開戦
城壁の門の前で、開戦に向けて防衛陣を制作している直斗と白夜、それを見つめるだけのティーアと白雪。
「なあ、私も何か手伝える事があるのではないか?」
直斗達が制作し始めてから時折ティーアが直斗に手伝いを申し出るのだが、白夜がそれを止めていた。
「ティーアは後から存分に働いてもらうから我慢してね。………ほい、チョコだよ」
口を大きく開けていたティーアの口の中に直斗は持っていたチョコを投げ込む。
「うぐ。………………美味しいのだ」
そう言うとティーアは直斗から離れて白雪の元に行き直斗達の作業を見つめる。
黙々と作業をしていたが、造れる場所が無くなってきたので、直斗は残りの時間を休息と食事にあてた。
マッタリと寛いでいると町の中心から鐘の音が鳴っている。
直斗はそちらを見て、白夜達に目を向けた。
「いよいよ始まるよ。先鋒はティーアだ!近寄ってくる敵を凪ぎ払え!」
「うむ!任せろ。限界まで殺ってやるのだ!」
気合いが入ったティーアは階段を上がり定位置につく。
「白雪はティーアが内漏らした敵を狩って」
「ガウ!!」
直斗の言葉に白雪は一声吠えると軽やかに城壁の上まで飛んだ。
「さすがは白雪だ、階段が必要ないな」
「ええ、一先ずはこれで今日は持つでしょう。問題はいつ氷依さん達が来るかですね?」
「うん。それがこの戦いの鍵を握ると思う」
「直斗!敵が見えたのだ!数は………30体、あの水晶が言っていた通り人みたいたぞ」
ティーアからの報告を聞いて、直斗も城壁の上と上がる。
ティーアが見つめている方へ視線を向けると、ティーアが言っていた通り人型のゴーレムが前進してきていた。
「先ずは様子みかな?」
「そのようですマスター。ティーアさん射程に入ったら魔法で攻撃を」
「わかっているのだ、こうして魔法結晶も貰ったのだからあの程度の数など蹴散らす!」
ティーアの強気の発言に直斗は頷き、ティーアと白雪の観戦に回る。
もちろん、苦戦をするようなら直ぐに参戦できる所で見守るわけだが。
「行くぞ!………ウィンドカッター!」
ティーアの叫びに反応して魔法が発動していく。
直斗が見つめていると数体のゴーレムの頭が割れていく。
それで崩れ落ちるゴーレム、今回はすべてのゴーレムの頭に核があるのを水晶が教えてくれていた。
何故それを直斗達に教えるのかと聞いたところ。
「お詫びだよ、君達はあの廃棄通路から来たのだろ?あれは本来なら埋め立てられているはずなのに。なんにせよ大怪我をしてなくて良かったよ」
と何故か悔しそうに言った水晶が印象的だった。
その言葉を信じてティーアにゴーレムのアタマを狙わせたのだか本当の事だったようだ。
「ティーア、弱点は頭だ。よく狙って魔力の温存を心掛けてね」
「わかっているのだ、任せろ!」
そう言うとティーアは城壁の上から次々とゴーレムを撃ち倒していく。
17体ほど倒すと、ゴーレムが退却を始めた。
「?、逃げていくのだ。追いかけるか?」
「………いや、止めておこう。まだ、始まったばかりだ」
「うん。わかったのだ」
直斗の言葉に大人しく頷いてティーアはホッと一息ついた。
開始30分ほどで初戦の戦闘が終わった。
ティーアの圧倒的な勝利だが、始まったばかりで油断はできない。
直斗はそのまま見張りに立ち、ティーアを後ろで休ませる事にした。
「マスター、敵がきませんね?」
「ああ、あいつが何を考えているのか分からないよ」
すでに3時間が経過、一向に姿を見せない敵に直斗の心中は穏やかではない。
どうしたものかと考えていると、遠くに敵ゴーレムが見えた。
「おや?来ましたね。………今度は倍近い60ほどですか、しかもやたらと距離を開けて進軍してきますね」
直斗の目にもそう見える、ティーアの魔法対策だろうか?1体1体の間隔が空いている。
それが広がりながらこちらに向かってきていた。
