50.歯車が回り出す
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あたしは占い師。
面白い未来を見たの。だから、教えてあげるわ。
もし例の秘宝を手にしたいのなら、この世界に迷い込んだ少女――"ジュリネ"を利用しなさい。
……。
ふふ。
ジュリネに待ち受ける絶望――
仲間が死に。仲間が裏切り。そして、最強の敵が、この世界を――壊す。
想像するだけでゾクゾクするわ。
きっと、貴方なら辿り着ける。魔王を復活させて、この世を混沌に導く……その理想に。
ねぇ、"ヘイム"。貴方の望む世界がどのようなものなのか、あたしにも見せてちょうだい。
◆◆
『詩忍にくちなし』~VRMMOのバグ世界でお嬢様生活を嗜む私が、魔王復活を企むアンチギルドと戦う~
――その時は、まだ他人事だった。
◆◆
コンコンコン。
ドアをノックする音。
「お嬢様。温かい飲み物をご用意したっす。」
私が「どうぞ」と伝えると、新米執事のハロミトが私の部屋に入ってきた。
お盆に乗せられた飲み物が丁寧に運ばれていく。
「あっ!」
「ん?」
バシャァッ!!
「熱っつ! ちょっ。何してんの!?」
ハロミトは何も無い床で盛大に躓いて、そのまま熱いレモンティーを私にぶっかけやがった。
「ジュリネお嬢様っ! 申し訳ないっす。マジで! すぐ拭くもの用意するっす。」
【ハンカチ!】
何も無いところから小さなハンカチが現れた。これで拭けってことだろう。しかし、小さなハンカチすぎて役に立たない。
「いや、小さすぎない? 小さすぎて、涙しか拭けないからね。これ。」
ハロミトだけじゃこの状況は対処できない。なら仕方ない……助っ人を呼ぶ他ない。
「ハロミト……。カナリン呼んできて。」
「了解っす!」
侍女のカナリンが飛んでやって来た。妖精の彼女はふんわりと飛ぶことができる。
「実は、俺がお嬢様に飲――」
「言わなくても見れば分かるし、なぜ呼ばれたかもすぐに分かるわよ。」
カナリンは私に触れた。
そして、
【乾燥】
その技で濡れた体は、服は一瞬にして乾いた。これで湿って嫌な感覚にならない。
「ここに来たついでに、掃除でもしとくわ。」
【家事――!】
あっという間に綺麗になる部屋。瞬く間に布団は洗い終わったシーツをホテルマンが整えたみたいになり、窓はピカピカになり、床の塵とか髪の毛とかが消え、水拭きをかけた後のように綺麗な状態になった。
ほんとにカナリンの技"家事"はずるいわ。
だって、技を放つだけで一瞬にして家事全て(掃除、洗濯、料理、その他全般)が終わるのだから。マジでズルすぎる……。
「俺も"家事"使いたいっす。技の練習したら使えるようになったりしないっすかね。」
「はぁ……。無理に決まってるじゃない。あなたの文字は『は』なんだから……。」
「あ……。そうっすね。」
「家事は『か』じゃないと使えないじゃない。この世界の常識よ。」
「まぁ、そうっすね……。」
この世界は各人《文字》を持っていて、その文字から始まる言葉を召喚したり、発動したり、変身したりできる。
ハロミトは液体が中からなくなったコップを持った。
「俺なんか、この簡単に割れるコップを割るぐらいしかできないっすもん。」
嫌な予感がする……。
「試さなくてもいいからね」なんて保険をかけておく……。
【破壊!】
コップは何もしていないのに、持っているだけだひび割れて壊れた。ハロミトの技"破壊"による影響だ。
「コップを壊すな! あんた何してるの!? 後片付けは誰がやるの思ってるの!?」
カナリンのドロップキック。ハロミトに鉄拳制裁。まぁ、当然と言えば当然だ。
