現代日本の食料事情3
歓迎会が終わり、先生の指示で来た女の子が僕に与えられた部屋まで案内をしてくれた。
部屋に入りベッドに一直線に向かって横になると直ぐに睡魔に襲われて眠りについた。
白夜も一緒に部屋に入ったがどう過ごしたのかは知らない。
翌朝、目覚めると白夜の姿が無く、ボーと脳が目覚めるのをベッドの上で待っていると朝食を持ってきた白夜がドアから入ってきた。
どこか嬉しそうな顔をしている。そんな白夜と部屋にあるテーブルで朝食を頂く。
白米のご飯に味噌汁と梅干に果物と質素な朝食だった。
今日はどう行動することになるのかと部屋で考えていると、隼人さんが部屋に来た。
これからの事で先生が会議室で話をするので来てくれとのこと。
それに頷き白夜と二人、隼人さんの後に着いていった。
その隼人さんだが物凄く顔色が悪いのだが大丈夫だろうかと白夜と顔を見合わす。
「う~ん、頭いたい~」
「ア~!飲み過ぎた。ウッ!」
「………お前ら邪魔だ!会議室の隅で寝ていろ!直斗、こんな大人にはなるなよ」
僕達の目の前を二日酔いでグッタリとした隼人さんとミナホが、強制的に会議室の隅へと移動させられている。
あの顔色を見ていたのでやはりダメだったか。
ミナホも女性としてダメな部分を見せているのだがいいのだろうか?
この会議室に居るのは顔馴染みの5人だけ。
教室のように並べられた40席はある机と椅子、教壇と黒板がこの部屋にある。
会議室というより、学校の教室みたいだというのが僕の素直な感想だ。
乱暴に会議室の隅に置かれた二人を先生は止めとばかりに軽く二人の頸動脈を押さえ気絶させていた。
「まったく、酒にのまれおって嘆かわしい。だがこれでしばらくは静かだぞ」
まるで生ゴミを見る目で二人に視線をむけてから先生は戻ってきた。
「さて、ゴミ……………二人は静かになった。さて直斗と白夜には今の日本の現状から話そうか」
先生はそう言うと日本地図を黒板にはる。
それを見ながら説明を始めた。僕達がいる場所は大昔は新潟県と呼ばれた山側に位置しているらしい。
日本地図を見ると大昔は何十県と日本の中に都市が存在したが、今は8つの区画にわけられ線が引かれている。
東京以外は都市というか建造物が存在しないらしい。動物や植物などの生き物も、もはや生存していないと先生は無表情で言った。
その8つのエリア。北海道と東北、北陸、関東、中部、関西、四国、九州、東京。
大まかに分けたこのエリアに東京に居る卑弥呼が異世界から連れてきた7匹?の力ある存在に与え支配させていると先生は言うが。
それになんの意味があるのかは謎であると聞かされると僕はガックリと首を落とす。
東京にいる卑弥呼と僕達がいる北陸エリアの支配者の冥竜王ヴァルサス。
日本地図にはこれ以外のエリアの支配者は?と書かれていた。
「先生。他の場所には僕達のような人達は居ないのですか?」
イマイチ、現状を理解できていない中で僕は日本地図を見て、これだけ広いなら先生達のように生き残りがいるのではないかとおもいきいた。
「さぁな、今は確認されてはいない。後で説明をするが、もし他のエリアに人がいても絶対にかかわるな。この場所を知られるリスクは避けろよ直斗。残念だが亜弥音の力でもヴァルサスの力には対抗できない。直撃をくらえば………ここにいる全員が死ぬぞ」
それが事実だというのは先生の瞳を見てわかったので僕と白夜は激しく頷いた。
それを満足そうに見て先生はさらに説明を続ける。
「今の日本の地上には人は住んでいない。卑弥呼がそう支配者達に命じたらしい。またこの地図を見てわかるが、海の向こうの大陸にも行けない」
「何故です?」
「卑弥呼がこの日本に出現した時に逃げられないように結界でこの日本の領海域をおおい閉じ込めたからだ。それから次に日本にいた全ての人間を卑弥呼は東京に集めた」
「………集めて何を?」
「少し考えればわかるだろう直斗。この世界に魔法なんて存在しない、お前はよくそのスマホで昔の記事を読んでたな?」
見られていた?確かに僕は昔の新聞記事などを読んでいた。
