信じて進む
氷依達と合流を果たした直斗は、町の中に拠点として使っていた家に案内をする。
久しぶりに再会をしたティーアと白雪の事を喜ぶ魅紗。
町の門にまた壁を作り、念のために門に魅紗の亀テント(大)を置いた。
「へぇ、結構いいとこじゃない」
「はい、氷依様。あちらにお風呂もありますよ」
「えっ?………お風呂があるの白夜」
「はい。すぐ入れるように用意をしてきますね」
「「「任せたわ!!!」」」
お風呂の用意をしに行った白夜を笑顔で見送る女性陣、直斗は懐かしい雰囲気を久しぶりに感じた。
「で、どうなってるの?」
白夜を笑顔で見送っていた氷依が真面目な顔で直斗に聞いた。
「ああ、全部話すよ。皆にも聞いてほしい」
直斗は木の穴に落ちた所からティーアの事、そしてこの遺跡の管理者らしいものたちとの話を氷依達に話した。
「はぁ~、まさかティーアさんの両親がこの遺跡の奥で生きて眠っているなんて………」
「直斗がここに来たのは、その為なのよね?」
「ああ、ティーアの両親達を開放する!」
「そう、ならティーアの為にも頑張らないとね」
「そうですよ直斗さん、皆で頑張りましょう」
魅紗の言葉に直斗を仲間達を見ると皆が頷いた。
「魅紗、それに皆さん有り難う。私も頑張るのだ」
ティーアは目の端に涙を浮かべながら直斗達を見つめる。
「皆さん、お風呂の用意が出来ました~」
しんみりとした雰囲気から一転、奥から白夜がお風呂の準備が出来たと伝えるためにやって来た。
「本当!何人入れるの?」
「3人で一杯です」
「狭いわね、なら2人づつね。誰から行く?」
「それなら氷依さんと花さんでいいですよ。私は後でエリーナさんと入りますから」
「エリーナもそれで良いの?」
「構いません。お先にどうぞ」
「そう、なら先に入るわね。花、行きましょう」
「はい」
2人がお風呂場に向かう。
白夜と魅紗が食事の準備を始め、直斗は門の様子を見ようと外にでる。
それにエリーナとティーアが着いていった。
白雪はゴロンと家の隅で寝転がって直斗を見送る。
門の前まで来た直斗は防壁に上がると、遠目にまだ白雪が奇襲をしたゴーレム隊の一部が残っていた。
「アレはどうするのだ?」
ティーアが遠くのゴーレム隊を見て直斗に聞く。
「とりあえずは無視だね。氷依達と合流できたから門が閉まらなくなったので後で氷依達と相談しよう」
辺りを見ても近づいてくるゴーレムもいない。
直斗は念のため、エリーナに隠れているゴーレムがいないか聞いてみた。
「そうですね、私の感知できる範囲にはいないようです」
「そう、エリーナにそう言ってもらえると安心するよ。相手の位置がわかる仲間がいると頼もしいよ」
「へ~、私はそれだけですか?」
「えっ、……………も、もちろんそれだけじゃないよ。頭も良いし、以外と行動派だし………それと………」
「直斗、そうじゃないのだぞ。エリーナはもっと内面を言って欲しいのだ!直斗の隣に立ちたいと思っているのだ」
「そう、なの?」
「………違います!ちょっとは思ったりしますが、それでもティーアさんの言ったような事は思っていません!………私なんてまだまだなんです」
最初は勢いがあったエリーナだったが、だんだんと勢いが無くなり最後は隣にいる直斗にも聞き取れないぐらいの小さい声だった。
ひとまず、すぐに戦いが始まる気配が無いので直斗達は家に戻ることにした。
「あら直斗、どこに行ってたのよ?」
家に入ると氷依と花さんがお風呂から上がっていて、テーブルで何かを飲んでいる。
家の中を見渡すと魅紗と白雪がいなかったので聞いてみると。
「お風呂にいったわよ。エリーナが居なかったから白雪を連れていったわ」
「そうなんだ、それにしても早くない?上がるの」
直斗達が門の外を見に行って帰ってくるまで10分ほどだろうか、いままでの道中でここまで早いのは珍しかった。
「まあね、これから作戦会議でしょう?だからとりあえず体を洗っただけにしたわ。ゆっくりとお風呂に入るのは夜にするわ、だからまたお願いね白夜」
「はい。任せてください」
大方の食事の準備が終わっている白夜は氷依の言葉に小さい胸を叩く。
2人がそれでいいのならと直斗はそれに口を挟まなかった。
順番にお風呂に入り何処と無く女性陣の表情が明るい。
全員がテーブルにつき、白夜が用意をした食事をとる。
「行儀が悪いけど、食べながら話を始めましょう」
「そうですね、敵が何時までも待ってくれるはずがないですし」
それに全員が頷く。
「先ずは魅紗さんのあの盾は大丈夫?」
「ええ、大丈夫だと思います」
「そうね、アレでゴーレムが徘徊する場所で寝泊まりしてたんだから大丈夫よ」
「………そうなんだ?………なら大丈夫かな」
