㉚残像劣化
猪頭な男は消えていった。墓場界の奥底へと
連れていかれたような感じだ。地面には、水龍が潜っていった、地響きがまだ聞こえている。グググゴゴゴ。祝律音は、陸弦の強さに、震えていた。『凄いよ~師匠~』と叫んだ。陸弦は、すでに、次の鹿頭男2人のところへ、移動していた。その距離、30m。いつの間に…移動したんだ。鹿頭男2人の、奇妙な連続攻撃を、陸弦が、紙一重でかわしている。1人の鹿頭は、3本の長く伸びた爪、長さ約1mはありそうな爪。先端は桑のように、折れ曲がっていて、鋭く尖っていて、何でも引きちぎりそうな、鋭利なもの。両手共に、3本の長い爪で、陸弦にとびかかり、右、左、右、シャッ!シャッ!シャッ!!と3連続攻撃。もう1人の、鹿頭の武器は、槍だ。長槍である。2m30cmほどの背丈の、長い槍。攻撃する度に、槍先が、ブルンと揺れる。上段、中段、下段と3段階攻撃。槍の突き刺し3連攻撃!凄まじい破壊力を思わす、空気を切り裂く音が、聞こえてくる。凄い速さだ。だが、陸弦はなんなく、上体を反らして身を躱す。3本爪がまた、とびかかり、シャッシャッシャッ!と左、右、左と攻撃。その攻撃が終わるその刹那、長槍が、また、3段階攻撃!突き刺し攻撃をしてくる。陸弦の足元を必用に狙う。ブルンブルンブルン!3本爪は、長槍を持つ鹿頭が、3段階攻撃してるその間に、背後に周り、また、その槍の鹿頭の背から、飛び出し、襲いかかる攻撃。シャッシャッシャッ!右、左、右!見事な攻撃パターンだが、どこか1本調子で、陸弦に上手いこと、両方の攻撃を捌かれている。それをじっと、分析がてら見ていると、後ろから、突然、声をかけられた。『おい!キサマ!何しとんじゃ!こっちじゃ!』と『うわっ!』と、ビックリして、振り向くとそこには、陸弦がいた!『ええ~っ?あれ?なんで?だって戦ってるじゃないですか?あれは誰?』祝律音は、驚いたまま問う。『あれは、残像劣化だ。リアルな残像が、戦いのリズムをとってるのさ。攻撃してる感触も、リアルに感じているように、あやつらの、戦いの意識を、劣化させているのさ。あいつの、猪頭のチート級のクスリを、戦い中にちょいと、くすねたんで、あやつらの目に、わからんように、掠めた攻撃の最中、塗りこんでやってから、残像劣化を引き起こしたから、ちょっとやそっとじゃ、あやつら、目覚めんぞ。カッカッカッ』陸弦は笑った。『なんだあ、ビックリしましたよ~。そういうことですかあ。なんだよ~.すげーなー』と喜んでいた。つかの間、陸弦の足が突然、ガッ!と掴まれたような衝撃が走る!うあっ!陸弦が叫ぶ!『またまた師匠~やめてよ~』と祝律音はおどけたが、陸弦は、息が出来ないという、仕草で苦しそうにしている。『演技でしょ~演技~』祝律音は更におどけて言う。さっきのさっきなので、当然、疑う。よく見ると、地面からドロドロの、赤黒い手が、伸びて、陸弦の足首を掴んでいる!背後には、水色透明であった、先程の、地面へ消えていった水龍が、赤黒く姿を変えて、血まみれの、凄い形相をした、水龍のその先端角が、陸弦の背中に刺さっている!『ああー!師匠!!』一気に陸弦は、持ち上げられた。グギギギギギ。先端角が深く、刺さっていく音。赤黒く水龍が地面から、立ち上ってきた!陸弦に刺さっていた、先端角は、より深く、陸弦を突き刺した。血しぶきが、派手に舞う。ブシュー!四方八方に赤い鮮血が舞う。『師匠~!!』『嘘でしょ!残像劣化でしょ!またバカタレとか言って出てくるんでしょ~』祝律音は泣きながら叫んだ。赤い水龍が地上から、高く舞い上がり、そしてゆっくり降りてきた。赤い水龍に乗って、先程の姿とは、打って変わって、猪頭男は、骸骨姿で、蕩けた肉片が乗っているだけで、見る影もない、まるで死神の姿であった。『我が師、陸弦、破れたり。小僧!夢でも、残像でもない。キサマも死ぬ運命にある。覚悟しておけ。』死神が低い声でそう告げた。僕は、完全に死を意識した。




