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メカナイズド・ハート 14話

なんとか更新


4体の巨人が2手に別れて進んでいく増援の2機は真っ直ぐエミーとルーカスが今まで通ってきた道を全身する。


めちゃめちゃに重対戦車ミサイルを撃ち込まれたエミー機とルーカス機は敵陣地の死角に回り込むために数ブロック離れた位置にある大通りから進む。


現状取れる作戦の中ではもっとも最良の作戦であることは間違いないだろう。唯一の問題は敵陣地は既に移動しており、先ほどのエミー機とルーカス機の発砲でほとんど損害を与えられなかった。


つまり相手はこちらの動きに合わせて自在に陣地を設置する。それら陣地はお互いがカバーでき、相手の死角をならずつけるキルゾーンを設定できる。かなりの優位となるだろう。


「不味くないか?エミー、このままだとまた。」

「問題ないよ。」

ルーカスの常識的な質問に対して彼女は不敵な様子を含んだ声を発する。


彼女は何か自信がありそうだ。何が彼女にそこまでの自信を与えるのか?ルーカスはその理由を理解しようとしたが、諦めた。


彼女の方がベテランだ。それに自分はコロニー内戦闘の経験なんてない。大人しくスクリーンを凝視して敵影を探すことに専念しようとする。


別の大通りを進んでいく2機のポッド、グラソフスキー機とマリコフ機が先行している。ルーカスは旧式の赤外線カメラを拡大して倉庫、綺麗に並べられたフォークリフトとトラックの影を確認する。


先程攻撃を受けた地点との距離は既に6kmを切っている。1回1回機体が前に脚部を持ち上げては踏み下ろし、その度に機体は前進していく。


しかしいくら前進しても敵影を捉えることができない。そもそもいないのではないか?そう思ってしまうほど敵の影が見えない。


「逃げた?移動手段はいくらでもあるはず。」

「確かめる手段がない・・・。」

彼女はルーカスの質問に対してそう答える。確かめる手段がないのは間違いない、それはピッドの陸戦における決定的弱点だ。


「先程攻撃された地点から4km、あの大きな検問所で合流しておこう。」

「それが最良ですね、そうしましょう。」

「意義ありません。」

エミーの意見に対してグラソフスキー中尉とマリコフ少尉は同意を示す。


エミー機のセンサーが左右上下に駆動するのが止まった。彼女の機体はルーカス機の背後にいるが、彼の機体の背後に備えられた光学カメラからよく見える。


彼女は合流地点とその周辺の建物を確認しているのだろう、エミーの意識は明らかにスクリーンから離れている。


バアンッ ドカンッ


金属管が破裂するような音を立て、直後に爆発音が響く。


周辺を旧式のメインセンサーで舐めるように見てもわからない。


「クッソ!!食らった!!後ろだ!!」

一瞬誰の声かわからない。一瞬した後エミーの声であることを知る。

「エミー、今助ける!!」

ルーカスは怒鳴ると機体をその場でコマのように右脚部と左脚部の間の空間を軸にその場で右旋回し、彼女の援護をしようとする。


180度旋回して機体の正面を後ろに向ける。この動作にこの機体だと22秒かかる。本来は不自由を感じない速度だが、この状況下では致命的に遅い。


「クッソ!遅いんだよ!!」

ルーカスは腹立たしさから怒鳴り、奥歯を噛み締める。


そうだ。


ルーカスは名案を思いつく。実際には名案ではないが、ルーカスには名案であるように感じる。危機的な状況が彼に常識的でない選択肢を取らさせる。


ルーカスはその場に軸を置き旋回するのをやめる。彼は右の操縦スロットルを0に戻し、左スロットルを限界まで前に押し込む。


すると機体は右脚部を軸にして一気に機体を旋回させる。その勢いの速さに機体は一瞬バランスを崩しかける。


それだけでは済まない。全力で旋回させたルーカス機はその勢いに乗って勢い良く大通りの側にあった燃料車を吹き飛ばす。蹴飛ばされた燃料車は倉庫の壁に叩きつけられる、そして追撃とばかりにルーカス機の左脚部が横倒しになった燃料車に食い込む。

そして引き裂く。


燃料車も頑丈にできているが200トンの機械のフルパワー相手は無理があった。どうしようもないくらいに哀れな姿になった燃料車は血の代わりに大量のディーゼルエンジン用の燃料である軽油を撒き散らす。


