53.四つのギルド
巨大な壁に囲まれた巨大な都。
その中は活気で溢れていた。
「ギルドに入るんなら、まずはここだよねっ!」
建物の札には『ギルド紹介所』と書かれていた。
中に入ると、古民家風の造りとなっていた。少しばかひ狭い。そして、どこか古本の匂いがする。
「ここは何なんっすか?」
「ここはギルド紹介所だよ。どんなギルドに入ればいいのか相談することができるんだ。」
そこに優しそうなおじいさんが「いらっしゃい」と言う。そして、マユダが先陣を切って話し、少しすると私達は彼の元で相談を受けることになった。
「こちらへどうぞ!」と言われ、地下への階段を進む。丸い木でできた階段をしっかりと踏んでいく。
少しだけ薄暗い部屋に、椅子が置かれてある。その椅子の上にはシルクハットが置かれていた。よく見るとその帽子に顔が着いているような気がする。
「この帽子を頭に被ると、この帽子が最もおすすめするギルドを教えてくれますよ。」
なるほど……。
って、ハリー・〇ッターじゃん! それほぼほぼ組み分け帽子だからね!
「ギルドは四つあります。それぞれギルドには特徴が存在します。説明しましょうか?」
私達は説明をお願いした。
彼は四つのアルミ製のピンバッジを持ってきた。どれも独特な形をしている。
ブーメランの形をしたピンバッジには紅色の背景に黒き龍が描かれている。
斧の形をしたピンバッジには黄色い背景にアルミ色の女神が描かれている。
塔の形をしたピンバッジには紺色の背景に黒色の仏像が描かれている。
勾玉の形をしたピンバッジには濃い緑色の背景に蛇が描かれている。
やっぱりさ、これハリー・ポッ……いいや、やめとこう。
「まずは力を求めしギルド――ヴァリアントギルドから説明します。昔から続く由緒あるギルドです。得意な分野は冒険と討伐。ギルド内にはランク制度が設けられていて、上に行く程に待遇が良くなります。求めるものは"強さ"。弱肉強食のシンプルなギルドです。」
なんだろう。あまり好きになれない感じがする。それに、突然襲ってきたダイセナという女が所属するギルドだ。余計に好きになれない。
「続いて、勇気を求めしギルド――カリッジギルド。得意な分野は人助けと安い値段の護衛。庶民向けの仕事が多いですね。求めるものは人を助けるための"勇気"。優しいを体現したギルドです。」
このギルド、好きかも知れない。みんなのために存在する穏やかなギルド。
「私、何となくだけど、このギルドがいいかも。」
「楽しそうっすもんね。」
第一候補はこれに決めた。残る二つ、一応しっかりと聞いておこう。
「その次は、知恵を求めしギルド――アルカナギルド。まだ発見されていない神秘や人類の発展に繋がる近未来的未知を探究するギルドになります。求めるものは"探求力"。研究がメインのギルドです。」
つまり、研究所的役割を担っているってことね。まぁ、私達には関係なさそうだ。
カナリンがギルドに選ばれるとしたら、絶対にこのアルカナギルドだと思う。だって、物知りだし、探求心ありそうだし。
「最後に、新設された悪のギルド――アンチギルド。こちらは国王非公認ですが、あまりに強大で存在を否定できない。魔族との共栄を謳い、現国家に牙を剥く危険なギルドです。その実力故に彼らが政権を取る可能性も否定はできない。求めるものは"野心"なのかもしれません。いずれにせよ、無視できない悪のギルドと私は言いましょう。」
ヘイムのいるギルド。カナリンとパルパルを奪った人達。私達の敵――。
絶対に入らない。おすすめすらされたくない。
アンチギルドは嫌だ。アンチギルドは嫌だ。濃い緑が背景で蛇が紋章のスリザリ……間違えた、アンチギルドなんて嫌だっ!