【家事!】
割れたコップが消えた。これまたカナリンの技でゴミ箱に瞬間移動したのだろう。
「割れたコップの分はハロミトのお金から補充しとくから。ついでに軽く手数料も取っておくわ。」
「そ、そんな……。」
「……いいわよね?」
「……はい。」
大きな屋敷でのお嬢様生活――。
新米執事のハロミトと万能侍女のカナリン、それとペット一匹の四人暮らし。
「ハロミトは執事になって二ヶ月になるんだから、もうそろそろ仕事を覚えてよね。私からはそれだけ。」
ほんの軽くだけ忠告を添えて、優しく見逃してあげる。まぁ、カナリンに怒られてるし、二人して怒るのは良くないと思うからね。
バキッ。
「えへへ。ドア壊しちゃったっす。」
「ドア壊す執事がどこにいるかいっ!?」
「あはは……。」
「笑って誤魔化すな!」
思わず強めのツッコミドロップキックをお見舞いしてしまった。ごめんね、ハロミト。さすがにこれは体が動いちゃった。
◆
「カナリンの買い物でよくないっすか?」
「駄目に決まってるじゃん。買うなら直接見て買わないと。……ってか、よくそんな口きけるね。壊したのアンタじゃん。」
「うっ……。」
桜が吹雪いている。辺り一面桜の花びらでピンク色となった地面。そして、建物の屋根。桃色の景色が町を包んでいる。
私達は誰かさんに壊されたドアを新調するために、この世界で最も中心となる都市に行くことに決めた。
この町からは草原を抜ければ辿り着く。道中、人間を襲う魔族もそこまで強くない。
桃色の町を出れば、そこは若草色――つまり黄緑色の景色に変わる。
春風を浴びながら、緩やかに靡いていく草原を踏みしめて進む。
平らに広がる殺風景で風情ある景色。
少し離れた所に七人の男女を見つけた。奇遇にも向かっている方向は同じだ。
あれ……? 六人だったっけ?
「動くな。少し質問する。」
私とハロミトの間にいつの間にかいる集団の中の七人目となる男。その男は片手それぞれ刀を持って私達の首元付近にそれを置いている。
少しでも動けば首を斬られる。
「何者だ?」
「俺らはただ、古の都に行こうとしてるだけの一般人っす。」
「護衛も付けずに……か?」
空気が止まった。少しでも質問の答えを間違えれば斬られる……。
「どういうことっすか? 護衛なんかいらないっすよ。だって、俺らそこそこ強いっすから。」
こんな状況でも物怖じしないで答えられるハロミトが末恐ろしいわ。
「まぁ、いい。質問を変える。単刀直入に聞こう。お前らは、"アンチギルド"か?」
「アンチ……ギルド? 何すか、それ?」
「魔族第一主義の反国家ギルドだ。本当に知らないのか?」
「知らないっすよ。」
……。元々、この創られたはずの世界の住人じゃない私でもアンチギルドのことは知っているというのに、ハロミトは全く知らないとは……。無知にも程がある。
ってか、こいつ執事だよね……。無知にも程があるんじゃない。
「そうか。本当に知らなそうだな。悪かったな。お詫びに我々がついでに護衛してやろう。着いてこい。」
刀が戻された。
彼は反省したようにお辞儀をした。そして、先程見た屯う集団の元へと向かっていった。それに私達も着いていく。
「最近だと、アンチギルドの悪い噂がよく流れてくる。この辺りだと、まさかり担いだ魔法使いだとか、最強の一角――暗殺者ヘイムだとかの名前が上がる。幸運だったな。我々が入れば、もう一安心だ。なぜなら我々は強いからな。必ず守りきる。」
七人の集団に合流する私達二人。
その内の一人はどこか偉そうな髭とお腹を蓄えた男だった。
「依頼主でもないのに護衛するとはイカれてる。これでもしワシに少しでも何があったら許されないぞ。なぜならワシは国の重役だからな。」
