ダークエルフの町へ
夕食も食べ終え、直斗は魅沙が作った亀テントの中で寛いでいた。
魅沙の言う通り、なかなかの強度をもつ亀テントに見張りは不要と判断して誰も外で見張りをしていない。
何かあればエリーナが声を上げる事になっているので、直斗は安心して休んでいた。
「マスター、体を拭いてほしいです」
「なっ!ならば私も拭いてほしいぞ!」
直斗を挟んで白夜とティーアが言い争っている。
何故?ティーアがいるのかといえば、妙に直斗になついたティーアが直斗と寝ると言い張り押し掛けてきたのだ。
「白夜は精霊だから必要ないだろ。ティーアも体を拭いてほしいたら氷依の所に行きなさい」
直斗が何度目かの注意を二人にする。
ティーアは餌付けの成果がでてしまったのでわかるが、白夜まで張り合う意味がわからなかった。
「もういいから寝るよ」
直斗は睨みあう二人を置いて横になる。
二人も入ればいっぱいになるテントに直斗は安心感を覚える。
久しく忘れていた引きこもりの虫がわいてくる。
「マスター!添い寝を!」
「私も!私も!」
幼女と少女に抱きつかれて、直斗の引きこもりの虫が引っ込んだ。
「静かにしてくれれば良いよ」
直斗はいろいろ諦めて、二人のなすがままに任せた。
お互いにいい位置が決まったらしく、二人がおとなしくなった。
「直斗は変わった戦い方をするんだな」
直斗の左横にいるティーアが、先程の双頭樋熊の戦闘を思い出しながら疑問に思った事を聞いた。
「変わっているかい?」
「変わっているぞ、武器を使わないで拳を使う奴なんて見たことないぞ」
ティーアはこれまでの過去を思い出してもそんな人はいなかったと自信をもって言える。
「武器ね、使いたいけど使えないから………」
「どういう事だ?」
「教えるわけないでしょ、いつ敵になるかわからないのに」
直斗とティーアの話の間に白夜が割り込む。
「なにお!私は直斗の敵にはならんぞ」
「本当ですか?嘘くさいですよ」
再び再燃した言い争いに直斗は辟易する。
ギャアギャアと言い争う二人を無視して直斗はスマホを取りだし弄る。
(へえ、ミナホさん水の国に呼ばれてたんだ。まだ魔物大暴走には遭遇していないと………)
ミナホからの着信メールを読み返信をしておく、続いてサキュバス姉妹からもメールが来ていたので読む。
(相変わらずだね、あの姉妹は。さすがに木の国まで配達には来れないかぁ)
スマホを見ている直斗に、いつの間にか言い争いを止めたティーアが直斗のスマホを除き見ている。
「直斗!何をみているのだ?」
「スマホだけど?」
「なんだそれは?」
「………知らないの?」
「うん」
直斗はティーアにスマホを渡し説明をしてあげる。
「なるほど、便利なのだな。………ほしい」
「いや、無理だから」
「そうですよ、それはマスターにしか扱えないのです」
「………………………」
スマホを直斗に返して、ティーアはおねだり光線を直斗にぶつける。
「そんな目で見ても無理だからティーア!」
何とかしてあげたいが、こればかりは直斗には無理な事だった。
だが、直斗は普通のスマホならと思いティーアに聞く。
「ダークエルフの町に売ってないの?スマホは」
「ないな、私は見たことも無い。使っている奴もいないと思うぞ」
「そうなんだ。じゃあ、エルフの街は?」
ダークエルフより数が多く集まっているエルフの街には、スマホぐらいあるんじゃないかと直斗はティーアに聞いた。
「わからん。私はエルフの街には行ったことが無いのだ」
「何で?仲が悪いの?」
「マスター、ダークエルフとエルフは昔から仲が悪いので有名なんですよ」
直斗の疑問に白夜が答えた。
「何を言っているんだ?エルフとは友好関係にあるぞ。昔から」
白夜の言葉にティーアが即座に反論、それに驚く白夜。
「えっ?そんな………だって、火の国の本にそう書いてあったし」
「ああ、火の国かぁ。あそこの本には苦労していると大人達が言っていたぞ。何でもエルフとダークエルフは仇敵のじゃないといけないと訳のわからない事を言っては本にして広めていると」
「………じゃあ、本当に?」
「ああ、その本は嘘だな」
ティーアがそう断言する。
白夜は何か負けた感じがしておとなしくなった。
「直斗、なんとかならんのか?」
