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ティーアの過去

ピラミン遺跡の前で立ち尽くすティーア、直斗達はどこから内部に入るかを調査中で側にはいない。


ティーアは足が震えるのを意識した。


(お父様、お母様………)


目を瞑ると甦る両親の姿、ティーアが50歳の時に亡くなった。

アルト町の家で両親の帰りを待っていたティーア、仲の良い隣人のお姉さんと家で遊んでいた時にそれは来た。


お姉さんは家に来た人と話すとティーアを抱きしめた。

きつく抱きしめられて泣いていたお姉さんに感化されたのかティーアも一緒にお姉さんと泣いた。


不慮の事故だったと当時の大人達はティーアに話した。

あまりよく覚えていないが、ピラミン遺跡で亡くなった事だけは覚えている。


亡骸は無かった。

ピラミン遺跡の罠に嵌まり、両親とも落下して消息が途絶えた。どこを探しても下に行く道が解らずに諦めたらしい。


それから70年、ティーアは一人でアルトの町で生きてきた。

さすがにもう両親が生きているとは思っていない。


ピラミン遺跡、一度だけ訪れた事がある。

せめて亡骸だけでもと思い、町の大人達と来たのだがティーアはピラミン遺跡を見ると足が震え前に進めなかった。


両親が死んだと認めたくないのか、両親の墓ともいえるピラミン遺跡を荒らしたくないのかわからないが、ティーアはその日からピラミン遺跡の事を忘れた風に振る舞ってきた。


それは両親の事さえも忘れようとする事だったが、ティーアは幼い日にそれを受け入れた。


それなのに、とティーアは今の自分の状況を鑑みるとこれが運命なのかと笑うしかなかった。


(まさか再びここに来るとはな………………ハハ、足が動かないのだ)