すっごく偉そうだ。嫌悪感を抱いてしまいそう。
「安心してください。パーティの定石四人一組に加えて、見習いの二人もついています。いくら見習いとは言えども、人数が多いに越したことはないですから、護衛対象が増えても心配ないんです。」
リーダーっぽい人が笑顔を浮かべてペコペコ頭を下げていた。護衛だけに留まらずご機嫌伺いもしなきゃならないなんて大変そう。少し同情してしまいそう。
一人の黒髪の長い若い少女が「安心してください」と微笑む。それにつられて「精一杯頑張りますから」と隣の子も言う。
そんな二人に「二人は、今日は見習いとして見てるだけでいいんだよ。大丈夫。僕達に任せておいて」とリーダーっぽい人が優しく言い放った。
「言ってる側から来おったぞ。早く蹴散らせぃ!」偉そうな言葉がだだっ広い草原にこだまする。
ゴブリンの群れだ。
数十体はいるだろう。
「ここは我々にお任せ下さい。」
リーダーっぽい人がそう言うと、集団よりも前に出て「サポートは任せたよ」と呟く。
【ライオン!】変身技。
そのリーダーっぽい人はライオンに変身した。百獣の王が雄叫びをあげる。春風に茶色い鬣が揺れる。
ガブッ。
ゴブリンは一食いで葬られていく。
ガブリ。ガブリ。ガブリ!
圧倒的な強さだ。みるみるうちにゴブリンは光となって消滅していく。このままならすぐに終わりそうだ。
ドシドシドシ……。
重い足音がする。
そこに現れるまるで一戸建ての建物と同じぐらいの大きさを持った魔族が現れた。ゴブリンに似た緑色の肌。しかし、あまりにも人間離れした肉体。
その魔族は――オークだ!
オークに向かって走り出すライオン。一方でオークは持っていた巨大な棍棒を振り下ろしていく。
ドシッ!
ライオンが潰された。しかし、まだ立て……
ドシッ!
「こんなもんでやられてたまる……か。」
再び振られる棍棒。ライオンは立とうとするが、立てずにいる。
ドシッ!
ライオンの姿が人間の姿に戻った。
「くそっ。こんな所で死ぬわけには行かないんだっ!」その人はもう動けそうにない。
再び棍棒が高く上へと上げられる。
「やめろっ!」
仲間達が目一杯走ってやってくるも、横入りしたゴブリンに邪魔をされてしまう。
ドシン!!
潰されたリーダーっぽい人は光の粉となって春の風に吹き飛ばされてしまった。この世界での死は生々しい赤い血ではなく、華々しい光の粉となって散るのだ。
さっきまであった人の温もりは一瞬にして消えてしまった。あの人はこれから先、もう――いない。
「くそっ。仲間の仇っ!」
目に涙を浮かべる彼らの仲間達。
それを見て、私も戦う気持ちになり、あのオークと周りのゴブリンを倒すことにした。
だって、何もしないで人が死んでいくなんて、死んでも死にきれないから。
「待って。ここは私達にやらせて。」
私達は数歩、前に出た。
ゴブリン達が近づいてきた。
「危ない! 下がってるんだ!」
先程刀を首元に据えた男の声が響く。
「大丈夫っすよ。――そこそこには強いっすから。」
【自分自身――!】変身技。
私は"自分自身"に変身した。姿形、何一つ変わらない。唯一変わったのは、多くの技が使えるようになったこと。この変身状態中の間にケリをつける。
ハロミトがゴブリンに殴りにいった。
殴って、振り回される棍棒を何とか引き離そうと掴み合いになり、子どもの喧嘩みたいにじゃれ合っていく。
その間に、私も攻撃を――
【重火器――!】召喚技。
大砲のように大きな塊。けれども、バズーカみたいに引き金がある。高威力の銃。それが私の目の前に現れる。
銃口をオークへと向けて……ドカン、だ。
ドォォォン!
