お別れの日?
シシィちゃんやフォネちゃんに手伝って貰いながら闘技場での仕事を続けて、数日が経った。
予定では、今日の夜にはロベル達が魔物退治の仕事から帰ってくる。
だから、私達の仕事も今日が最後だ。
明日は旅に必要な品を確認して、不足している物を買い、あとは仕事で疲れた体を休めて、明後日の朝に旅立つ事になっている。
私はその旨を、これまで手伝ってくれた二人に、お礼と共に伝えた。
「そうですか、今日で最後……。わかりました」
「うん。今日まで、本当にありがとうね。シシィちゃん、フォネちゃん」
「いえ。それで、買い物は何時くらいからですか? 私達も旅用品を確認して、合流しますね!」
「えっ?」
「え?」
「……えっと……シシィちゃん? 旅用品って、合流って……も、もしかして、旅に、一緒に行く……の?」
「え、はい、もちろん…………えっ、も、もしかして、ダメなんですか!? そんな! 私達まだ、全然恩返しできてないのに! 嫌です、一緒に行かせて下さい!!」
「え、えっと、そんな事ないよ? 十分返して貰えたよ。だから、無理に着いて来なくていいんだよ?」
「いいえ、まだ全然です! 無理にでもないです! お願いです、ご一緒させて下さい!」
「え、で、でも……シシィちゃんはとにかく、フォネちゃんはまだ小さいし……私達の旅はね、大まかにしか目的地が決まってないんだ。だから、いつまで旅生活するかわからないし……そんなものに、貴女達を付き合わせるわけにはいかないよ」
「それなら大丈夫です! 私達、故郷からここまで二人でずっと旅をして来ましたから! 旅生活には慣れてます! ねっ、フォネ?」
「うん! フォネ、たび、できるよ!」
「……え、えっと、で、でも、ね?」
「大丈夫ですっ! ……うぅ、ダメって言っても、着いて行きます!」
「ええぇ……」
う、う~ん……今日でお別れして、二人はこのままここで、何か安全な仕事にでもついて、落ち着いた生活したほうがいいと思うんだけどなぁ……。
あの闘技場の人みたいな、二人を気にかけてる人もいるんだし。
でも、この様子だと、説得しても聞いてくれなさそうだし……こ、困ったなぁ。
「あ、あのね、シシィちゃん?」
「嫌です! 一緒に行きます!」
「あの、聞いて? あのね、私達、どこか、この国の東の地で、お店を開く予定なの。だから、その為の費用の節約に、毎日必ず街か村に寄って宿に泊まるわけじゃなくて、野宿も普通にするの。……小さいフォネちゃんに、そんな生活は、可哀想だと思わない?」
「そ、それは……っ」
「だいじょうぶだよ、おねえちゃん! フォネ、のじゅくできるよ? まえもしたし! おほしさまのしたでおねえちゃんといっしょにねるの、たのしいよ?」
「……フォネ……!」
「え、フォネちゃん……」
「……っ。……フォネも、こう言ってますから! 絶対に着いて行きます!」
「え、ええぇ……」
うぅ、説得失敗。
困って、助けを求めるように近くにいるシギとメルを見れば、二人は『可愛いらしい同行者が増えたな』『リゼ達にも紹介しないとですね』なんて話をしていた。
どうやら、反対はしていないらしい。
……同行を認めるより、なさそうだね……はぁ。