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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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69.頑張れ、アナココ君!

【アルマジロ!】


 リュウジャスがプルリューに運ばれた後の、アナココの仁義なき、いや陣地なき戦い――。


◆◆


 サイド――アナココ。

 対――カリッジギルド(アテナ、ヌユ、ムトー、ズーモス)、アルカナギルド(ウメノ、ケルビム)


◆◆



「いや、無理でしょ!」



 いくら地雷が敷かれていて幾つかの攻撃を防げるっていったって限りがあるし、遠距離攻撃は防げない。

 数人相手ならまだしも、六人相手は無理だって!


「久しぶりやね。アナココ君。」


「アテナさん。お久しぶりです……。」


「なんでヴァリアントに移籍したの?」


「金払いがいいからですかね……。」ごもりがちの声で伝えた。



「そう。うちじゃ物足りなかったってことやね。しゃあなし、うちの魅力、もう一度見せたるね。」


 ごもりがちで喋ったから、話が噛み合ってない。


 ズーモスが先頭を突っ切った。



 カチッ。爆発した。

 ズーモスは後ろへと吹き飛んだ。


 まぁ、防御力アップのルールもあるし、簡単に死なないよね……。ゴリ押しされたら、俺、まずいんじゃねっ。



「なるほど。地雷があるんやねぇ。安心してや。こんなん朝飯前や。」アテナが手を前に出した。



【上がれ!】



 地雷が砂地から上へと上ってきた。全ての地雷が目に見えるようになってしまった。


【集まれ!】


 地雷がアテナの元へと集まっていく。


【与える!】――「あげるで。これ。」


 集まっていく地雷が、突然俺の方へと飛んできた。


「やっべぇ。」


 


 ドゥッガァァァァン!




 丸まったことと、ルールの防御力アップのお陰で助かった。けど、あまりのダメージに能力が切れてしまった。


 この拠点、守らなくていいから、逃げて助かろう。



 とりあえず、逃げる!



(うご)くな!】



 アルカナギルドのウメノの技。俺の体は動かない。


【ズワイガニ!】


 今度はカリッジギルドのズーモスの変身技。


「うわっ、ばかでっかい(かに)だぁ。」


 人間ぐらいの大きさのある化けズワイガニに変身した。その腕の(はさみ)はとても鋭い。


【ムキムキ!】


 続いて、ムトーは上半身を脱いで、能力を発動し、筋肉を拡張させた。


「うわぁ、ムキムキだー。」


 前から占い師、後ろからはズワイガニと筋肉、が襲ってきた。そして、例えその場をやり過ごしても三人まだ後ろで臨戦態勢を取っている。

 まー、今、俺、技食らっていて動けないけど。



 無理ゲーじゃん。これ。


 なんでこんなリンチしてくんの。

 知ってる? これ膨大な数の観客に観られてんのよ。多分、都市の人全員見てる。これ終わったら、俺笑われものになるじゃん!



「……あー、終わった。」



(うし)ろに飛べ!】



 グハッ!