ジーとピラミン遺跡を見上げるティーア。

昔の自分と同じ、まったく成長をしていないではないかと泣き笑いの表情になる。


「ティーア」


自分の名前を呼ぶ直斗の声にビク!と震えるティーア。

直斗は振り返ったティーアが泣いている様に感じた。


「な、なんだ直斗?」


「ああ、入れそうな場所を見つけたからティーアを呼びに来た」


その言葉にティーアは震える。


「ティーア?」


直斗はそれを不思議に思い問いかける。


「………………行かぬ」


「え?」


「すまん。………………私は中には入れない!」


そう言うとティーアはピラミン遺跡から駆け足で離れていく。


「ティーアさん?」


「直斗!追うのよ!」


その様子を離れていた場所から見ていた氷依達は近くにいた直斗にティーアを追うように叫ぶ。


「わかった!氷依達はそこで待っていて!」


弾かれたように直斗はティーアの後を追った。


「マスター!私も行きます!」


「ガウ!!」


直斗が駆け出すのを見て、白夜も後に続く。

とても追い付けないと白夜が思った時、自分の体が宙に浮く感覚に白夜が後ろを振り返ると白雪が白夜をくわえてその背に乗せて直斗の後を追った。


「白雪。………………感謝します」


自分が走るよりは断然速いと白夜は認め白雪にお礼を言った。

白雪はそれが当然だと言うように吠えると直斗の後を追いかける。


直斗は遺跡から背を向け走り去ったティーアの姿を見失った。

それほど遠くまでは行ってないと信じたいが、ダークエルフであるティーアを大森林の中で見つけるのは至難の技かも知れないと悟る。


立ち止まっている直斗に後ろから追い付いた白雪と白夜。


「マスター!一人では危険です」


「ごめん」


「………もう!白雪、お願い」


落ち込む直斗を見かねて白夜が白雪にティーアの捜索を頼む。

白雪は辺りを見渡し歩いていく。


「行きますよマスター!」


「あっ、ああ!」


白雪の後を着いていくと直ぐにティーアを見つけた。

大きな木の根本で膝を抱えて座っている。


「ティーア」


「………………………」


直斗の呼び掛けに答えないティーア。

直斗はティーアに近付いて隣に腰をおろす。


「………………聞かないのか?」


ポツリとティーアが呟く。


「話したいの?」


「………………あの遺跡の中に、………私の両親がいるのだ」


「そう」


「………………私は………あの中には入れないのだ。………………恐くて足が………動かないのだ」

そこまで話すとティーアはこれまでの自分の過去を直斗に話し始めた。


直斗はそれを黙って聴く。

涙を流し嗚咽を交えて語るティーアに直斗は自分の胸を貸す。

そこから大声で泣き叫ぶティーアの頭を撫でながら、彼女が落ち着くのを待った。


「すまぬ、汚したのだ」


「いいよ。気にしないから」


「すまぬ」


直斗の胸から離れ、少し顔を赤くしたティーアがしょんぼりと呟く。


「ティーアは町に戻っているかい?」


「………………そうするのが良いと思うか?」


「思わないよ。だけど心が拒否をしているから」


それだけ言って二人は沈黙する。

どれだけそうしていただろうか、不意にティーアが直斗に言う。


「直斗、私は町に戻ろうと思う………………まだ………整理がつかないから」


ティーアは下を向いたまま、苦しそうに言った。


「わかった。ティーアがそう決めたなら良いよ」


直斗はティーアの頭を撫でて立ち上がろうとすると。


「マスター!」


周囲を警戒していた白雪と白夜は、直斗達の話が終わったと感じてこちらに戻ってきた。

急制動をかけた白雪が上に乗っていた白夜を振り飛ばす、白夜はパア!と笑顔で直斗の胸に飛び込もうと両手を広げる。


それを不十分な体勢で受け止めた直斗がよろめいて、後ろの木に背中をぶつけた。


「えっ?」


直斗は背に感じるはずの木の感触が無いことに驚く。


「直斗!」


「ガッ!」


ティーアと白雪がそれに気付いて直斗を掴むが、直斗を支えられずに木の中に落ちていった。


(ん?………温かい)


直斗は真っ暗な闇のなか、目を覚ます。


(ここは?………………!)


ボーとした意識が覚醒する。


「ティーア!、白夜!白雪!」


直斗は何も見えない闇の中で、自分と一緒に落ちた仲間を思い出して叫ぶ。


「ガウ!」


「!」


白雪の声が直斗の間近できこえた。


「白雪?」


「ガウ!」


直斗はその声を間近に聞いて、自分がどこの上にいるか気づいた。


「そうか、僕は白雪の上に乗っているのか………って、白夜とティーアは?」


ここで直斗は光結晶を買ったことを思い出して使用する。

光結晶に魔力を込めると結晶が光り辺りを照らす。

以外と近くに白雪の顔があり驚く、ティーアと白夜はと周りを見ると直斗の隣に二人がいた。


それにホッとして直斗は上を照らす。


「けっこう深いな、怪我はしてないみたいだけど………」


「「ん、う~ん」」


寝ていた二人が目を覚ます。


「マスター?」


「う………ここは?」


直斗は目を覚ました二人に事情を説明して、怪我がないかを尋ねる。

二人共、自分の体を触り怪我がないかを確かめると大丈夫とのことだった。


白夜とティーアにも光結晶を持たせて辺りを探る。

3人で辺りを照らしてわかったのだが、白雪が怪我をしていた。

僕達を落下から庇って怪我をしたみたいだ。


「ありがとう、白雪」


直斗は白雪の体を撫でながら白雪の怪我を治した。

どこからか脱出できないかと探していたティーア達が横穴を発見する。


「マスター!こちらから風を感じます」


直斗もそちらに行き横穴を確認する。

白雪も通れる位の大きな横穴に直斗はこの先に進む事を決断する。


直斗は氷依達と通話ができない事を確認すると、メールだけでもと送信する。

届くことを祈って。

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