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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
最初の話

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4/9

4、 夏祭り

夏祭りとお笑いライブ。

何でもないはずの約束が、

ちょっと特別に変わっていく夜のお話。

4時5分前、5分前行動完了。

朱海班長どこかなぁ。


「ごめん、待った?」


いえいえ、まだ5分前ですから!


「いえ、私も今来たところで!」

「そう、じゃ、行こうか」


鳥居の奥、特設ステージではそろそろお笑いライブが始まるところだった。


「こういうの生で見るの初めてでさ、楽しみなんだよね」

「私もです!一度見てみたいと思ってました!」


どこで見ようかウロウロしていると


「あらぁ、朱海くんに、たかこじゃないのぉ♡」


この声は…ママ!


「こんばんは、ライブ、見に来ました。教えてくれてありがとうございます。」

「あらぁ、良かったわぁ、楽しんでね。」

「はい!」


「あのね、向こうで自治会のチケットを配っているから、もらって行きなさいね。

屋台で使えるから。夕飯作ってないからね。ママもお手伝いしなきゃならないから。

あ~、朱海くん、昔はよく迎えに来てくれたわよね。あの時はありがとうね。

帰り、暗くなったら送ってくれると安心だわ。本当にありがとうね、これからもよろしくね!

じゃぁまたね!」


台風のように過ぎていった後姿をみながら、しばらく瞬きができなかったし。


ママうざ!それ、私のセリフでしょーがっっ!!

しかもライブの話って?

初耳なんですけどおぉ!

なんなのよ!もう!


「そういえば、たかこちゃんも電車で言ってなかった?」


そう!そうなの!

それがメインだったの!


「はい!あの、初詣の時どうもありがとうございました。

それから、小学生の時に一緒に学校に行ってくださって、

とっても心強かったです。ありがとうございました!」


「あぁ、あの時ね。そんなお礼を言われるほどでもないよ。

内心泣かれたらどうしようかと思って、心配だったんだけどね。

素直についてきてくれたから助かったよ。」


言うことを伝えたら、次に言う言葉が無くなってしまって、

二人でにっこり笑って固まっていると、お笑いライブが始まった。


小さな神社のライブだけど、なかなかの人だかりで、

必然的に班長の横にぴったりとくっつく感じになってしまった。


朱海班長背が高いなあ。

顔一つ分くらい違う。


私の前の人の頭でよく見えなくて、軽く背伸びをしていたら、


「こっちおいで、前が小さい子だからよく見えるよ」


つつ―っと朱海班長の前に移動させてくれた。

確かによく見える。


会場が大爆笑になり、私もつられて声を上げて笑った。

そのまま、何気なく班長を見上げたらーーー目があってしまった。


近い…。

思っていたより、ずっと。


移動させてくれた時に肩を押してくれた手が、まだそこにあった。

離れる気配もなくて、力を入れるわけでもなくて、

ただ「ここにいるよ」と言ってるみたいで。


笑い声や太鼓の音、屋台の呼び込み、

全部聞こえているはずなのに、急に遠くなった。


朱海班長の指先が、ほんの少し動いた。


それだけで胸がどきっとして、

私はもう一度ステージに視線を戻すふりをしたけど…

心臓の音は、全然言うことを聞いてくれなかった。



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