直斗と委員長
昨日の委員長との別れから翌日、直斗の隣には委員長の姿があった。
中庭の清掃をする直斗の隣で、何か会話があれば良いのだが委員長は
「手伝う」
と言ったきり、黙々と清掃をする。
パーティーに誘った手前、直斗から話を振ればいいのだろうが、妙に委員長が意識をしているようで話しかける度にビクビクと全身を震わす。
それを見ると直斗は遠慮してしまった。
なんとか理由を聞き出してみると。
彼女曰く、パーティーから脱退して暇だからということだった。
昨日の提案に前向きに検討している感じはする。
きっかけが重要だろうとは思う。
しかしこれまで直斗の人生で、人に話しかける数が少なくわからないことも多い。
(マスター、委員長さんと話さないのですか?)
直斗の近くには必ず白夜がいる。
彼の精霊なのだから当たり前だが、その白夜は委員長に話しかけるのを直斗に止められていた。
(うん、わかっているんだけどね)
(………やはり白夜がマスターの変わりに話します?)
(いや!僕がパーティーのリーダーだから、白夜は見ていて)
そう言われたので白夜は黙って直斗の言う通りにしていた。
(何故か空気が重いですよマスター)
中庭を清掃している人数が3人もいるのに、掃除をしている音だけが周りに響く。
いい加減、今日の割り当て分の掃除が終わろうとしているのにと白夜は思ってしまう。
(やはり私が)
白夜は直斗を見て、自分に意識がいっていない事を確認して委員長に話しかけようと動きだそうとしたその時。
「光羽君」
直斗は委員長に声をかけられて振り向く。
それに慌てて白夜は動きを止める。
「光羽君はどこか変わった?」
「………うん。たぶんね」
たったそれだけの会話。
だけど、直斗はなんとなく心が軽くなった感じがした。
「明日も来るから」
委員長はそう言って帰っていった。
「マスター、もどかしいです」
「うん。ごめん」
委員長の後ろ姿を見送りながら白夜はポツリと呟いた。
直斗はそれに一言、謝った。
また翌日の放課後の中庭。
昨日と違い、委員長は直斗に話しかけていた。
「光羽君はどこの国に行ったの?」
「まだ、火の国にしか行ったことがないよ」
「そうなんだ、私は3か国です」
「へえ、委員長達は以外と積極的だね」
「そうかな?」
「うん。最初に行った国以外の国に行くのは恐くない?」
「最初は恐いかな、でも皆がいたから………」
委員長が沈んだ感じになってしまったのをみて、直斗は慌てて話しかける。
「まあ、依頼を決めるのは僕じゃないから」
「え?リーダーだよね?」
委員長は顔を上げて思わず聞いた。
「まぁね。でも実際は氷依が決めているよ」
「白亜さんですか………光羽君はそれで良いの?」
「いいよ。僕はできるだけ、楽な方が良い」
「でも、リーダーの面子は?」
「それはパーティーの皆が決めればいい。僕がダメなら氷依がやるさ」
「そう、信頼しあっているのね」
そう言って委員長が考え込んでしまったので、直斗は白夜と掃除を終わらせる。
「じゃあ、また明日」
委員長は直斗達に軽く手を振り帰っていった。
「マスター、委員長さん感じが変わりましたね?」
「うん。でもまだ本調子じゃないみたいだ」
今日はある程度、会話が成立したこともあり直斗はホッとして帰路についた。
次の日の放課後、委員長は自分の前のパーティーについて話し出した。
「最初は楽しかったよ、異世界に行って狩りをする。その為にこの学園に来たんだもの」
「そう」
「うん。でもね………だんだんと狩りの楽しさじゃなく、学園での立ち位置っていうのかな?。クラスの目を気にするように皆がなっていたのは」
委員長は少し沈んだ表情をする。
直斗はそれには答えられない。
白夜も直斗と同じだ。
直斗は人の視線をあまり気にしない。
今まで直斗はクラスでも私生活でも一人で過ごし、幼い頃からそう生きてきた。
