第5章 4回目のやり直し
【処刑7日前】
──目を開けると、再び朝の王宮の廊下。
もう何度目だろう。吐き気すら覚える既視感。
だが、今回は違う。私はすでに「協力者」の糸口をつかんでいた。
「おい、こっちだ」
低い声に振り向くと、そこには近衛隊長レオン・ヴァルト。
まるで私がここに現れるのを分かっていたかのように、彼は待ち構えていた。
「……どうして」
「お前がまたここに現れる気がした」
鋭い眼光。冗談を言っている様子はない。
この人はすでに、私が“普通ではない”ことを察している。
「言ったはずだ。協力する気があるなら証拠を持ってこい」
「……はい」
レオンは私を伴い、王宮の裏手にある資料庫へ向かった。
王妃に関する記録が保管されている場所だ。
埃の積もった帳簿をめくる彼の横顔は真剣そのもの。
ふと見上げると、鋭い眼差しの奥に、弱々しい光が一瞬揺れた。
(……この人もまた、何かを抱えている)
そのときだった。
足音。
扉が開き、カレン侍女長が現れた。
「まあ、こんなところに……。近衛隊長と、ミレイ?」
その笑みは穏やかだが、瞳が笑っていない。
胸がざわつく。
「侍女が資料庫で何をしているのかしら。規則違反ではなくて?」
私は言葉に詰まった。
レオンが一歩前に出る。
「俺が同行している。問題はない」
「……そうですか」
カレンはしばらく私を見つめ、それから去っていった。
残された空気は重苦しい。
「……あの侍女長、怪しいな」
レオンの低い声が、私の心臓を貫く。
(やっぱり……!)
前回感じた違和感は間違っていなかった。
だが、確信に至る証拠はまだない。
「いいか。次は俺の指示に従え。お前の命を保証してやる」
その言葉に、胸が熱くなる。
けれど同時に、不安も広がった。
──もしこの人すら裏切ったら、私はどうすればいいのだろう。
第5章をお読みいただきありがとうございます。
今回、ミレイはついに近衛隊長レオンと共に行動を始めました。
まだ完全な信頼には至っていませんが、彼の存在は間違いなく大きな支えとなりつつあります。
そして現れたカレン侍女長──彼女の笑みの裏に潜むものは何か。
王妃を巡る陰謀の影が、少しずつ浮かび上がってきました。
物語はここから「味方か敵か」を見極める緊迫の展開に突入していきます。
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