコロっと電子機器用のデータチップが出てくる。
「これは・・。」
慌ててルーカスはポケットの中にしまっていた携帯機器に差し込み閲覧を開始する。
わずかな間のロード時間も待ち遠しく腹立たしい。
映像が始まる。
「あー あー あー
もしもし〜聞こえてますか〜?
手紙を毎日送ろうと思ったけど、セルゲイが郵便物に制限を設定しているので、代わりに毎日の生活をカメラに取ってまとめて3週間後に送ることにしました。それじゃ1日目いくよ〜。」
映像を進めていくたびに涙がホロリホロリと流れ出す。




