ダンジョン
「どっこいしょっと」
まだ寒い季節に引っ越しで段ボールだらけのこの部屋。
新しい生活に慣れていかないとな。
俺は同棲していた彼女から別れを告げられ部屋を追い出された。仕事も頑張っていたんだがそれがいけなかったようだな。
別れを切り出されたのでホッとしたような寂しいような。
でも新しく部屋を借りて心機一転頑張るしかないか!
「あれ?こんなところあったかな?」
キッチンスペースに床下収納のようなものがある。
俺は賃貸契約書を読んでみる。やはり記載されていないのでこちらの落ち度じゃないようだ。
「ふんぬぅぅぅー」
すぐ開くもんだと思っていたら意外と固く閉じられている。
「うがっ!!」
急に開いた扉の中はどうなっているのか?
蜘蛛の巣だらけだったり古い漬物なんかが入っていたら嫌だなぁ、と思いながらそーっと中を見る。
「なんだこりゃ?」
そこは人が一人入れるような深さの空きスペースになっていてどこに繋がっているかわからない。
「でっかい床下収納だな」
俺は段ボールから懐中電灯と軍手を持って中に入る準備をした。
中に入ってみると暑くも寒くもなく快適な温度だ。真っ直ぐ進むと左右へと曲がる通路が見える。
「なんなんだ?」
分かれ道まで歩いて行くと左には木の箱が置いてあり右はまだ先があるようだ。
とりあえず木の箱を開けてみると手紙と剣?が入っていた。
「これ本物かよ?」
剣を抜いてみるとヌラッとした特有の光を放つ。
鞘に納めて手紙を確認する。
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この手紙を見た者へ
ここは地下ダンジョンへの入り口だ。
2030年までにここを攻略しないと各地にダンジョンが出来る。
それを阻止して欲しい。
俺は先に行くからこれを見たら俺がまだ攻略していないと思ってくれていい。
餞別にステータスと剣を置いて行くので出来れば俺と一緒に戦ってくれることを希望する。
2003.1.30.真人
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「は?」
この真人って人がここを攻略出来ないとダンジョンが色んなとこに出来るのか?
待て待てそれよりステータスってなんだよ?ゲーム感覚じゃねーかよ。
「す、ステータス」
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進藤 拓磨 25歳
レベル1
スキル
ユニークスキル スマホ
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「で、出たし!なんで?どうしてこうなった!」
四角い画面は顔から離れない。
とりあえずワタワタしてると消えてくれた。
「ふぅ、とりあえずこの剣があるのはこの先にモンスターがいるってことかよ」
ロープレじゃないんだからこんな片田舎のこの部屋じゃなくても良いだろうに。
だが2003年から潜っているなら今は2026年、二十年は軽く経ってるな。
てかあと四年しかないじゃないか!
あぁ、どうしようか…俺にこんなことが出来るのか?…とりあえず先に進んでみるか。
俺は剣を抜きそろりそろりと進んでいく。
球体の『スライムのようなもの』が出て来て転がっているのでこう言うのならばどうとでも出来るな。
「うりゃ!」
剣で刺すとプジュルッと萎んで消えてしまった。後に残されたのは石のような物だった。
つまんでみると宝石のような光を放つのでこれは取っておくことにする。
『ブルッ』っとここでスマホが震えたので見てみると『実績達成』と出ている。
「おいおい、買い替えたばっかりだぞ」
スマホがおかしくなっている?
少し落ち込んだが、アプリがインストールされていた。
『実績達成によりヒントアプリがインストールされました』
ヒントアプリ?
開いてみると腕立て、腹筋、スクワットが0/100になっている。
これをこなすと何かが起きるのか?
とりあえず部屋に戻ってこのヒントアプリを使ってみる。
25歳にもなってちょっとウキウキしている自分がいるが、まぁしょうがないだろう。
筋トレを始めて一時間。鈍りまくっている身体には筋トレはキツイがどうにか達成した。
『実績達成、身体強化を獲得します』
えっ!これだけで身体強化?
とりあえず段ボールを持ち上げると軽いな。
「スッゲェな!」
ヒントアプリはそれから素振り0/100になっていたのでそれもちゃんとやってみる。
『実績達成、スキル『初級剣術』を獲得しました』
今度はスキル?
ステータスを見ると初級剣術がスキルに入っている。
「よし!これで少しは戦える……って俺は何をやってるんだ?」
少し思えばこの異常な空間がわかるだろう?なぜ俺はこんな真剣になってたんだ?
110番と……最初は半信半疑で来た警察官も時が経つにつれ慌ただしくなって行く。
俺は新しい部屋を借りた。
前の部屋はそのまま自衛隊なんかが来て色々あり、結局は締め出された形だ。
新しい部屋は用意してもらって今日入居が済んだばかりだ。ちなみに会社はクビになってしまった。
色々あり休んでいたのが決定的になったのだ。
かなりちゃんと話をしたのだがあまりにも突拍子の無い話ばかりで呆れたのだろう。
自主退社を促され、こちらもしょうがなしにサインをした。
まぁ、まだ25歳だ。どこででもやっていけるさ。
引っ越し業者が去ってようやく1人になったが妙な既視感がありキッチンに行くと、
「な、なんであるんだ?」
そこにはダンジョンの扉があった。
不自然にそこにある扉は俺を呼んでいるようだった。