おとなしくなった白夜を見て、ティーアが再び直斗にスマホをせがむ。
「どうにもならないと思うけどな、この国に日本人は来なかったの?」
「日本人?………そんな人間が数十人来たらしいが………って、ああ!」
何かを思い出したティーアが叫び声をあげる。
その声に驚いた直斗はティーアに何を思い出したのかを問い詰める。
「どうしたティーア?そんな大声を上げて!」
「早く言いなさい、マスターが待っているではないですか!」
「ああ、思い出したのだ。町の近くの遺跡に日本人が何かを隠したのを!」
「隠した?」
「そうだ!いろいろな仕掛けを作り、最下層までいけば景品とやらが貰えるのだ!もう何百年もたつが誰も最新部へは到達した者はいないと聞いたことがあるのだ!」
力説するティーア、直斗は急に胡散臭くなったと思った。
「マスター、行きましょう。その遺跡に!」
「どうした?白夜」
いきなりやる気を出した白夜に困惑ぎみに直斗は聞いた。
「誰もクリアーしていないならお宝があるはず、それに未踏覇の遺跡はポイントが高いですよ」
「そうなの?」
「う~ん?多分としか言えないのだ、遺跡は大森林の奥に有るから魔物のレベルも高いぞ。それだけでも良いポイントが貰えるとは思うのだがな」
「ふ~ん。ならまずはダークエルフの町を探すか?」
「私は何も言えないぞ」
「でもこの奥にあるのでしょ?」
「………言えないのだ!」
確かに、ティーアはダークエルフの町の近くに遺跡があると言った。
それがこの奥だとも。
嘘をつくのが下手なティーアは両手で口を覆い、何も話さないぞと直斗を睨む。
自分達だけで話してもパーティーで行動する以上、氷依達の賛同もいる。
今夜はこのくらいにして、明日にでも氷依達に話して決めようと直斗は思った。
「この話は明日にしよう。氷依達にも話さないと決められないよ」
「そうですね、氷依様なら乗り気で賛成すると思いますけどね」
確かに氷依ならすぐに賛成するだろう、ならダークエルフの町を探して準備を整えないといけないと直斗は考えた。
「そういえば、他のパーティーはどの辺りに居るの?」
頑なに警戒をしているティーアに直斗は話題を変えてみる。
「うん?………他のパーティーか、えっと……出発点に戻っているぞ」
「二組とも?」
「うん。付き添いのエルフ二人の気配がそこにあるのだ」
大森林の中に入っていって、魔物に追い払われて外に出たのか計画通りなのかわからないがこちらに追い付く事はないと思う。
特にナイトラウンズ、あのメンバーのエリーナを見る目には敵意が見てとれた。
教室では感じさせなかったのにここに来て敵意を向けるとは思わなかった。
それもあり直斗は彼等とは距離をとりたかった、できるだけエリーナに危害が加えられないように。
「ティーア、必要最低限の物資は用意してもらえるんだよね?」
「そうだぞ。直斗達には必要なかったから出さなかったけど、テントと寝袋に水は用意していたのだ」
そんなんだと呟いている直斗の瞼が重くなっていく、直斗はテントの中の明かりを消して寝た。
翌朝までグッスリと睡眠をとれた直斗は亀テントを出る、外に敵の気配は感じないが慎重に出入口を開ける。
外のひんやりとした空気を感じて直斗はブルっと身を震わせる。
外を覗くと魔物はいない、直斗は亀テントから這い出して辺りを見ると、やはり寝ている間に魔物が亀テントに来ていたようだ。
複数の真新しい足跡が残っているのを確認した。
辺りを警戒していた直斗の背後から花さんが声をかけてきた。
「直斗様、おはようございます。朝食の準備の前にお茶をいれますね」
そう言って火の準備を始めた花さんに挨拶を返して直斗は周辺を警戒する。
花さんのお茶の支度ができた頃には氷依達や白夜達も起きてたので、エリーナに周辺の警戒を頼み直斗は昨日のティーアの話を氷依達に話した。
「日本人が造った遺跡?」
「そんな物があるんですね」
「直斗さん、そこに向かうのですか?」
「ええ、その近くにダークエルフの町があるらしいので先ずは町を探しましょう」
「フフフ、面白くなってきたわ。私は賛成よ」
「はい。私もですよ」
氷依と魅沙が賛成をしたのを見て、他の皆もダークエルフの町を先ずは探すのに賛成した。
これでダークエルフの町を探すのが決まった。




