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第十七回

 言いよどむサワネを疑わしげに見つめながらも、おばばはそのまま黙っていた。

「でも、背負子は作り直せるから大丈夫。山刀はおらひとりじゃどうにもならないから、ちょっと困るけど」

 おばばは目を細め、サワネを見た。

「ならば、ヨヘイにでも作らせればええじゃろ。ヤツめおぬしにホの字じゃで、山刀の一本や二本ぐらいおやじさんのところで作ってくれるぞ、きっと」

「やめてよっ!」

 サワネが頬を膨らませるのを笑いながら眺めている。

「さてと、朝餉あさげの用意でもしようかの。サワネ、この青二才を見ていてくれるか?」

「任せて」

 だが、おばばは縄梯子に足をかけようとしてそのまま止まってしまった。

「……のう、サワネ。魔除けの頭帯はどうした?」

「あ。忘れてきた」

「どこでぞ?」

「岩の上で外されて、落ちたのを拾い忘れてた。それどころじゃなかったから」

「誰にじゃ? 誰に外された? うん?」

 いつになく強い調子でおばばが聞く。

「……天狗」

「なに、天狗じゃと?」

 おばばは縄梯子から手を放し、サワネに近付いた。

「他に……何かされなかったか?」

 サワネは首を左右に振った。

「どれ、ちょっと見せてみぃ」

 おばばがそっと額に手をのばす。サワネは目を閉じた。特に見た目に変わりはなく、おばばは手を引いた。

 一方のサワネは、目をつむったまま笑い出しそうになるのを必死でこらえていた。おばばが額をかすかに触れるか触れないかのぎりぎりでそっと撫でていく。それも、何度も何度も。眉間から額にかけて、内側で何かがうずくような、くすぐったいような、へんな気持ちになってきていた。

「なぁ、おばば。くすぐったいよ。もうやめてくれ」

「触れてないぞ」

「えっ……?」

 サワネが目を見開くと、おばばの両の手はサワネの目の前にある。それでも触れられたような額のかすかなうずきは続いていた。

「なぁ、おばば、どうなってるんだ? へんな感じがする。ねぇ!」

 その感覚はどんどん強くなってきた。

 サワネの頭の内側で、何かがうごめいている。暴れている。額を食い破って出ようともがいている。内側から外に向かってしびれるような感触が広がり始めた。

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