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言葉で戦う世界で、「は」しか使えない執事と、お嬢様の成り上がり~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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54.ヴァリアントギルド

「ギルドに入りに来たっす。」


「あぁ、そういうことか。んなら、あっちにギルド嬢がいんだろ。そこで受付しとけ。」


 その男は親切に受付の場所を教えた後、どこかへと立ち去ってしまった。



 受付では若い女性が色々な書類を出して、私達に書かせていった。


「では、ジュリネ様、ハロミト様、マユダ様。ヴァリアントギルドへの登録が完了(いた)しました。当ギルドでは二名から四名までのパーティーを組むのですが、御三方での登録しでよろしいでしょうか。」


 私達は当然のように納得した。


「では、"Fランク"からの始まりとなります。"Fランク"は見習いとして"Cランク"以上のパーティーのクエストに同席する形での参加となります。その引率パーティーが認め次第、ランクアップが認められ、自らの意思でクエストを選べるようになります。」


 今はどこかのパーティーについていって、そこで力を認めさせればいいってことか。


「この度、あなた方を引率されるパーティーの場所へとご案内します。」


 私達はその女性に連れて行かれて、端っこにあるバーのような所に来た。


「こちらがリーダーのダイセナ様とそのパーティー、ピューリ様、アナココ様、ベルル様となります。」


 げっ――。

 よりにもよってダイセナとか聞いてない。最悪なんですけど……。


「クエストは明日となりますので、今日はお二つのパーティーの顔合わせとして、仲を深めて下さいね。」


 何にも知らないギルド嬢は笑顔のまま、定位置へと戻っていった。


「ちっ。ただでさえ見習いは嫌なのに、よりにもよってこんな雑魚かよ。もう一匹は知らないけど、どうせ類は友を呼ぶんだし、雑魚だよな。やってらんないぜ。」


 ダイセナがわざわざ私達の肩をぶつけて歩いていった。

 最悪。こいつと一緒に戦うの? 本気で嫌なんだけど。


「すまないね。うちのリーダーは気が早くてね。俺はパーティーの司令塔ピューリだ。基本的な事なら俺に聞いてくれ。答えられることなら答えるからさ。とりあえず、よろしくな。」


 とても気さくでよい印象だ。顔は整っていて、笑顔はとても輝かしい。どこかガンマン風に見える衣装を身につけていた。


「私、ベルル。弓矢使いなの。ところで、みんなはどんな武器使うの?」


 気さくな感じで話す彼女はとても周りを和やかなムードにしてくれる。

 和やかムードで話していると途中で、無言だった男が口を開いた。


「あのー。リーダーも帰ってるし、俺、帰っていいすか……。」


 まるで徹夜サラリーマンみたいなくたびれた見た目をした男だった。アナココという名の男はそのまま帰っていった。


「あいつはああいう奴なんだ。まっ、そっとしてやってあげてくれ。」


 ピューリの声掛けが小さく響く。

 残された二人と私達は話していった。





 巨大なカゴの中に入る私達。


 そのカゴを巨大なプテラノドンが(つか)んで空を飛んでいく。


 空から見る広大な景色。

 広く広がる世界。


「鳥の魔族が二匹、四時の方向から来た。撃ち殺して!」


 プテラノドンの言葉に、ダイセナとピューリが反応した。


【ダガー】――【ピストル】


 ダイセナの投げるダガーナイフとピューリの撃つ銃弾が鳥を撃ち落とした。


「これを使えば魔王城まで一気にいけそう。」そんなことを言ってみた。


「遠くへと行けば行くほど、飛んでる魔族が強くなるんだ。魔王城付近になりゃあ、命が幾つあっても足らねぇよ。」


 空の旅も一筋縄では行かないみたいだ。


 プテラノドンは砦の近くにある村落へと降り立った。

 そして、カゴを地面に置いた恐竜が人間へと姿を変えていく。いつの間にか普通の男の人になった。


「では、僕はここで待っていますので、皆様はクエストのほど、お気をつけて。」


 彼と別れて、私達は道を歩んでいく。



 先頭を切るのはダイセナ。続いてピューリ。後列には私達三人に加えてアナココとベルルがいる。


「はぁ、めんどくさい。帰りたい……。」


 アナココからとてつもなく負のオーラが溢れ出ていく。


「初めてのクエスト、楽しみだよね。大丈夫。お姉さんがいっぱい教えてあげるからね。」


 逆にベルルからは陽のオーラが溢れ出している。


「遅い。遊びじゃないんだぞ。」


 ダイセナはイライラしていて、そのトゲトゲしたオーラを放っている。

 それらに挟まれたピューリは頭を抱えていた。


 

 そこにゴブリンの群れが現れた。

 さらに巨大なオークも現れる。


 魔族の敵襲だ!