まさかすでに盾の耐久度をその身で確かめていたとは予想外だったが、強度が実証されてるのは心強かった。
「それなら見張りは一人でいいかな?この戦いのルールで氷依達が合流したらあの門は24時間閉じなくなるんだ」
「?………直斗、あの門の前に作った壁は?」
「ああ、アレは見かけほど強度はないんだよ。元の土結晶の質が良くないから。もっとも質が良くないから白夜が改良をできたんだけどね」
「改良ですか?どういう仕組みですか白夜さん」
「おっ!興味がありますかエリーナ様。………では後ほど………」
白夜が悪い笑みを浮かべてエリーナを見たが後は本人達しだいだと思い直斗はスルーした。
「そういう事だからゴーレムの数が纏まって押し寄せてくると、いつ壁が壊されてもおかしくない。だから時間の問題だと思ってくれていい」
「なら質の良い結晶を使えば?」
「う~ん、それも難しい。白夜のレベルに左右されるからまだ厳しい」
「その通りです。レベルが15まで上がらないと難しいと思います」
「今、いくつなの白夜?」
「レベル10です」
「まったくレベルが上がってないじゃない!」
「氷依さん、私達もあがってないです」
「………そうなのよね。アレだけ倒してレベルがまっっったく!上がってないのよね」
「この遺跡が訓練施設だからですかね?」
「そうだと思いますエリーナ様。そうでなければ私達は全滅しています」
「そうですね、花さんの言う通りだと僕も思います。数が多いだけでゴーレムのレベルは僕達の半分ほどじゃあないかと思う」
「そうなのか?………通りで簡単に倒せるなとは思っていたのだ」
「それでも数が多いからね。いくら弱くも驚異だよ」
「それで、敵はあとどのくらいいるのよ?」
「う~ん、そうだね。………1500ぐらい?」
「………どうするのよ?いちいち相手にしてたらキリがないわ」
「そうですよね。このまま防御だけでは辛いですよ」
「じゃあ、うって出るのですか?流石に私でもそれだけいる敵に、見つからずに連れて行くのは無理ですよ」
エリーナの言葉に全員が沈黙をする。
分かっていた事なのだが、エリーナの探索技術で不可能なら他の誰にも出来はしないと全員が思った。
「………………なら、攻めるしかないわね」
「攻めるのですか?」
「そうよエリーナ!隠れて進むなんて私の流儀ではないわ!」
「ですが氷依さん、1500体のゴーレムを全部相手にするんですか?」
「………お嬢様が決められたのなら………」
なにやら決意を固めたらしい花さんが握りこぶしを作る。
「氷依は正々堂々と戦いたいの?」
「変な事を聞くのね直斗は、やるからには勝たなければ意味がないの!今回はそれが一番手っ取り早いのよ。私が出れば敵を惹き付けれるでしょう?」
「そうかもしれないけど………」
「ならこれぐらいの覚悟ぐらい常にもっていなさい!
リーダーとしても男としてもね」
「………それが仲間を見捨てるとしてもか?」
直斗の顔に憤りの表情が見えた。
「馬鹿ね。見捨てるじゃないのよ、仲間を信じて進みなさいと言っているの」
直斗と氷依の視線がぶつかる。
それを固唾を飲んで見守る一同。
「………………はあ、分かったよ。氷依の言うことの方が正しい。今回は氷依に任せるよ」
「ふふん。なら任されましょう。って言っても簡単な事よ、直斗が敵の本拠地の町に潜入して向こうの王を倒すのよ。私達は敵を惹き付ける役ね」
「具体的にはどうするんですか?」
「そうね………………私と花が敵を誘き寄せる。ある程度の敵を引き寄せたら魅紗の亀テントに隠れるのよ。その時、ティーアとエリーナは魅紗の側に居なさい。白雪は外で逃げ回ればいいわ」
「それでどうするのです?」
「後は簡単よ、魅紗の亀テントに隠れながら私と花にティーアで魔法を乱れうちよ。敵の位置なんてエリーナに任せれば良いのだし」
「それで上手くいくのですか?」
「ええ、後は直斗が頑張ればいいの。遠回りして王を倒すのよ。ここって夜には暗くなるの?」
「なるぞ、真っ暗になるのだ!」
そう力強く言うティーアに氷依の笑みが濃くなる。
「なら夜の闇に紛れて直斗は向こうの町にの近くに行きなさい。私達の戦闘を合図で突っ込めばいいわ」
「皆はそれで良いの?」
直斗はテーブルについている皆を見渡す。
氷依の作戦に対する異論はあがらなかった。
「ならそれで行こう!」
「はい。マスターが決められたのなら、私は着いていくだけです」
直斗の言葉に白夜が応える。
それを見て氷依がウンウン
と頷いて直斗に言う。
「任せたわ直斗、じゃあ、私達はゆっくりとお風呂に入るから白夜を借りるわね。直斗はどう接近するか考えてなさい」
氷依は直斗の背中を押して家の外に出すとドアを閉める。
直斗はヤレヤレとそこを離れると水晶くんが居るであろう町の方を見つめ必ず勝つと心に誓った。




