第4章 3回目のやり直し
【処刑7日前】
再び、朝の光に染まる王宮の廊下。
洗濯籠を抱える手に力がこもる。
(……これで三度目。けれど、もう迷わない)
私はすぐに王妃の部屋には向かわず、庭園へ足を運んだ。
そこにはやはり、エリオット王子と近衛隊長レオンの姿がある。
前回と同じやり取り──だが、今回は一歩踏み込んで彼らに近付いた。
王子が立ち去ると同時に、レオンの鋭い視線が私を射抜いた。
「またお前か」
「……はい」
逃げても無駄だと悟っていた。
レオンは私を人目のない場所へと連れ出すと、腕を組んで睨み下ろした。
「二度も処刑を免れた顔をしているな」
心臓が凍る。
だが、彼の言葉に裏打ちされる確信があった。
──この人は、ただの軍人ではない。何かを掴んでいる。
「私は冤罪です。ですが、このままではまた同じことが起こります」
「ほう……未来を見てきたような口ぶりだな」
私は一瞬、息を呑む。
危うく本当のことを口走りそうになった。
「王妃様が倒れた事件、覚えていらっしゃいますか」
「……当然だ」
「その混乱の中で、私が毒を仕込んだと告発されるはずです」
レオンの目がわずかに細まった。
「証拠はあるのか?」
「いえ。ですが、王子が──誰かから何かを受け取っていました。それを調べてください」
「無根拠の推測だな」
吐き捨てるような声。
だが完全に切り捨てはしなかった。
レオンはしばらく沈黙し、それから低く告げた。
「……お前が本当に無実なら、私に協力しろ。さもなくば、今すぐ牢へ放り込む」
選択肢などなかった。
私は深く頷いた。
「必ず証明してみせます」
レオンは踵を返し、そのまま立ち去った。
残された私は、冷たい汗をぬぐいながら息を吐く。
(味方になってくれる……かもしれない)
だが安堵も束の間、背筋を刺す視線を感じた。
振り返ると、廊下の端にカレン侍女長が立っていた。
いつもの穏やかな笑みを浮かべながら、こちらをじっと見ている。
(……この人も、怪しい)
その瞬間、次の一週間がさらに険しくなる予感がした。
第4章までお読みいただきありがとうございます。
ミレイは三度目のやり直しで、ついに近衛隊長レオンと手を組むきっかけを得ました。
ですが、まだ彼は完全には信じてくれていません。
そして最後に現れたカレン侍女長……彼女の穏やかな笑みが、今後の大きな波乱を予感させます。
物語はいよいよ「味方か敵か」が見極められない、緊張の展開へ。
次章では、王妃や王子の動きが本格的に描かれます。ぜひお楽しみに!
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