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帰還

一部、残虐的表現があります。ご注意ください。

水牙大蛇はこの島に向かう舟の存在には気づいていた。

気づいていて見逃してやった。

たいした力も感じない人間が何人こようとも関係ない。


その人間が島に上陸してもまだ水牙大蛇には関係ない事だった。

目の前にこの人間達が現れるまでわ。


威嚇するように水牙大蛇が頭を上げる。

プシュー!プシュー!と音をだして、直斗達に牽制をする。


「直斗、どうする?」


思わず直斗は氷依を見た。

不安そうな声をだす氷依を直斗は知らない。

そうか………と直斗は思う。

氷依でも怖いと感じる事があるんだなと。


「予定通り。でも、まずは僕が行く!氷依は氷魔法を魅沙の位置で放って。花さんは更に離れて攻撃を。じゃあ………行くね!」


直斗は走りながら精霊装備を装着する。

いままで忘れていた。

氷依のその声を聞いて、緊張が解けた気がした。


直斗はまず自分が見本となり後ろに伝える。

声などかけなくていい、自分を見てくれれば仲間達は自分で気づくはずだから。


氷依達は走り行く直斗をただ見ていた。

何をすればいいのかは直斗が教えてくれた、それでもまだ体か重い。

直斗の両腕が輝く、直斗の精霊装備だ。


氷依は自身のスマホを取り出して、精霊装備を装着する。

白く輝く全身鎧。

その鎧から伝わる力に氷依の目に力が宿る。


「あー!」


「氷依さん?」


「お嬢様?」


「なにをボーとしてるの?戦いがはじまったのよ!直斗の………リーダーの指示通り戦いましょ!」


氷依の力の宿った目を見て、魅沙も花も緊張が少しとれた。

準備を整えた3人はその場で深呼吸をして、水牙大蛇と戦っている直斗の元へ向かった。


直斗は水牙大蛇の胴体に手が届く距離まで近づいていた。

頭をもたげた水牙大蛇は接近する直斗に攻撃をする素振りも見せずに近接をゆるす。


(簡単すぎる?でも行く!)


そう思ったが直斗にはこれしかない事は承知している。

おもいっきり踏み込み、直斗は右ストレートを胴体に打ち込む。


なんの抵抗もなく水牙大蛇の胴体に直斗の拳がめり込み、引き抜いた箇所が再生されていった。

(予想通りだけど手応えがなさすぎる)


水牙大蛇の抵抗らしい抵抗もなく、難無く直斗の拳は胴体の中を抉りとった。

その再生場所を見ていた直斗は不意に大きく体を後方に跳躍した。


ドカ!

と直斗がいた場所に破砕音と地面がえぐれている。


水牙大蛇の頭がゆっくりと地面から持ち上がり、直斗を見つめる。


「アイスブリッド!」


後方からの氷依の声。

氷の弾丸が水牙大蛇の胴体に小さな穴があく。

胴体に埋まった氷の弾丸が、水牙大蛇の胴体の一部を氷らせていく。


その攻撃に僅かに目を細める水牙大蛇。

直斗は再び前にダッシュをすると氷依の攻撃で氷らせた箇所を拳で打ち砕く。


パリン!


と砕ける胴体の一部、続けざまに放たれる氷依の氷の弾丸は着実に水牙大蛇の胴体を氷らせていく。


直斗は動き回りながら、氷った箇所を殴り削る。


(ハア、ハア、どうだ?)


「直斗さん!」


魅沙の叫びにハッ!として直斗は上を見る。

ほんの少しの油断だったが、水牙大蛇は牙を剥き出しにして直斗に襲いかかった。


ガギーン!


直斗は両腕を前で合わせて、迫り来る牙を防ごうとガード体勢で衝撃が来るのをまった。


いつまでもこない衝撃に直斗はガードを解いて前を見る。

魅沙の盾が二枚浮いて、直斗を守っていた。

盾に食い込む牙を引き抜き、水牙大蛇はゆっくりと前に移動した。


(前に動く?)


水牙大蛇は全身を湖から島にあげると、卵を生むみたいにポコポコと1メートル位はある卵みたいな物を作っていく。


「直斗、なんだと思う?」


「わからない。でも面倒くさそうだ」


島に上がり動きを止めて、何かを作っている水牙大蛇の頭上から雷撃が突き刺さる。


周囲に響く破裂音と衝撃の凄まじさ。

花が雷結晶の中級魔法剛雷を放ったのだ。


周囲にあった謎の卵を幾つか巻き込み水牙大蛇から煙があがる。

直斗は全ての動きを止めた水牙大蛇に近づいていく。


(やったか?)