今になっては卑弥呼が造った世界の日本だったが、その世界で何故日本が今の状態になったのかを知っておきたかったから。
「卑弥呼が現れて日本人と戦った。それは知っているな?」
僕は頷く。
「その記事で戦った日本人は魔法を使ったか?」
「いいえ」
確かに卑弥呼は魔法を使っていたがその時代の日本人は銃や兵器を使っていたと書いてあった。
「それが答えだ」
先生はそれだけ言って僕が答えにたどり着くのを待っている。
この世界に魔法は存在しない、だが卑弥呼は魔法を使え僕達も魔法が使える………………。
「えっ、卑弥呼がわざわざ魔法の力を日本人に与えた?」
先生はニヤリと笑い拍手をして僕を見る。
「そうだ、卑弥呼は日本人全員を集め魔法が使えるように人体実験をした。赤子から老人まで使ってな!」
「………なんのために?」
「そこまでは知らん。私が知っているのは卑弥呼がその実験の結果、魔力の弱い者を東京から追い出しそこから逃げてきた人達がこの洞窟を見つけて住みついた。それが私達の先祖だ。この知識も先祖代々受け継がれてきた物にすぎないがな」
そう言うと先生は教壇の上に百冊は越えるノートを床にぶちまけた。
その音で退屈して机にダラリと顔をつけて眠っていた白夜がバッと顔を上げ音の正体を見るとまた眠りについた。
そんな白夜に苦笑しつつも気になった事を聞く。
「それは?」
「まぁ、日記みたいなものだ。我々のご先祖様にも変わり者がいてな、初代の時代はまだ文明がそのまま残っていた。こんな荒野になったのは卑弥呼が7匹の支配者を召喚した時だ、この日記を残した初代は日本中が破壊される前にノートを持ち出してこの洞窟に潜み自分が何をされたのかを書き残した。それを代々受け継ぎ書き残してきたのがこれだ」
僕は席から立ち上がり無数に落ちているノートから、一番古そうな日記を手に取りノートを開く。
1999年
もう月日もとうに失われ何を支えに生きていけばいいのかわからない。
洞窟の奥底に隠れ住みあの怪物の目を逃れ生活する日々。
日本は世界はもう滅亡したのだろうか?彼の預言は的中した?もう笑い話だな。
今日、生き残りから無線で通信がきたと仲間が騒いでいる。
よく今まで外で生き残っていたものだ、そいつの報告で海から人が現れたらしい。
危険を承知で接触したら米国人らしく少ないながらも情報を得た。
1つ、日本以外は無事である。
2つ、日本領域には幾つも穴がありそこから入ってきたとのこと。
3つ、世界の力ある国は日本に向けて軍を差し向けているが、日本の領海に入って生き残った者はいないという事実。
4つ、この通信を最後に二度と無線機から声が聞こえなくなった。
あの化け物に無理やり与えられた力だが生きていく為には使わなければならない。
この洞窟には千人を越える生き残りがいる。
それに亜弥音、あの存在が我々の希望か………。
我が子達よ、いつの日か必ず卑弥呼を………………。
そこでノートを閉じた。
それから先は書いた者の恨みごとでビッシリだったからだ。
床に散らばったノートを見る。
その視線に気づいて先生は全てのノートを一瞬で消した。
「直斗、お前まで先人の闇に囚われる事はない。これは私が引き継いだのだから」
「先生は………全て?」
「ああ、私達の代で終わらせたいな」
無表情だが、ハッキリと先生から熱を感じた。
どれだけの怒りを溜めているのだろうか、それに僕はどう答えればいいのだろう………………。
「ふう。すまん、続きを話そうか。現状は少しは理解したか?」
落ち着きを取り戻した先生に頷く。
「そうか、ならあと1つ知ってもらいたい事は地上にはヴァルサスが作り出し兵隊がいる。力は強いが倒せないことはない。もし見つかったら確実に倒せ。一匹でも逃がすとヴァルサスが来るぞ。これも日記に書いてあったことだがな。この洞窟にも浸入したこともある、直斗にも迎撃を頼むかもしれん油断はするなよ」
先生の表情を見て本気で危機感を感じているのを見て両拳に力がはいる。
「現在の日本の様子はだいだい理解したな、次はこれからの事を話し合おうか」