オークに砲弾が直撃した。爆煙が上がっている。
春風に煙が撒かれた。そこから見えるのはまるで無傷のオーク。
「ぐへぇ!」
ゴブリンに軽く飛ばされたハロミトが勢いそのままこちらに来た。ゴブリンに殴り合いで負けたみたいだ。
「お前ら! まったくダメダメじゃないかっ!」
背後から聞こえる言葉。ぐうの音も出ない……。
私の攻撃は火力不足で全く通じないし、ハロミトはゴブリンに殴り合いで負けてボロボロ。このまま戦っても勝ち目はない。傍から見ても負けそうでヤバイ状況。
戦い方を普通に間違えたかも。完全に私達のミスだ。
オークは何やら怒りに満ちたオーラを放っていく。
【大きくなれ!】オークの技。
私達は日陰の中に閉じ込められたみたいだ。
持っていた棍棒が段々巨大になっていった。その大きさはもはや四階建てのビルと同じぐらいだ。こんな塊に押し潰されれば一溜りもない。
逃げようとするギルドの人達を囲むゴブリン。そのせいで逃げられないでいる。
まぁ、普通に考えれば、あんなに大きな棍棒を振り下ろされれば、逃げきることなんてできるわけないんだけど。
「終わった……。」
そんな言葉が呟かれていた。まぁ、この負けそうな状況で、さらなるパワーアップをされれば、誰でもそう言うわ。
だが、そんな言葉を言い放つにはまだ早い。
私もハロミトも戦う相手を完全に間違えてただけ。ただ、それだけ。
「ハロミト。オークの方、お願いね。私はゴブリンの方をやるわ。」
「承知っすよ!」ハロミトは背中から黄金に輝く剣を抜いた。
【重力――。】
私が重火器を持つ時にかかる重さを限りなくゼロにした。これで持ち上げられるし、振り回せる。
ゴブリンにならこの攻撃、火力は十分!
振るう。
薙ぐ!
「あの女、あんな重い武器を振り回し始めたぞ。おかしすぎるだろっ!」背後からのツッコミは気にしないとこう。
ゴブリン共を重火器を振り回して吹き飛ばしていく。
砲撃だけでも強いけど、打撃武器として使用したって強いんだ。どんどんどんどん薙ぎ払う!
ビルみたいな棍棒が振り下ろされた。
そこにハロミトの剣がぶつかった。強い相手ほど強くなる――それがハロミトの力だ。
バキっ。バキバキバキ。
棍棒がひび割れていく――。
【破壊!】
棍棒が崩壊した。日陰だった所に陽向が次々も射し込んでくる。
「お次は本体っすね。」
ザンッ!
一閃――。オークを斬り裂く一斬り。
ハロミトに斬られたオークは光の粉となって消えた。そして、私の戦っていたゴブリン達も倒しきれた。
あの強そうなライオンでさえ手のつけられなかったオークをものの一瞬で倒しきった。そして、オークを倒したハロミトが苦戦を強いられたゴブリンはほんの数分で倒しきった。
再び静けさが残る風が吹くのを感じ始めた。
「一件落着っす。」
――――――。
「その剣――。あなた様が勇者ハロミト様でおられたのですね。おみそれしました。ちなみに横におられるのは……。」
ギルドの彼らが、よそよそしい態度に変わった。
「気にしなくていいっすよ。横にいるのはお嬢様っす。ワケあって、俺、執事をやってるんす。」
その言葉は、少し暗いトーンだった。
彼らは今お通夜の雰囲気。人が一人死んだのだ。その雰囲気に引っ張られているのがとてもよく分かる。
「だから、魔族は危険なのだ。大切な人を失った今なら、よく分かるだろう? 魔族は殲滅すべきなのだ。だのに、魔族第一主義を抱える"アンチギルド"なぞが存在している。許されたものではない。早く我を都に戻して、アンチギルド殲滅に動かねばならんのだ。悲しんで足を止めてる場合じゃない!」