「討伐対象じゃないが、それでこそちょうどいいかもな。よしっ、見習い共、お前らは手を出すなよ。その代わりに、耳の穴かっぽじってよぉく聞いとけ。ここからパーティーでの戦い方を説明するからよっ。」


 そんな事を言ってる(そば)からダイセナが【ダガー】を持って攻撃し始めた。


「まっ、ダイセナならそうするよな。アナココぉ、タンクよろしく。」


「はぁ。やりたくねぇよ。ほんとに……。はぁ。」



【アルマジロ!】



 彼はアルマジロに変身した。そして、前線へと向かっていく。

 ゴブリン達が近くにいる彼を攻撃し始めた。硬い甲羅(こうら)が攻撃を防いでいるように見える。


「戦闘では基本的に"前衛"、"中堅"、"後衛"に分かれる。"前衛"の役割として、アイツみたいに遊撃(ゆうげき)して敵に穴を空けたり、強敵を倒したりする役割や――」


 近くにくるゴブリンがダイセナの手によって簡単に葬られていく。そして、オークの攻撃にも対応していく。


「そこのアイツみたいに、攻撃を引き受け後ろの仲間を楽にするタンクの役割がある。」


【アイアン!】


 鉄のように硬い体でぶつかってゴブリンを邪魔するアナココ。ゴブリンを引き付けてくれるお陰でこちらへと来るゴブリンは全くいない。


「そろそろ、俺の出番だな。」


【ピストル!】×二。


 ピューリは二丁拳銃で近寄るゴブリンや隙を狙っているゴブリンを撃ち殺した。


「俺は"中堅"の役割を担っている。主に、指示を出して、仲間の考える負担を減らすこと。前衛が取りこぼした敵を倒したり、中距離から敵を倒したり、まぁ、パーティーの(かなめ)の位置から攻撃を加える人って感じだ。」


 そして、ベルルはそこから少し離れた所へと位置取り、背中の矢入れから矢を取り出して、弓に引っ掛けた。


「そろそろか。ベルル。あのオークにやっちまってくれ。」


「もっちろん!」



【ベノム!】



 矢の先が歪んだような禍々(まがまが)しい紫色になる。そして、放たれた矢がオークを貫いた。


「ソイツみてぇに、後衛は後方から戦いの有利になるように遠距離攻撃を放ったり、他には回復特化の奴もいたりする。」



 ザンッ!



 苦しむオークに石のついた斧で追い討ちをかけて倒した。残ったゴブリンの残党をダイセナとピューリであっという間に片付けていった。



「見習い共。パーティーの役割、覚えたか?」


「あっ、はい。」


「じゃっ、討伐対象のいる場所に向かおうか。」



 あっという間にその魔族らを倒した。

 そのまま先へと進んでいく。


「マジで最悪だよな。このパーティー。見た? 俺、戦いの最前線に立たされてみんなの盾になれって言ってくるんだぜ。それにさ、リーダーはいつもキレてる。」


 横から陰の気配が漂う。アナココが止まらない。


「みんなの好きな味はどんな味~。私は"()っぱい"のが好き~。」


「僕は"スパイシー"なものが好き~!」


 ベルルとマユダは逆に陽の気配を溢れ出させる。



 温度差で風を引きそう……。



「さっ、来たぜ。アイツが討伐対象の骸骨騎士だ。情報とは違って三体もいるが、そこまで苦労しないだろ。」


 骨のみでできた骸骨が武器を持っている。


「さっ、出番だぜ。アナココ!」


「やりたくねぇ。ああっ! もうっ!」



【アルマジロ!】



 アルマジロが回転しながら体当たりを加える。しかし、盾で防がれた。

 骸骨騎士はアルマジロに向かって剣を振り下ろすが、硬い甲羅に防がれる。


【打製石器】石斧。


 背後から振り下ろされる斧。ダイセナが一体を破壊した。

 二体の視線が彼女へと向かう。


余所見(よそみ)は危険だぜ!」


【ピストル!】×二。


 二つの銃弾が体勢を崩し、そこをすかさず弓が襲い二体目を倒す。


 最後の三体目はアルマジリの体当たりとダイセナの一振に挟まれ破壊された。



 見習いの私達は今は見てるだけしかない。けど、もし私達だけでやれと言われたら、こんなに連携して戦える気がしない。

 私は少し尊敬の思いが芽生えた。



「ようやく終わった……。」



「なんか嫌な音がしねぇか?」



 そこに現れる巨大な骨でできた恐竜みたいな魔族――竜牙兵(りゅうがへい)


 そして、何十体もの骸骨騎士。

 不気味なオーラを放っている。


 

「こっからが本番って訳かよ。」


「デカすぎない?」

「気をつけな。一歩間違えりゃ、死ぬぞ。」



 竜牙兵は強烈な雄叫びをあげた。嫌な予感を感じさせる波動が飛んできたような気がした。

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