【第九章】 コンテナを抜けろ!
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「ヘリは誰が操縦するんだ?」
ヘリポートに着いた田ノ木ご一行様は、当たり前のことを当たり前のように幸元に聞いた。
「私」
「「は」」
田ノ木と野本は同時に声を発し、お互いに顔を見合わせた。
「あれ・・・何、もしかしてもうそう言った関係になっちゃったんですかぁ?」
田ノ木と野本を交互に人指し指で差しながら冷やかした。
「何勘違いしてんのよ」
「だって、そのコートとか」
「寒かったから!」
「ムキになるとことかー」
「アホか。本当にお前が操縦すんのかよ」
野本と幸元の子供のような言い合いに終止符を打ったのは、大人なタヌキだ。
「はい。こう見えましても事業用操縦士免許持ってますから」
得意気に言う幸元とは真逆に、全く信用していない二人。
「ねぇ、操縦士雇わない?」
野本が幸元を無視して田ノ木に提案した。
「あぁ、それくらい警察でなんとかできるはずだからな。ちょっと聞いてみるか」
「お願い」
失礼な!大丈夫ですってとムキになる幸元を無視し、田ノ木は携帯電話を操作し始める。
「あの、それでしたら私が・・・」
田ノ木は操作し始めた手を止め、野本は声の主へ怪訝そうな目を向け、幸元は『あーあ』と口にした。
「だれ?」
「あぁ・・・うちの運転手」
運転手が口を開く前に幸元が割って入り、それに合わせるように運転手は首を縦に振った。
幸元が乗った車の運転手は黒いスーツに身を包んだ背の低い小柄な男性だった。
そこに運転手がいることに初めて気付いた田ノ木と野本は、癖であろうか頭の中にこの男の情報が無いかどうかを探し出し始めた。
しかし、それらしい情報は一切出て来なかった。
この運転手はヘリの操縦にはとても慣れているということもあり、幸元が操縦するよしはマシだろうという考えにまとまり、渋々了承した。
貨物船が既に出航しているということは、見つけるのはそう難しいことではない。
航路も決められているし、それに漁船の類ではないのである程度目につくはずだと幸元の運転手は言った。
聞くところによると彼は飛行機や大型船舶の免許も持っているということだ。
「幸元家はやはりひと味違うな」
田ノ木が関心して言った一言に、『警察もこういう人が入るようになればいいのにね』と被せたのは、野本。
「お前はよ、一言も二言も多いのを自覚してるのか?」
「ぜんぜん聞こえない」
ヘッドフォンをしているので会話は全員に聞こえているはずだ。
「でだ、ええと・・・根上の持っている携帯はたしか桜坂さんのだったな。あれにはGPS機能はついてたよな」
「貸してください」
田ノ木が独り言のように呟きながら携帯を取りだしたのを見て、幸元が前の席から振り返り、田ノ木に携帯を渡してくれと言った。
はい、わかりましたと行かないのが警察だ。
田ノ木はややしばらく考えていたが、そこに入り込んできたのは運転手の声。『大丈夫です。このヘリにはそういった機材も積んでありますから、すぐに見つけ出すことができます』
運転手が手で示した先には田ノ木には見慣れた機材が設置されていた。
唸る田ノ木は携帯を幸元の手に押し渡した。
「てことはさ、このヘリは何かそういう時に使うってことを想定されてるってことよね。ってことは幸元さん家ってけっこうこういうものを持ってたりするわけ?」
するどい野本の質問に答えたのは運転手だ。
万が一の時の為に出来る限りのものは揃えています。と、基本的な解答を出し、水面下の本当の出来事にはふんわりとベールを巻いた。
「まぁ、なんでもいいわ。ひとつお願いがあるんだけどいいかしら」
「お願い?ええ、なんでしょうか。私にできることであれば」
「逆探知してほしいのがあるの」
「またお前は・・・」
口を挟んだ田ノ木に、警察じゃ何も出来なかったじゃないと言い捨てると、田ノ木も負け時と、警察でも今調べているが、少しおかしな点があるからそれを確認している最中だと新しい情報をもたらした。
「あのね、そういう重要なことをなんでさっさと教えてくれないわけ?」
「今言っただろうが」
「それじゃ遅いのよ」
「確実にデータが出てからでないと・・・」
「データデータって一体なんのデータなわけ」
永遠に続きそうな言い合いを止めたのは、幸元。
痴話喧嘩は家でやってくださいと言い、桜坂さんの居場所が分かりましたと、画面に出された赤い点滅を指し示した。
ここからそんなに遠くは無い。
問題はどこで救出するかってことだ。船の真上にヘリをつけるわけにはいかない。
それこそ気付かれる確率は非常に高い。というか、むしろ確実に分かる。
「撃ち込むのが早いんじゃないでしょうか」
「このヘリにはそんなものまで備わっているのか?そもそもが日本じゃ無理だぞ」
田ノ木は今聞いた信じがたい事実に対して、もう気の抜けた声を出すしかなかった。
「はい。これはこっちで許可は得てませんから。あ、でもちゃんと書類の類は提出して今に至りますからご安心を。ですが、ええと・・・これは警察ヘリにもありますよね」
「だからびっくりしてんだよ」
「参考にさせて頂きました」
「・・・まぁあれだ、その件についてはおいおいってことで・・・あいつらなら船首にいるはずだ」
田ノ木は額に浮かんできた嫌な汗を腕で拭い、絶対にいると言わんばかりに言った。
「船首?ですか」運転手は田ノ木に先を言ってくれとせかす。
田ノ木はざっと説明し、運転手は納得したように頷いた。