撒き散らされた瞬間軽油は燃え始める。燃料車が引き裂かれた際に火花が散ったせいだろう。


危うさはあったものの機体はなんとか旋回を終える。その間僅か8秒。


ルーカス機のスクリーンには背部から火を噴き出している。しかし煙の量は少なく、火もずいぶん小さく見える。


「エミー、退いてくれ!!俺が仕留める。」

その声が聞こえたのか背部から火を吹きながらエミー機は横の倉庫に突っ込んでいく。


「どこだ!!ドイツ人の豚ども!!」

ルーカスは恋人を2度も目の前で撃たれることを許した自分への情けなさと怒りを憎しみへと変える。その大量の憎しみを目から撒き散らしながら敵を探す。


「クッソ!!!ふざけんじゃねえ、どこに隠れた!!」

敵影をただの一つも捉えられないことにルーカスは腹立たしさを見せる。何かの拍子にスクリーンに移された赤外線カメラの映像にぼんやりとした人型の熱を持つものが見える。真っ暗闇なコロニー内を照らす街明かりのせいで輪郭がぼやけた赤外線反応は溶け込んでしまう。


輪郭がぼやけているのは新型の熱反応低下迷彩を使っているからだろう。

「さすが特殊部隊、あんな高価な高性能迷彩装備を揃えるなんて。」

思わず怒りを忘れて驚いてしまう。


「でも。」


カチッ  シャアアアアッ


ルーカスが右操縦レバーのボタンの一つを親指で押し込むと、マガジン型の弾薬庫の中に沿われたレールを金属製のシャトルが走る。


指定された砲弾をシャトルが見つけると捕まえて、火薬を燃焼させる薬室まで砲弾を引っ張っていく。


この方式を使えば一発だけ打ち込みたい砲弾を選択して撃ち込める。選択された砲弾は榴弾だ。


カチッ


ドオオン


宇宙空間と違いコロニー内には空気がある。そのため砲の爆音は機体内だけでなく外でも大きく響く。

装甲を貫通するためのAPFSDSと違い榴弾は大爆発を起こすため砲弾であるため、弾速は遥かに遅く50%ほどのスピードもない。


しかし榴弾は劣っているわけではない。弾速が遅いのは弾頭を出来るだけ大きく作り、中に爆薬を大量に入れているからだ。


1km以上離れた地点にある倉庫の影に榴弾を叩き込む。派手な爆発が置き倉庫の壁の一部、コンクリートやアスファルトのかけら、屋根に使われている鉄板や車の窓ガラスまでも数十メートルの範囲で弾ける。


