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動けない少女

ズンーン!と響くトンネルの中、直斗達は目の前の入り口が閉ざされ暗くなるのに驚き急停止したが氷で滑って止まれずに塞がれた岩にぶつかる。


「きゅう」


直斗の下から空気の抜ける感じの声がした。


「えっ?」


誰かの上に乗っているような感触。


「魅沙さん、カヤさん?」


恐る恐る直斗は二人の名前を呼ぶ。


「は~い」


「はい」


二人の声は直斗の下ではなく横から聞こえた。


「今、灯りをつけるから動かないで」


直斗はスマホを何とか取り出してライトをつけた。


「魅沙さんとカヤさん」


直斗の横に二人は居た。


「直斗さん、怪我は無いですか?」


二人は平気そうに座り込んでいる。

ライトに照らさせた魅沙は直斗の姿勢を見て心配そうに聞いてきた。


「大丈夫です。それと僕の下に誰か居るみたいなんですが、魅沙さん見てくれます?」


スマホを渡して魅沙が直斗の下を照らす。


「あっ!ドラゴンさんが居ますよ!」


「………本当だ。この子、岩に挟まれたみたいね」


この柔らかいのがドラゴン少女と知り、慌てて直斗は上から退く。


「ごめん!………………大丈夫?」


ライトに照らさせたドラゴン少女に直斗は謝るが返事が返ってこない。


「………ダメね。気を失っているよ。まあ、頑丈だから平気よ直斗。それよりこれからどうする?」


ドラゴン少女から視線をあげて、トンネルを塞いだ岩を見るカヤ。


「あっちから下りられますか?」


氷花を採った方へ顔を向ける直斗。


「行けなくはないけどね。キツいよ」


「………私でも大丈夫?」


不安そうにカヤに聞く魅沙にカヤは首を横に振った。


「そうですか。ならどうします?」


顔を直斗に向ける。

どうしようかと悩む直斗はドラゴン少女を見てカヤに聞いた。


「彼女はどうしよう?」


岩に押し潰されているドラゴン少女を引っ張ってみたがピクリとも動かせないし、下の地面も固いので掘り起こせない。


「気がつくまで待つしかないわね。もしかしたら動かせるかもしれないし」


じゃあ、それまで待とうということになり直斗達はトンネルの中で火をたく。


流石にトンネル全体を温める事など出来ないので、魅沙に亀テントをだしてもらいその中で暖をとる。


「………便利ねこれ。地面までカバーしてるから敷物を引けば十分に温かいわ」


魅沙の亀テントを興味深げに触っているカヤの隣で魅沙がお茶を淹れている。


「はい、どうぞ」


使わないだろうが一応、買っておいたキャンプ道具一式。

直斗はあの時に強引にすすめた店員に思わず感謝した。


ギュ~ギュルルルル!


亀テントの外から何やら音がする。

顔を出してその音を確かめようかと思ったが、今は肉を焼いている最中で手が離せない。


ならカヤさんにでも頼もうかと思い見ると魅沙と楽しそうにお喋りをしている。

ならいいかと肉焼きに専念していると。


ギュルルルル!!!


先程よりも大きな音がした。


「な、何ですか?」


さすがに魅沙にも聞こえたらしく、おっかなびっくり辺りを見渡す。


「はは~ん。さてはあの子、起きたわね」


カヤは亀テントの入り口を開けて外にでる。


「カヤ~、肉の焼ける匂いがしてる~」


岩に挟まれグダ~としているドラゴン少女はカヤを見つけて鼻をヒクヒクと動かす。


「ああ、中で直斗が肉を焼いているからね」


「………私も欲しい」


「なら、そこから出てきなさい」


「………………無理ぽい」


何とか這い出そうと体を動かそうとするが、岩が動く気配がない。


「おっかしいな?この程度の岩が動かせないなんて?」


首を捻るドラゴン少女の口元に直斗は焼いた肉を差し出す。


「お腹が減って力がでないのかも」


「うう、ありがとう」


バクッ!


