メカナイズド・ハート 114話
※今回は特に差別的で人によっては不快になる要素があるかもしれません。ご注意ください。
「お前はいつまでウダウダとくだらない事を言い続けるつもりだ?」
頭上から、目を光らせながらぼんやりとルーカスのことを観察していたセルゲイの口から言葉が放たれ降ってくる。
「くだらない事?」
「ああ、民間人を殺すことなどは今に始まったことじゃない。対して気にしなくても良いんだぞ。」
セルゲイは気楽な口ぶりでルーカスを慰める。
しかし、その軽薄で無遠慮な口ぶりはむしろルーカスの神経を逆なでにする。ルーカスの手は怒りと腹立たしさでプルプルと震え、怒りはすぐに爆発する。
「人の命を何だと思ってる!!」
ルーカスはそう怒鳴りながら、パイプ椅子に縛り付けられた状態で体をバネのように跳ねながら体当たりする。拘束されていない状態と異なり、ルーカスの動きには素早さも重みもなく容易に受け止められるが、ルーカスの怒りはそこでは止まらない。力いっぱい手足を動かすため、ルーカスの体を拘束しているパイプ椅子はギシギシと音を立て丈夫なピアノ線と手錠すらもちぎれ落ちそうなほどだ。
「答えろよ!!どういうつもりだ!!」
ルーカスは、怒り心頭になりながら目の前にいるセルゲイを問い詰めるも、セルゲイは物静かにルーカスのことを変わらず見下ろしてくる。
その姿を見ていると、次第に先ほどまでクマですら殴り殺しそうな勢いで吹き上がっていた怒りのエネルギーは切れていき、むしろ自分が何をしているのだろうかと途方に暮れてしまい巨大な虚無感だけが残る。その様子を観察していたセルゲイは、ようやく再び口を開く。
「お前はいつまでウダウダとくだらない事を言い続けるつもりだ?」
その言葉に思わずルーカスは唖然としてしまう。目の前の男はルーカスの怒りや感情などはどこ吹く風、一切興味などなく仕事に極限なまでに冷徹で、機械の一部であり歯車のように正確であり続けることを誇りに生きてきた人間なのだろうと直感的に思う。
そしてその直後に思い出す。
「そういえばお前は人間じゃないんだもんな・・・。」
その言葉で初めてセルゲイの顔がわずかに動く。彼の口元がわずかに歪み、目がわずかに細くなる。
「漏らしたのはベルか?」
「ああ、ベルが教えてくれたよ・・・。」
その言葉を聞いたセルゲイは、そうだろうなという表情をし納得したように顔を縦に振った後再び表情を険しくして眼だけをギラギラと光らせる顔に戻る。
「おれが人間だとしても、同じことをお前に言うぞ。お前がいくら女々しく泣きわめいてくだらない事を言っても世界はお前のためにヨシヨシあやしてくれるわけじゃない。」
セルゲイはルーカスの頭上から厳しく挑発的で攻撃的なしゃべり方で言葉を放つ、その言葉で思わず顔を上げればこれまたいつもどうりのセルゲイの顔がある。全人類をなめ腐ったような心のこもっていないせせら笑いを口元に薄く示し、目元は一切笑っていない。
セルゲイは途方に暮れた様子のルーカスに対して話す。
「俺は何度も言うつもりもない。いいか?お前は男だ。他の民間人のことまで考えて過去のことを覚えて自分を追い詰めて苦しんで世界は不条理だと泣きわめいたところで、他の人間はお前のことは気にしない。気にしてもらえるのは女だけだ。」
セルゲイは、おそらく彼がルーカスに対して思っていたであろうことをツラツラと言葉を述べ続ける。彼の言葉は毒々しく攻撃性の高い怒りにあふれたもので、他者に対する不信感、侮蔑感を隠そうともしない言葉ばかりだ。
「そんなこと・・・。」
「そんなことばかりだ。それに女も気にしてもらえるのは、周りの男がその女とやりたいだけだからだ。」
否定しようとするルーカスの言葉にセルゲイはかぶせて話を続ける。そして、ひとしきり攻撃的で毒々しい言葉を吐き終えると、ニヤッと初めて表情を変えて猫なで声で口を開く。
「だからこそ、お前はエミーを大切にするべきだ。」
「そんなこと言われなくても大切にするとも。」
「そうか?警官にとびかかった時、エミーも撃たれかねなかったんだぞ?」
ルーカスの返答に再び挑発的な表情に顔を変えながら反論する。
「いい加減、エミー一つに絞って覚悟を決めるべきだ。わかるだろ?」
「わかった。」
一応今回で覚悟完了回?となります、