ツ!

水牙大蛇と目があった。

直斗は氷依達に攻撃の続行を伝えて前にでる。


「直斗さん!」


魅沙の切迫つまった声を聞き、直斗は体を横に流しながら後ろを確認をすると、謎の卵がかえり水牙大蛇ミニが10体 ほど出現していた。


直斗は氷依に声を飛ばす。


「氷依!プランCだ!頼む」


氷依はハッ!と我に返り直斗の言葉に頷く。

氷依は魅沙と花と合流して水牙大蛇ミニに立ち向かう。

ミニと言っても3メートルはゆうにあるが。


直斗は水牙大蛇ミニを氷依達に任して、水牙大蛇の前に立つ。

援護がなくなったが、直斗は焦らずに心を落ち着かせる。


(氷依達がアレを倒すまで惹き付ける)


直斗は効果が薄いとわかっていても水牙大蛇の胴体に攻撃を集中した。

頭が手の届く位置にないからだ。


左右の連打を叩きこむ、ふと直斗は叩きつけて削れている箇所が盛り上がった気がして、攻撃を止めた。


その直後、削れた箇所から一匹のミニ大蛇が牙を剥いて襲ってきた。

至近距離からの攻撃に直斗は僅かに後ろに上体を反らして牙は回避したが、そこからムチのようにしならせた頭突き攻撃を右肩にうけた。


右肩が砕ける音が体内で響く、直斗は激痛に顔をしかめながら距離をとる。


(ッ!………折れたな)


直斗の右腕がだらりと下がり持ち上がらない。

水牙大蛇は相変わらず直斗は眼中に無いかのように氷依達の方へ意識を向けている。


(まさか、中にも飼っているなんて)


直斗はギフトから回復薬を選び飲みほし傷を治す。

痛みは引いたが右腕全体が痺れている気がする。


(………思った以上のダメージだったのか?回復が遅い)


手負いの直斗には目もくれずに水牙大蛇は氷依達に目を向けている。


(どういうことだ?こちらには目もくれずに氷依達を気にするのは?)


そういう習性なのかと直斗は考えたが、今はそれがありがたい。

直斗は2本目の回復薬を飲み、右腕の具合を確かめる。


(過剰摂取は良くないと言われたけど、しょうがない)


右腕の痺れもとれて、直斗は再び水牙大蛇に近づく。

焔鳥の割り込みもなく目の前の敵に集中できた。水牙大蛇は近づく人間をただ見つめる。

主より命じられた事は観察すること。

殺さない程度の攻撃とイライラが募る。


もう一週間以上この島にいる。

炎を纏う鳥が鬱陶しく攻撃を仕掛けてきたが、大抵自滅した。


目的の人間が来た、これでこの島から離れられる。

ある程度、戦えば逃げても良いと主から許可を得ている。

その命令に従い水牙大蛇は

動いた。


直斗に目掛けて水牙大蛇が尻尾を水平に振ってきた。

直斗は地面スレスレにしゃがみこむ。

ジャンプしては次の行動がとれないと考えて。


頭上を巨大な尻尾が通りすぎる。

直斗は体を起こして走る。

水牙大蛇は尻尾を振った反動で次の動きが鈍い。


(ここ!)


直斗は走りながら水牙大蛇の背に乗るように立つと、そのまま頭の位置までかけあがる。


(どうだ!)


背中をかける間もミニ大蛇が顔をだして直斗を攻撃してくる。

直斗は勢いを維持したままミニ大蛇を倒していくとついに水牙大蛇の頭まで到達した。


(いけるか!)


直斗は真上から水牙大蛇の頭を殴る。


殴る殴る殴る殴る。


とりつかれてるかのように直斗は頭を殴り続けた。

ミニ大蛇が出て来てもお構い無く。

そして何か?水牙大蛇の頭の中の何かを破壊した。


(?………なんだ?)


その直後、いままで微動だにしなかった水牙大蛇が身をくねらせて暴れだした。

頭上にいた直斗は放り出されながらも、なんとか着地して水牙大蛇を見る。


そこに目が赤く光る水牙大蛇が直斗を見つめている。


激しい痛みから解放された水牙大蛇は自身の制約が解かれたのを感じて、歓喜に震えた。


水牙大蛇の動きが急に変わった。

先程までの緩慢な動きから、獲物を狙うハンターのような気配に変わった。


(なぜ?急に、さっきの手応えはいったい?)