 勢いよく背後に向かって吹き飛ばされる。そして、ムキムキの筋肉に突撃した。


 流石は筋肉のムトー。多少は後ろに飛ばされるも、しっかりと踏みとどまった。


「筋肉パンチは、いかがかな。」


 普通に殴りかかってきた。

 とりあえず、動けない状態は終わっていて、何とかぎりぎり避けられた。


 チャキッ。


 しゃがんだら避けることができた蟹の鋏攻撃。危なかった。


【ヌンチャク!】


 頬に当たる長い鎖で繋がったヌンチャクの先。カリッジギルドのヌユの攻撃だ。……とても痛い。



 前門のアルカナギルド。後門のカリッジギルド。ほんと虎も狼も驚きの板挟みだ。


「まじでイジメじゃね?」


「とりま、終わるまで眠っといてや。」


 アテナの声が聞こえた。嫌な予感がする。



(あな)に落ちろ!】



「ほへ?」


 足元が空洞になった。


 ということは、俺は落ちることしかできない。



 落ちたら落ちたで砂が被さっていく。

 光はない。一面砂の世界。



 このまま――寝よっかな。



 ああ、現の夢の中でダイセナが語りかけてくる。ピューリもいる。……ベルルもいた。


 情けないな……。


 いや、いいんだ。情けなくても。



 けど、こんな大事な場で俺を選んでくれたダイセナに申し訳ないし、こんな俺のせいで出場できなかったヴァリアントギルドの仲間に申し訳ない。



 ごめん――。



 いや、謝るぐらいなら、やることやらなきゃ……か。ダイセナなら厳しくそういうよな。


 はぁ――



 やるか。



【アリジゴク!】



 その場にできる砂地獄。


 俺は今アリジゴクとなって、砂地獄を作り出した。"後衛"にいるケルビムは巻き込めなかったけどら他は巻き込めた。


 あっ、ズーモスは砂の上を横歩きで俺の砂地獄な抗って進んでいる。もう砂地獄を抜けそうだ。



【ヌンチャク!】



 ヌユがズーモスの右腕に対してヌンチャクをぐるぐる巻きにした。鎖が収縮して、蟹の方へと引き寄せられていく。


 カリッジギルドはヌンチャクで他二人も救出されるんだろうなぁ。


「ケルビム! 助けなさいよ!」


 ケルビムが宙を浮いた。

 本当に……人間?


 浮きながらウメノを助けるつもりだろう。



 結局、このまま砂の中に引き寄せても意味はなさそうだ。一旦、止めて地面に(もぐ)ろう。



 このまま両チーム無事に戻ったら、再び俺は狙われる。そしたら、完全にツミだ。



 もう攻めるしか道はない。

 全員倒すなんて不可能。じゃあ、誰を狙えばいいか。

 そう――



 ウメノに突進!



「なっ、何なの?」



 砂の中から勢いよく加速して突撃した。反動でウメノは反対側へと飛ばされた。


 アリジゴクの変身を解いた。……疲れた。もう変身できる気力がない。もう後は逃げるしかできない。


 飛ばされたウメノはカリッジギルドの四人に挟まれた位置へと落ちた。



「一気に決めましょう!」


 彼女にヌンチャクがまとわりつき。

 そこにズワイガニの鋏と重たい斧が襲う。



 ウメノは消えた――そう、離脱した。



「……。」



 ケルビムの動きが止まる。

 何故、止まったかよく分からないけど、逃げるなら今のうちだ。



 トンッ。人にぶつかった。

 アルカナギルドのジェノムだった。


 ここにきて追加の敵。最悪だ――。


「せっかくなので、ここで実験を見ていきませんか?」


 怪しい男は何も仕掛けずにただニタリと笑っていた。



「みなさんは魔族四天王はご存知でしょうか?」



 突然話しかける彼に、俺らは耳を傾ける。


「私はね、魔族四天王の五体の複製を遂行したのですよ。」



 魔族四天王の()体――。

 ん? 四天王なのに五体?


「五っ!?」一体多くない!?



「みなさんは魔族四天王――()のケルビムをご存知でしょうか?」


「いやぁ、知らないなぁ……。」


 とりあえず、適当に話しながら、逃げる隙を見つけて、とっととずらかろう。


 ぎょっ!


 ケルビムがフードを外した。そこから見えたのは三つの顔を持ったロボットだった。さらに着ている布を外すと、そこからは沢山の翼が飛び出てきた。翼には大量の眼がついていて気持ち悪い。



「人類史的に、魔族四天王の名が知れ渡ったのは、世界を滅ぼしかけた"近藤(こんどう)さん"が現れてからと言われています。」


 近藤さんは知っている。というか超有名な人だ。

 この世界を滅ぼしかけた人物で、人類と魔族が呉越同舟し、最後は人類代表のバムと魔族の長の魔王が協力してトドメをさし、何とか倒せたっていうこの世界では常識の歴史がある。


「歴史の上では、ケルビムは近藤さんが魔族四天王になる際に、下剋上の一環として殺された一体なのです。近藤さんというあまりにイレギュラーな存在に殺害されたせいで、弱く聞こえますが、その実態は超強力な魔族だったのです。」


 

【ケルベロス――!】



 あまりにも巨大で強大な存在がそこにいる。まるで山でも見ているかのような大きさ。忌々しい黒いボディと凄む三つの顔。圧倒的な威圧感。


 ただそれがそこにいるだけで、もう――体が動けない。

 

「今日はその一体のお披露目(ひろめ)の日と共に、性能と有効性を試す実験の場――。面白い結果を楽しみにしてますよ。」



 犬の一つが氷の波動を砂に向けて放った。地面が凍っていき、窪んた土地が凍っていく。


 もう一匹が炎を吐いた。


 そこは氷と炎が混ざる空間となった。



 ケルベロスが狙うのはカリッジギルド。

 その間に俺は……


「あなたはここで寝ていて下さい。」



【磁力――】



 押し潰される……。もう動けない。



 ケルベロスは雄叫(おたけ)びを上げた――。

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