他人の目を気にするぐらいの細かさがあれば、もっと柔軟にクラスに溶け込めていたのだろうかと直斗は思う。
「それでね。私の前のパーティー、ナイトラウンズのリーダーだった人が光羽君を意識してからかな、ギクシャクしてきたのは」
「それは………すみません」
「?。マスターのどこが悪かったのですか?」
白夜は不思議そうに委員長を見上げる。
「ごめんなさい。光羽君は悪くないよ白夜さん。私達の問題だったの、もっと………何かできたのかな?」
「深見さんは後悔しているの?」
「………………いえ、私に関しては時間の問題だったと思う。私はこんな感じでしょ?子供みたいに背も低くて、それでいてクラスの委員長も任されている。彼にしてみれば面白くなかったのかも」
「それだけで仲間を切るのですか?」
「そういう人も居る。という程度の話だよ白夜」
「そうですか、勉強になります。マスター」
「うん、そう。光羽君の言う通り、その程度の話だったんだよきっと」
委員長の瞳に輝きが戻る。
「光羽君、有り難う。もう気持ちは決まっているけど………明日、返事をするね」
委員長は微笑んで帰っていった。
「なんか………大人ぽいよね委員長って」
「えっ?マスター、気づいてないのてすか?」
「?、なにを?」
「フフフフ、なんでもないです。明日は楽しみです」
怪訝な顔した直斗を楽しそうに見上げる白夜。
直斗は首を傾げるがすぐにどうでも良くなった。
白夜の言う通りに明日が楽しみだったから。
罰による中庭の清掃も最終日になり、何故か委員長の発する雰囲気で空気が重く張りつめている。
すでに掃除も終わりパーティーに入るか答えを聞くだけなのだが。
「あの~、委員長。何かあった?」
「えっ?………いいえ、そうじゃないんです」
「そう?」
「はい!………………えっとですね。光羽君のパーティーには入りたいです。でも………」
「?、なにかあるの?」
「はい、なんと言いますかその私の個人的な事でして………」
「何か問題でも?」
「問題っていうか、その………」
「マスター、委員長さんはハーフエルフなんですよ」
「!」
「?。それがなに?」
白夜の言葉に驚く委員長、直斗はその意味がわからずにキョトンとしている。
「つまりですね………委員長さんは、おばさんなんです!」
「え?………おばさん?………委員長が………本当に?」
「え?………え?」
直斗は驚きと困惑の目で委員長を見る。
ジロジロと見つめられる直斗に委員長はじゃっかん引き気味で、この原因を招いた白夜を睨む。
「なんですか?委員長さん」
「いえ。それにしてもバレバレでしたか?」
「そうでもないですよ。一緒に掃除をするまでわからなかったですから」
「ハア。と言うわけなのですが、光羽君」
「えっ、………はい。委員長がハーフエルフで問題があるのですか?」
「問題と言いますか価値観の問題です。私は白亜さんみたいに地位のある人間ではありません。異族のハーフは未だによく思われてはいないですから、後々に嫌な思いをする可能性がありますよ?」
「じゃあ、問題ないです。その程度で優良物件の委員長を逃すほど馬鹿ではないですから」
「そう、ですか。ではこれからお世話になります」
この程度と言った直斗には驚いたが、委員長はそれに安心感を覚えた。
胸の支えも取れて、委員長は晴れて直斗のパーティーに入る事を伝えた。
頭を下げた委員長が顔を上げて直斗を見る。
彼は何やら言いたそうな顔をしている。
「何か?」
「えっと………………深見さんは………何歳なの?」
「………………13歳です!問題がありますか?ないですよね!」
委員長の迫力に押されて直斗は素直に首を縦にふった。
「もう。それと私の事はエリーナと呼んでください。………お兄ちゃん。………フフ」
ピクと顔が強ばる直斗。
悪戯っぽく微笑むエリーナを見て直斗は彼女の方が上だったと肩を落とした。
白夜とエリーナはそれを見て笑う。
中庭には3人の楽しそうな声が周りに響いていた。