胴体を地面に擦り付け水牙大蛇は直斗を囲むように動く、直斗は取り囲まれないように動くしかなく近づけないでいた。


「剛雷!」


花さんの声が直斗の近くから聞こえた。


ドーン!


と威力ある雷が水牙大蛇に突き刺さる。

直斗は雷の光を直視しないように出来るだけ下を見るようにする。


(!)


直斗はそこで気づいた、水牙大蛇の体表面を雷が滑るように地面に散っていく。


「花さん!ダメだ。雷が地面に吸収されてダメージが半減している!」


直斗の叫び声に花は苦い顔をする。

ミニ大蛇には一撃で効いた雷撃が水牙大蛇には効果が薄いらしいと。


氷依に魅沙、体のあちこちに打撲や傷を作りながらも、ミニ大蛇を全滅させた。


2人よりダメージが少ない花が先行して直斗の元に来て、攻撃したのだが僅かに動きを止めさせただけにおわった。


その僅かな隙を狙われた。


「花!」


普段は絶対に言わない直斗の絶叫に近い叫びを花は聞いた。

花はその声に反応して水牙大蛇を見ると眼前に迫る口を大きく開けた水牙大蛇がいた。


(!)


恐怖による硬直で花は動けなくなった。

迫る牙に目を見開く花、水牙大蛇に砕かれると思った瞬間、一陣の影。


グシャ!


と鈍い音が花の前で響く。

花の目の前で血の花が咲く。

直斗がクロスガードして花と水牙大蛇の間に割ってはいたのだ。


「直斗様!」


直斗のガードの隙間に食い込む水牙大蛇の牙。

噴出する血。

崩れ落ちる直斗を花が抱き抱えた。


ゆっくりと水牙大蛇は直斗から離れる。

再度、噛みつきに行く水牙大蛇の前に7枚の盾が展開された。

それは花と直斗を囲むように展開し氷依と魅沙は花と直斗に合流した。


展開された盾の中、出血激しい直斗はぐったりしている。

外から響く打撃音、魅沙は懸命に盾を維持して時間を作る。


「花!花!。落ち着きなさい!まだ助かる!」


直斗の出血部位を手で押さえて止血している花は目の焦点があっていない。

そこに氷依の厳しい叱責が花を少し覚醒させる。


「たすかる?」


ぼそりと呟く花は氷依を見る。


「ええ!助かるわ!貴女が必要な事を思い出せば!」


「なにを?」


氷依は問いかける花を無視して回復薬を口に含むと、口移しで直斗に薬を飲ませた。

力も意識もない直斗に薬を飲ませるにはこれしかなかった。


「………、後はわかるわね?行くわ!」


花を優しい目で見て、氷依は魅沙の見つめる先を怒気のはらんだ瞳で射ぬく。

氷依が直斗から離れて花は自分の瞳から涙が流れているのに気づいた。


「直斗様」


花と直斗の唇が重なる。



(………………………僕は………死んだのかな?)


直斗は暗闇の中で重力を感じない不思議な空間にいた。

なにも見えず何も感じない。


(皆は………………)