と直斗が差し出した肉にかぶりつくドラゴン少女。


「美味い!美味い!」


ガツガツと夢中になって食べる。

肉がドラゴン少女の腹の中に消えていく。

それを見ていた一同はドラゴン少女が岩を軽々と退かすのを想像した。


「ん!………………………はぁ。………無理!」


お腹も少しは膨れたドラゴン少女は再度、岩を退かすために踏ん張る。

それでも岩を退かす事が出来なかった。


「う~ん、おかしいわね。ゴブリンがなんかしてるのかしら?」


「ゴブリンですか?」


「そう、だっておかしいもの!この子がこの程度の岩を動かせないなんて。ゴブリンがなんかしているのに違いないわ」


「と言っていますが、外に出た時に何を見ました?」


腰を落としてドラゴン少女に聞く直斗。

彼女はチラリと直斗を見るとボソと言う。


「ご飯が散らばっていた」


「ご飯?………ああ、ゴブリンね。それで?」


「上から岩が落ちてきた」


「………で?」


「気づいたらこうなっていたよ」


「ゴブリンの姿は見たの?」


「………さあ?」


「う~ん、どうしますか?カヤさん」


「そうね、とりあえずご飯にしましょう。直斗、行くわよ」


ドラゴン少女を残して亀テントに戻ろうとするカヤ、直斗は二人に視線をさ迷わせて意を決したようにテントに入る。


「直斗~、肉をプリーズ!」


背後からのドラゴン少女の声を聞きつつ中に入る。


「直斗………どうしよう?」


カヤならばどうにでもなると思っていたのだが、この声を聞くとそうでも無いらしい。


「カヤさんでも外に出れないの?」


「えっ?………ああ、違うよ。私じゃなくてあの子の事よ」


違ったらしい。カヤさんはドラゴン少女の事をたいそう心配している。


「ならカヤさんが上から回って岩の周辺を偵察は?」


「ええ!直斗さんそれはいくらなんでも………」


「………………行くわ!確かにそれが一番早いかも」


「えっ?本当に行くの?」


冗談で言ったのだが、カヤは本気にした。


「カヤ~、本当に行くの?」


「ええ、魅沙。私なら越えられるはこの山頂を!」


いつの間にか友情が強まったのか互いに呼び捨てになっていた。


「うん。わかった!頑張ってね!」


「ええ!任せておいて!」


そう言うとカヤはピュー!と音が聞こえるぐらいの勢いで亀テントを飛び出すと反対側の入り口に向かい走っていく。


「大丈夫かな、カヤ」


「それもあるけど、どうやって連絡をするつもりだろ?」


カヤが出ていったのを見て直斗と魅沙は顔を見合わせウンと頷いて座る。


直斗は再び肉を焼き始め、魅沙はお茶を啜りながらマッタリとする。


ドラゴン少女に肉を与え、自分達も食事をする。

軽く睡眠とり和んでいると亀テントの入り口が開く。


「ハアハア、見て………来たわ!」


息を切らせなが入って来たカヤを向かいいれて、魅沙が淹れたお茶を啜るカヤ。

ハアと一息ついてからカヤが口をひらく。


「いたわ。ゴブリンキングよ」


「ゴブリンキング?」


「何それ?カヤ」


「文字通りよ。ゴブリン達の王さまよ。キングとクイーンが居たわ、今回は本気であの子を排除しに来たみたい」


「キングとクイーン。カヤ、あれの見分けがつくの?」


遠目でしか見ていないが、魅沙には区別がつく自信がない。


「たぶんそうよ。王冠とティアラを着けていたもの」


そのキングとクイーンが岩の上からゴブリン達には指示をして岩を固定させているらしく、その固定している物を壊さないとドラゴン少女の救出は難しいとカヤが語る。


「直斗さん。どうにか出来ませんか?」


魅沙の問いかけに直斗は目をつむり考え込む。

直斗はもう一度、カヤに偵察に行ってもらいキングとクイーンのいる場所とここからの距離を正確に調べてもらう事にした。


「いいけど、それでどうするの?」


「ここから、どうにか出来ないかと思って」


ここから?と首を捻るが、カヤは直斗を信じて再び偵察にでた。


「直斗さん、大丈夫ですか?」


心配そうに見る魅沙に「多分、いけると思う」と答えて直斗はカヤを待った。

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