その言葉に無理やりでも足を動かすギルドの人達。やはり暗い雰囲気は拭えていない。
「やっぱり何があったとしても魔族と手を取り合うことなんてできないんですか? アンチギルドを排除するしかないんですか?」
突然、ギルドの見習いの人が一人、前に出た。黒くて長い髪が揺れていく。
「馬鹿も程々にしろ。手を取り合うなど、ありえるわけがない。魔族もアンチギルドも消えて然るべきっ!」
「やはり対話なんて不可能ですよね。こうなったら後は力で示すしか……ないよね。」
【変形――。】
取り出された刃が畳まれた刀。その刃が変形して刀の形になっていく。
シュッ――。
瞬く間に、護衛するべき男の首は斬られて、光の粉となり消えた。
「お前っ! なんてことをするんだっ!」
怒号が飛ぶ。しかし、そんなものお構い無しという態度だ。
「仕方ないじゃないですか。やらなきゃボク達に身の危険が及ぶので。」
刀はうねうねと捻れ続けている。
鉄の部分はぐにゃっと曲がって、もう一人の見習いの首を穿った。また一つ命が消えた。
「君達はね、本当はオークに惨殺される予定だったんだよ。けど、予定が狂ってしまった。仕方ないから、ボクが代わりに予定を修正してあげよう。」
その女の化けの皮が剥がれていく。いつの間にか、その女は髪の長い男に変わっていた。
そして、その男の名は――
「お前は……ヘイムっ!」
なぜかそこにいるアンチギルドのトップ――ヘイム。
常に波打つ蛇行剣が人の体を斬り裂いていく。
そこにいたギルドの人達はもう全員、彼に殺されてしまった。
えっ? いつの間に……そこにいた?
気づいた頃には私とハロミトの間にヘイムが……いる。その手が私達の肩に手が触れている。
【ヘヴィー!】過重力!
体に強い重力がかかって動けない。草原にへばりつくしかできない。
「初めまして。勇者ハロミト君。実は君にお誘いをしようと思っていてね。どうかな。ボクのアンチギルドに入る気はないかい? 今なら幹部の枠が空いてるよ。」
「ふざけんなっす。こんなもん見せられて、入ろうだなんて思う訳ないじゃないっすか。」
「命乞いをしてもいい状況なのに、ボクに啖呵を切る。状況も掴めない馬鹿なのか……はたまた、勇者として勇ましい心を持っているからなのか。」
体を動かしたくても何にもできない。彼が私達に触れている限り、私達は見えない力に潰されていく。
「まぁ、いいや。君達は仲間思いなんだろう? そんな心優しい君達は――ギルドに入るしかないからね。ボクは君達がギルドに入ってくれれば何でもいいのさ。」
何の話だ? 「ギル……ド?」
「そうさ。本当はアンチギルドに入って欲しいけど……、どのギルドに入るのかは君達の自由。もちろん入らなくてもいいけど、その時は仲間を見捨てる時になるけどね。」
「言って……る、意味……が、分かん、ない。」
重力のせいで、思うように声を出せない。
「すぐに分かるよ。例えば……大切な家に戻った時とかに……。そこから先は見てのお楽しみにしようか。」
ふっ――。
重力が切れた。
彼はどこかへと去って行こうとする。
追いかけようにも立ち上がるので精一杯だ。
ようやく立ち上がれた。
私達二人だけ取り残された草原。虚しい風が吹いている。
「ねぇ、ハロミト。急いで、屋敷に戻ろう。」
――――――。
――――――。
すぐに私達は屋敷のある町へと戻った。
目を疑った。
美しい桃色の景観の中で一つだけ違和感を放つ濃い赤の色と黒い色。炎が揺らめき、黒煙が上がる。
私達の屋敷は燃え盛っていた――。
炎が揺れる。
黒煙が空を覆う。
……違う。
「カナリン……?」
胸の奥が、嫌な音を立てた。