「ま………すた…!」


「!」


「マスター!」


「!………だれ」


力なく呟く直斗の目の前に、黒猫に白い翼。


「きみは」


「マスター。やっと声が届きましたわ」


「こえ?」


「はい!ずっとずっと、この日が来るのを待ちわびました。マスターはまだ死んではいません」


「!」


「はい。あの蛇はマスターの仲間を傷つけております」


「………そうか」


直斗の体に力がはいる。


「マスター。我に名を、マスターの力となる我名を与えてくださいませ!」


「ちから?」


「はい!あの蛇ごときに負けない力です。マスターだけの力」


「きみに名を与えれば良いの?」


「はい」


「………………白夜」


「白夜………。我名は白夜!マスターを勝利に導く、マスターだけの精霊!」


黒猫から直斗に力が流れる。

その温かい力の流れを直斗は全身に感じる。


「?!」


直斗の意識が強烈に引っ張られる感覚。


「マスター、お戻りの時。その新たな力で………………」


直斗の頬に温かい水があたる。

うっすらと目を開ける。


涙を流しながら直斗を見つめる花がいた。


「花さん?」


「………ぐしゅ。な、直斗……さま」


直斗は花に膝枕をされていた。


「!……ごめん」


直斗は頭を上げようとするのを花が押さえ込んだ。


「いいのです」


「でも………」


花は直斗を優しい目で見つめる。

直斗は花の雰囲気が変わった事に驚いた。


「な~お~と!」


ビク!と直斗が震える。

声のした方を見ると氷依が怒りを圧し殺したような視線を直斗に向けていた。


「あっ!悪い」


花の膝枕から頭を上げて、直斗は立ち上がろうとした。クラ!と頭が揺れる。


「まだ無理はダメです、直斗様」


花の優しい声が身にしみるが、直斗は花に首を振ってもう大丈夫と伝える。


「直斗、魅沙がもうもたない」


「だっ、大丈夫で…す」


額から大粒の汗をかきながら、魅沙は直斗に微笑む。

氷依は苦しそうに顔を背ける。


「そう………、魅沙さん直ぐに終わらせるよ」


驚きを隠せない3人。

なにかを確信した直斗は心に命じられるまま、花からまだ魔法が使える雷結晶を受け取り魅沙に前を開けるようにお願いをした。


「なっ!ダメよ直斗。私達では悔しいけど力が足りない」


直斗が何をするのか不明だが、外に出ようとするのを氷依が止める。


「大丈夫。その為の力も貰った」


静かに告げる直斗の体から溢れる迫力に氷依達は黙って直斗を見送った。


(もう良いよね白夜………もう限界だ)


直斗は自身の怒りを抑えるのに限界がきていた。

直斗の思いに答えるように両腕のガントレットの一部が開く。


直斗はガントレットの開いた場所に雷結晶と炎結晶を中に入れた。

右のガントレットの赤い線が燃え上がる。

左のガントレットは黄色い線となり雷を纏うように放電した。


水牙大蛇と目が合う。


「お前はもう死ね」


直斗は静かにそう告げるとその姿が消えた。


(?)


直斗の姿が消えた事に水牙大蛇は理解できなかった。

直斗を探そうと目を動かす。


ドガ!


水牙大蛇の胴体が浮いた。

下を見ると直斗が全身に雷を纏い水牙大蛇の胴体に左拳をアッパーぎみに打ち込んでいた。


ダメージはない。

水牙大蛇はそう判断して直斗を噛み砕こうと襲いかかる。


(??)


地面に激突する水牙大蛇の顔。

攻撃が当たる瞬間、直斗が消えて水牙大蛇の頭上に現れた。


「まず1つ」


直斗は左腕の雷の力を拳に集め頭を殴りつける。

水牙大蛇の頭から内部に雷撃が駆けめくる。


「グウアオ!」


顔や口から雷撃が漏れる。

水牙大蛇は体が痺れて動けなくなった。


なにが身に起こったのか混乱する水牙大蛇。

痺れて動かない顔の前に直斗が立つ。


見つめ合う直斗と水牙大蛇、直斗は無表情のまま右腕の炎結晶の力を拳に集める。


「これで終わりだ!」


直斗は右ストレートを水牙大蛇の顔に当てた。

顔面から僅かな打力を感じたが、それだけだ。

水牙大蛇は余裕を取り戻し、動けない体をどうにかしようと僅かな顔を動かした時。


ボン!


水牙大蛇の顔が弾けて消失した。



離れた位置から氷依達は直斗の戦いを見ていた。

直斗が両腕のガントレットに魔法結晶を入れたのは確認できた。


その後は想像を越えていた。

直斗の体が消えたと思ったら、水牙大蛇が浮くほどの攻撃をした。

水牙大蛇の反撃をかわして、頭上から地面に叩きつけて動きを封じて最後に右ストレートを水牙大蛇に放った。


それで水牙大蛇の顔が弾けとんだ。

直斗の目の前で水牙大蛇の体が溶けて消えていく。

その様を氷依達は信じられない気持ちで、ただ見ていた。


直斗は仰向けに倒れて青い空を見ていた。

水牙大蛇を倒したのはいいが、その後にぶっ倒れた。

氷依達がそれを見て慌てて駆け寄り、魅沙が回復魔法をかけたが直斗が立ち上がれるほどの回復ができなかったので、氷依の命令でこのまま休んでいるように言われた。


氷依達は手分けして焔鳥の卵の収集。

見渡す限りある卵、500個ぐらい簡単に集めることができるだろう。


直斗は段ボールに入っている焔鳥の卵500個をギフトにしまい、氷依達と学園に帰っていった。

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