ひとまずまとめると――
〇ヴァリアントギルド『弱肉強食のギルド』
〇カリッジギルド『庶民派、優しいギルド』
〇アルカナギルド『研究中心のギルド』
〇アンチギルド『魔族サイドのギルド』
――――――。
「我は被った人の記憶を読み取って、どのギルドが最も合致するか判断するシルクハットでルス。さぁ、我を被るでルス。」
「じゃあ、俺から被るっすね!」
ハロミトがそれを被った。
「カリッジギルド!」と叫ばれる。
「じゃあ、カリッジギルドに決定かな。一応、私も被ってみよ。」
今度は私が被ってみた。
……。
ゴクリ。
「ア、ズ、カ、バ、ン!」
「んなわけあるかっ!!」
シルクハットを床に叩きつけた。
「嘘、嘘。あなたの記憶を読み取ってたら、それの情報を見つけて……、面白そうだから思わず、つい……。」
気を取り直して再び被る。
「ヴァリアントギルド! あなたにはヴァリアントの資質がおありです。というよりも奇跡的な存在です。ヴァリアントの英雄となれるでしょう。」
そんな嘘だぁ。
あんまり嬉しくないなー。
「じゃっ、僕も被ってみよー!」
今度はマユダが被った。
「アンチギルド! アンチギルドっ! アンチぃギぃルぅドぉぉ!!」顔色が変わるシルクハット。
うるさいぐらいに騒いでいる。なんでこのシルクハットはこんなに急に豹変したの?
「うるさっ!」と言って、マユダは床に落として足で踏みつけた。そしたら、シルクハットは静かになった。
「まぁ、ひとまずカリッジギルドにしよっか。」
「そうっすね。」
そこにマユダが、
「そーいやーさー、どうして二人はギルドに入りたいって思ったの?」と聞いてきた。
「アンチギルドに大切な仲間を奪われちゃって……。取り戻す方法が、三大ギルド対抗覇戦しかないみたいで。」
そこに店員さんが割り込む。
「つまり、次の三大ギルド対抗覇戦に出たいと?」
私達は頷いた。
「なら、カリッジギルドはやめた方がよろしいかと。」
「どうしてです?」
「カリッジギルドで、その覇戦に出たければ、少なくとも二年以上は所属しないと出ることすら難しいかと。どれほど実力があろうとも、入ってきたばかりの新参者を大切な大会に参加させることはないでしょうから。」
「あ……そっか。」
ただ、ギルドに入ればいい訳じゃないんだ。その三大ギルド対抗覇戦に出なければいけない。その大会に出るという目的がある。
カリッジギルドはとても心地よさそうだけど、その目的のためには諦めるしかなさそうだ。
「もし出たければ、戦闘に自信があるならばヴァリアントギルド。頭脳面や探求心に自信があるならアルカナギルドを選ぶといいですよ。」
頭脳面や探求心の面に自信はない。
つまり、残されたギルドは「ヴァリアントギルド……か。」
「そこなら、実力次第で大会の出場権を手に入れられるかもしれません。」
私達に残った選択肢は一つしかなくなった。よりにもよって、あまり好かないギルドだ。
はぁ……。ため息が出る。
「じゃあ、行こっか。そのヴァリアントギルドへ。」
私達は階段を上った。
◆
大通りから少し入り組んだ道に行くと、大きく造られた建物を見つけられる。そこには『ヴァリアントギルド』と書かれてある。
「準備はいい?」
「俺はもちろん大丈夫っすよ。緊張してるの、お嬢様だけじゃないんすか?」
「……バレた?」
緊張してるのは私だけみたいだ。
ゆっくりと深呼吸して、扉を開く。
まるで酒場みたいな場所だ。幾つもの席で酒を飲んでバカ騒ぎする人達。活気良さすぎる。
周りを見渡しながら、歩いていく。
トンッ。咄嗟に「ごめんなさい」と言う。
顔を見上げた。
そこには背が高く腹筋が割れた男が立っていた。厳つい姿。堂々とした存在感を示すピアス。イカつい髪色髪型。まさに強面の男だった。
やべぇ人と、ぶつかってしまった。――やべぇ。
「あ? 誰だアンタら……。って、アンタ達か。んで、何しにきたんだァ?」
空気が変わった。