もし人がいたら粉々だろう。


着弾地点から半径5m以内の範囲はまだ煙で覆われており、そこに人間がいたらかけらすら残らないだろう。


「やったか!?」

赤外線カメラを通して見ようとするが熱反応は検知できない。


「クッソ死んじまえばいいのに。」

そう不平を言うと後ろを映すカメラに映像を切り替えてエミー機の損傷を確認する。


次の瞬間、カメラに小さな空を飛ぶ物体が映り込む。鳥と同じくらい小さく、しかし鳴きはしない。

ルーカスはそれが何かすぐにピンときた。


ドローンだ。


ドローンの先っぽには旧式の対戦車ロケット弾の弾頭がガムテープで備え付けられている。


「ああ!!」

彼が声を上げ終わる前に機体にドローンが突っ込み、ダメージを受ける。


爆発が起きると一瞬コックピット内を照らす光が消える。爆発が起きたことは間違いないが損失をどの程度受けたのかわからない。


ただ一つ被弾前と違いがあるとすれば背部カメラが見えなくなってしまったことだ。


「ルーカス大丈夫!?」

エミーの慌てる声で安心する。どうやら彼女は無事のようだ。


「大丈夫だよ。エミーもドローンで?」

「わからない、多分。」

背後にから攻撃を受けても無事だということは確実に彼女はドローン攻撃を受けたということだ。

それよりも強力な武器であればルーカス機もエミー機も戦闘能力を失っていただろう。


最悪の場合木端微塵になってしまう。


「どうする?」

「作戦に変更はないよ、前進して敵陣地を叩く。」

ルーカスの質問にエミーは答える。

前進あるのみ、敵が破壊されるまで前進あるのみ。


幸いにも体勢を整えて終えて進軍を再開したらすぐ敵と接敵した。


敵が重対戦車ミサイルを発射してきたためだ。

敵から発射されたミサイルの数は前回よりも少ない4発。その全てが真っ直ぐ飛翔してくる。


発射地点は右15度の6km離れた地点だ。コロニーは円柱形の構造物のため、道のりと直線距離には差がある。そしてその差は道のりが遠ければ遠いほど大きくなっていく。


そのためミサイルに発射点はやはり斜め上から飛んでくる。


「そこだな、吹っ飛べ!!」


カチッ カチッ カチッ


ズドン ズドン ズドン


榴弾が3発発射され、撃ってきた陣地とその周辺に爆炎と、少し遅れて煙が立ち上がる。しかしミサイルの誘導は続く。


ミサイルの発射機器から誘導装置が独立していて別の場所にセットされているのだろう。


「各機!!最大速度で距離を詰めろ!!お前もだルーカス、前進!!」

エミーの声が聞こえる。その命令に合わせて2にセットしていた左右操縦レバーを最大速度の8に押し上げる。


ギュイイイイイイイイイイインンンン


ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ

ズシンズシン ズシンズシン ズシンズシン


総重量200トンを超え、高さ20m近い巨大な機械が時速80km近い速度で疾走する。


静かに駆動していたモーターも異常な音を立て始め、巨大な足で踏みつけられたアスファルトやコンクリートは踏みつけられるたびに振動をコロニーに伝える。


ギギッ


振動で舌を噛まないように歯を食いしばる。

爆音と振動は何よりもルーカスの入っているコックピットに影響を与えた。


狭いコックピット、興奮からか機内温度からか?ルーカスの額には汗が出てくる。


まだ5km以上離れている。しかし全速力で走らせた成果が出てきた。

4発のミサイルの内、1発がこちらの動きを追い切れなくなったのか?急にミサイルに装備された羽が動くのをやめた。羽が動くのをやめるとミサイルは曲がらなくなり、地面に激突した。


しかし他3発は追いかけてくる。


カチッ


ルーカスは操縦レバーについているボタンの一つを押すと、すでに穴の開いたシールドで機体全面を守る。少しはミサイルの貫通力を衰えさせることができるだろう。


次々と3発のミサイルが着弾する。1発がエミーに、2発目と3発目がルーカスに。

両機が爆炎に包まれる。


ギギギッ


かみしめていた歯が被弾の衝撃ですれて不快な音を立てる。

1発目は機体表面で成形炸薬弾の弾頭が炸裂して、シールドを貫通して本体の装甲に食い込む。

2発目は胴体部上面の装甲に斜めから着弾する。


「くっそ!!」

ルーカスは被弾した事実に怒りを示す。


ミサイルはやり過ごし発射点は薙ぎ払うことができた。

しかし、まだコロニーをめぐる戦闘が終了したわけではない。この一連の戦闘はこのコロニーの港湾部倉庫区画での戦闘でしかない。まだこの先も長い戦いが続く。


「陸戦は地獄だな、本当に長く続く。どちらが有利なのかすらわからない。」

そうルーカスは言う、彼の胸の中は20時間を超える戦闘からくる疲れとすべてを投げ出してしまいたいというどうしようもない感情であふれていて、今にも零れ落ちそうだった。


4機は速度を落としエミーの命令のもと、周辺区画を赤外線、光学の両方で見まわして敵影を探す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


上陸部隊を山積みにした輸送船が到着し、歩兵や装甲車、戦車が大量に繰り出してポッドにはできない周辺の「制圧」を次々とこなしていく。

しかし増援に来てもらったグラソフスキー中尉やマリコフ中尉もエミーもルーカスも無事ではすまなかった。全員機体はボロボロでミサイルの被弾痕の無い部分はない。


「それでお前たちはそんな情けない姿か?」

上官たるライアンがポッドのコックピットから転がり落ちてきたルーカスとエミーを見て言う。


確かに二人の姿は情けない。埃まみれ汗まみれ、からだ中にパイロットスーツで防ぎきれなかったアザや切り傷ができている。


しかし二人の顔は安堵で彩られており、上官の癪に触る言葉は無効化される。


「大体、上官であるエミーが全体の指揮をとりきれていないのは大問題だ。」そうなっているんだ、そう彼は続ける。


彼の隣にはベルが、さすがに戦場では服を着ているが、一言も発さずにいる。顔をのぞき込むと穏やかな顔、すでに眠っているご様子。


「おい、ルーカスお前聞いているのか?」

「ハッ!!もちろんであります。」

ライアンが話しかけてきた。もちろん返事は「ハッ!!」一択、選択肢として「はい!!」も残されている。


「聞いていたのなら、俺が何と言ったか言ったみろ。」

「・・・すまない。」

「はあ〜、だと思ったよ。まあ良いコロニー内戦闘は下手くそだが、宇宙戦は上出来だった。」

彼はため息をついた後ルーカスの良いところ探しを行い、なんとか褒めてくる。


「機体はそこに置いておけ、修理させる必要がある。それが終わったら適当な民家で休んでろ。」

「「了解。」」

彼の命令に従っってエミーとルーカスは近場の市街地へと歩き出す。

居住者は皆スペイン人なので一部屋借りることは難しくないだろう。

ひと眠りできたらどれだけうれしいことか。

まだまだ初心者ですが対歩兵戦闘は自信があります。

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