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■ 王の攻撃、根上の攻撃 2

「バレてる」

 

 安西は野本にコンテナの後ろに王がいることがバレたことを小声で伝えた。

「じゃ、殺してないってこと?」

「たぶんそう」

 安西が言うことは99%で当たる。

 野本は男とヨーコのやりとりを目で追うと、確かに手で合図をしていることが確認できた。

「「逃げて!バレてる!」」

 野本と安西の声が同時に響く。

 振り返ったヨーコは拳銃を野本と安西に向けた。

「伏せて!」

 根上は叫びながらコンテナから飛び出した。

 野本は安西を庇いながら咄嗟に甲板に伏せる格好になり、ヨーコは声のした方、根上を確認し、拳銃を根上に向け直した。

 根上はナイフをヨーコに向かって投げようと右手を振りかぶったところで、ヨーコの顔が歪んだ。

 王が一足先にヨーコの腕に向けてナイフを投げ、命中通り腕に突き刺さっていた。

 中国人の男二人はバラバラになって逃げ始めたが、根上は持っていたナイフを一人の男の腿に命中させ、男はその場に転がり込んだ。

 発砲音が一発聞こえ、もう一人の男も足を抑えながらその場に倒れ込んだ。

 根上がコンテナの方へ顔を向けると、コンテナの後ろから悔しそうな顔をした王が拳銃を構えたままの格好で立っていた。

「あんた何やってくれてんのよ!ただじゃおかないからね!」

 殺さずに逃がした王に対し、敵意剥き出しで吠えた。

 

 ヨーコが立ち上がり、腕に突き刺さっているナイフを自ら抜き取った。

 その瞬間、腕からは毒々しいほどの血液が吹き出した。

 無事だった右手に持っている銃を構え直したところに、安西が体当たりしてヨーコのバランスを崩そうとした。

 しかし、ヨーコは体当たりされる寸前でかわし、逆に安西がヨーコの足下に転げる格好となった。

 トキ!と叫ぶ野本に安西は痛む腹を抑え、根上さんに早く!と叫んだ。

 その声に短銃を根上に渡さないといけないという事を思い出した野本は自分の胸元から短銃を抜き取り、自分のところへ走ってきている根上に短銃を投げて渡そうとした。

「動かないで!」

 ヨーコが安西に銃を向けていた。

 根上も野本もその場で止まった。

「安西がどうなってもいい?」

 ヨーコは血の流れ出す左手に力が入らないことを分かられないように拳銃にそっと手を置いていた。

 甲板に蹲って横たわる格好になっている安西の膝の横に赤い水滴がぽたりぽたりと垂れた。

 安西は冷静にその水滴を辿っていくと、ヨーコの左腕から垂れていることが確認できた。そしてその左手には力が入っていないことも分かった。

 安西は野本と根上に視線を送り、一度ヨーコの方に視線を送った。

 自分の足下にいる安西には何も出来ないと勝手に思っていたヨーコは、安西は気にも止めず、前にいる野本と根上、それからコンテナの横にいる王に神経を尖らせていた。


 バカなまねはやめなさいと言わんばかりに眉間に皺を寄せて野本は安西を睨む。

 根上は安西のやろうとしていることを察し、ヨーコに気付かれないように小さく頷いた。

 傷口が痛む為か少し顔をしかめた安西の腹からは薄く赤いものがにじみ出ていた。

 野本はめざとくそれをみつけ、「ちょっと待って」と、両手を広げてヨーコに見せた。

「あんたはあたしたちたちを殺す気でしょ?」 

 野本は何がしたいのか、周りの人間には分からない。

「だったらそんなに焦らないでよ。どうせあたしたちに勝ち目は無いんだから」

「・・・なぜそれが分かるの」ヨーコは面白そうに鼻で笑う。

「あたし数学者よ、こんなの簡単。計算で答えが出ちゃう。今ここで戦ったとしてもあたしたちに勝ち目は無い。例えここであんたを倒したとしても」

「よく分かってるじゃない」

「だったらさ、なんでこんなことするのか、教えてからあたしたちを始末しても遅くはないでしょ?」

 それからでもぜんぜん問題無いじゃない。

 と、野本はヨーコに食ってかかる。



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