表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/178

氷花

改めて倒したゴブリンを数えてみると、20体を越えていた。

辺りも陽が落ちて暗くなっているので、そうそうに休憩小屋に戻り、残りは明日にまわす。


「うん、いい運動になったよ。直斗、腹へった!」


キュッとお腹を押さえるドラゴン少女を見て、直斗はまた食事を作り始める。


出された料理を平らげて満腹になったドラゴン少女はまた隅に行き寝始めた。


昨日と同じ様にカヤに小屋の見張りを頼んで直斗達も眠りに落ちた。


陽が登り外に出て昨日の戦いの現場を見て回る。

不思議な事に血溜まりはあるが、ゴブリンの死体は見あたらなかった。


「あれだけあったゴブリンの死体が無いね?」


「そうね。ゴブリンが持ち帰ったか魔物に喰われたかじゃない?」


たいして気にする事もなくカヤが言う。

この山の精霊が言うのならと直斗も気にするのを止めた。


ご飯が美味しかったせいなのか、ドラゴン少女も直斗についてくることになった。


「直斗達といる方が面白そう」


という理由で着いてくる事になり、これから取りに行く氷薔薇のある場所を考えればとてつもない戦力を得られるので大歓迎だった。


「それで、何処にあるんだ?」


「作業場はあそこよ」


カヤが指を差す方を見れば、木々の間から遠くに洞窟が微かに見える。


「あの洞窟は?」


「洞窟?………ああ、そう見えるだけでトンネルね」


「トンネル………ですか?」


「そうよ。彼処を通って反対側に行くと風が吹き抜ける場所があって、氷花を作るのにもってこいなのよ!」


キメ顔をつくるカヤの頭に手を置いて撫でてやる。


「むう。何よ!その手は!」


ブンブンと頭を振って直斗の手を落とすカヤ。


「ごめん、つい白夜にやっている癖で………」


慌てて手を元に戻す直斗は、頬をかきながらすまなそうにカヤに謝る。


「わ、わかれば良いのよ。行くわよ!」


それを聞いたカヤが早足でトンネルに向かい歩いていく。

直斗は慌てて追いかけ、魅沙は笑顔で後に続く。

ドラゴン少女はそんなカヤを不思議そうに見ていた。


カヤの後を着いていくと、確かにトンネルだった。

誰が掘ったのかと尋ねると、大昔にゴブリンが掘ったのだが向こうと繋がってしまい放棄した穴が、長い年月の末に人が通れるぐらいに削りとられトンネルになったらしい。


その中に入りゾロゾロと歩いて行く。

トンネルの中は雪は無いが薄く氷が張っていてとても滑りやすかった。


「おっ!」


「きゃ!」


「アハハ!」


所々で足が滑ってバランスを崩す直斗と魅沙。

ドラゴン少女は器用にバランスをとって滑りながら前に進む。


カヤはいつも通っているのから慣れた感じで飄々と歩いている。


「もうすぐだよ」


徐々に近づいてくる向こう側の光、いったいどんな場所で氷花が作られているのかと魅沙に腕を掴まれながら進んでいく。


トンネルを抜けた先に道は無く断崖絶壁になっていた。


「ええ!何で崖に?怖いんですけど………」


「………それより氷薔薇は?」


魅沙は崖の下を恐る恐る覗き、直斗は辺りを見渡して氷花が無いのを見てカヤに聞く。


「ん、こっちよ」


カヤはトンネルの上を見る。


「え?」


直斗もつられて上を見るがトンネルの岩肌しか見えない。


「だから、トンネルの上よ」


「へ?………この上へですか?」


下を覗いていた魅沙が上を見ると、確かに上に上がれそうな感じはするが身長的に魅沙には無理だ。

直斗でもギリギリジャンプして手が届くかという位置に手をかけられそうな場所を見つけた。


「どうやって行くんですか?」


「こうよ」


直斗の問いにカヤは氷の鞭を取り出すと、上に向かって鞭を振るう。

手慣れた感じで鞭が何かに固定されると一気にカヤは上に上がった。


「ええ!」


突如、カヤが消えたように直斗達には見えた。


「ね、簡単でしょう」