「あれはティーア対策かな?結局、門の前で密集するはずなのに距離を空けて進軍している。だとすると狙いはティーアの消耗かな?あいつは序盤で勝負を決める気はないようだ。僕なら最大数で突っ込ませるけどね」
「こちらの広範囲魔法を警戒しているのでは?、それに2千人を一度に突っ込ませても門が狭いですから大渋滞を起こしますし、その間に広範囲魔法で攻撃をされると一気に勝負が決まると慎重になっていのではないかと。なにせ私達が初の相手ですから」
「ああ。そういえば、そんな事も言っていたな。だとしたらやっぱりまだ遊んでいるんだろうね?」
徐々に近付いてくるゴーレムを見て直斗はティーアを呼んだ。
「む、やっと敵が来たのだな。………おお!今度はさっきの倍はいるぞ。直斗、また同じ感じで良いのだな?」
ティーアの問いかけに直斗は頷く。
「なら行くぞ!」
ティーアは近付いてくるゴーレムに狙いをつけて魔法を放つ、見事に頭に命中したのを確認して次のゴーレムに狙いを定めようとしたときに、ゴーレムが狙いを外そうという動きを見せた。
「ん?………流石に考えてきたか。ティーア、白雪に左側の敵を狙わせるから落ち着いて中央と右側の敵を狙って」
「うん。任せろ!」
「白夜は後方から増援がないか監視。白雪は左側の敵を攻撃!」
直斗の指示に白雪が城壁を降りて左側のゴーレムに向かって行った。
直斗は城壁の上から敵ゴーレムの動きを見つめる。
ゴーレムの動きは大したこともなく白雪は簡単にゴーレムの頭を破壊している。
対するティーアも白雪のお陰で負担が減り、1体ずつ確実にゴーレムを破壊していった。
「温いな、様子見でも手応えが無さすぎる?」
「そうですね。ですがゴーレムの動きは良くなってきています」
「………………こちらの動きを観察して、ゴーレムに動きを修正してから送り込んでいる?」
「多分?ですが。データが無いから情報収集をしているのでしょう。今日はこれで終わりですね」
「なら、明日から本番か?」
「ええ、捨て石のゴーレムの情報を解析してから事に挑むでしょうから」
白夜の言葉に頷いて直斗は戦況を見つめる。
左側の白雪の方はもう片付きそうだった。
ティーアの方はまばらだが、まだゴーレムが20体ほど残っているが時間の問題だろうと思う。
「ティーア、まだ撃てるの?」
「ハアハア、大丈夫だ。だが残りのゴーレムを倒すともう魔力が無いぞ」
「そうか……………。ティーア、敵に魔力量を知られるのは不味い。残りは白雪にやらせるからここで止めて休憩をとって」
「お?、わかったのだ。後は任せるぞ」
ティーアはそう言うと下に降りていく、直斗は白雪に残りのゴーレムの掃討を伝えると白雪は残りのゴーレムを倒しにかかった。
「もうここはいいよ、白夜は下でお風呂の準備をしてきて」
「はい。ですが本当に来ないかはわかりません、十分に注意を」
わかっているよと白夜に返事を返して直斗は白雪の蹂躙振りを眺めていた。
その後方でゴーレムが腹這いになり、それを見つめていた。
戦闘に参加するわけでも無く、戦いが始まってずっとそれを観察している。
その目を通して水晶は直斗達の戦いを見ていた。
………………………………………
「やっぱり実戦は違うね、シュミレーションだともう少し戦いになっていたのにな」
「王よ我らの出番か?」
水晶がそう呟くのを聞いて、その場に控えていたゴーレム4体の内、人間型の
ゴーレムが話しかける。
「まさか!まだだよ、君達は全ての情報が揃ったらだ」
「そうか」
それを聞いて人間型ゴーレムは沈黙した。
「君達の出番は彼のパーティーに彼女達が合流してからだ。それまでに十分なデータをとらせてもらうよ」
そう言うと水晶は終わりつつある戦いに意識を向ける。
今日得たデータを明日はどう活かそうかと考えなから。