トンネルの上からカヤの声が聞こえる。


「………どう思います?」


「簡単じゃないよね」


顔を見合わせてどうしようかと二人で思っていると。


「行かないのか?」


とドラゴン少女が聞いてきた。


「ちょっと私には無理そうで………」


「そうなのか?なら魅沙は私が運んでやろう」


「え、本当ですか。ありがとうございます」


ウンウンと頷きドラゴン少女が魅沙を背後から掴むと翼を広げてトンネルの下に落ちていった。


「え?………きゃー!」


魅沙の景色が凄い勢いで流れる。

落下する体が恐怖で固まっていると。


「うん。上がるぞ魅沙」


後ろからドラゴン少女の声が聞こえたと思ったら、落下が止まり上へと昇っていく。


「きゃー!」


ギュン!


と下から上に滑空するドラゴン少女。

何がなんだかわからないうちに、魅沙はトンネルの上で待つカヤの横に下ろされた。


「………怖かったです」


「アハハ、面白かっただろ?」


腰が抜けて座り込んでいる魅沙の横でドラゴン少女が笑う。

カヤはご愁傷さまと労る目で魅沙を見ている。


「魅沙さん、大丈夫?」


「え?」


後ろから直斗の声が聞こえて振り向く。


「直斗さん、いつの間に?」


「魅沙さんが空を飛んでいる間にカヤさんに手伝ってもらって………」


「そうですか………」


まだ虚ろな目で直斗を見ている魅沙に気を使い離れる。

トンネルの上はちょっとした平地になっていた。


「ほらアレよ。ここで暇潰しで作っているのよ」


カヤに言われ直斗が視線を向けると山の影の中に咲いている氷花があった。


「………あれですか?」


「そうよ。薔薇も作ってたと思うから探してみて」


それに頷き直斗は氷花の咲いている場所に向かう。


(これをカヤさんが作ったのか)


日影の中でもキラキラと光って見える氷花。

百合に秋桜、菊に薔薇と様々な種類が咲いている。


「どうよ。なかなかでしょう?」


「ええ、素晴らしいです」


花弁は薄く、茎や葉は太く作ってある。

直斗は手袋を取って素手で氷の薔薇を触る。


「あっ!」


茎の部分を触ったら、直ぐにとけだす。


「はい、これ」


カヤから差し出された容器を受け取り氷の薔薇を入れる。


冷たい容器はガラスで出来ているみたいに透明で氷の薔薇を観覧できる。


「下の町に持っていっても1日は持つわ。でも直ぐに使うから関係ないけどね」


それに頷き直斗はギフトに氷の薔薇をしまう。


魅沙の所まで戻るとドラゴン少女と会話するぐらいまで回復した魅沙が楽しそうにしている。


「あっ、直斗さん。終わりました?」


「うん。目的の物はあったよ」


「じゃあ、帰りましょう」


バッ!と横に腕を広げる魅沙。

ドラゴン少女が魅沙の腰を掴み下に落ちる。


「………もう慣れたんだ」


下を覗くと二人がトンネルの中に入っていった。

直斗も手が引っ掛かる岩肌に手をかけるとスルっとトンネル中に入る。


全員がトンネルの中に戻り、来た道を慎重に戻る。

トンネルの中程まで来た時に異変に気づいた。


「ご飯が………いるよ」


「ご飯?………ああ、ゴブリンか」「待ち伏せですかね?」


小声で話す魅沙に多分と頷く。


「行ってくるよ!」


飛び出そうとするドラゴン少女を後ろから押さえる直斗。


「待って、罠かも?」


「罠?何それ?」


小首を傾げるドラゴン少女に直斗は罠とはどういうものか説明をする。


「ふ~ん。でも関係ないよ、私は最強だし!」


そう言うとドラゴン少女は直斗の手を払い、外に飛び出していった。


「あの馬鹿!」


心配そうに呟くカヤ。


「あっれ~?」


トンネルの外に飛び出した辺りからドラゴン少女の間の抜けた声が直斗がいる所まで聞こえた。


その声を聞いてカヤが走る。

直斗達も遅れない様に氷で滑る道を出来るだけ急いで行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