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第46話 魔王城3 ~新たなる魔王の誕生~


 突っ込まれたサイクロプスは壁を破り遥か彼方へ飛ばされていた……


「………… え?」

『…………』


 ナニ今の? 私がやったんです?


 呆然と両手の平を見ていると……


「よくもやってくれたなッ!!」

「!?」


 その場にいた護衛軍が次々と襲い掛かってきた!

 蜥蜴騎士(リザードナイト)が大剣を振り下ろす! コレをそのまま頭で受けるのは危険だと思う。

 とにかく危機回避しなければ!


 剣が体に触れるより先に敢えて前へ踏み出し、剣の腹を左手で払う。



 パァンッ!! ズドンッ!!



 そのまま相手の懐へ飛び込み右ヒジを左胸にめり込ませた。


「ぐはっ!!」


 蜥蜴騎士(リザードナイト)は血を吐いて後方へ吹き飛ぶ…… やり過ぎたですか?


「野郎ッ!!」


 左右から槍を構えた骸骨騎士(スケルトンナイト)が同時に突きを放ってくる。

 穂先が体に触れる瞬間に回転し受け流す、そしてすれ違いざまにそれぞれのスケルトンの頭に掌底を入れて外してやる。



 パン! パリーン!



「あ……」


 骸骨騎士(スケルトンナイト)の頭蓋骨はそれぞれ別の方向に飛んでいき、壁に激突して粉々に砕け散った……

 これは完全にやり過ぎた!


 でも私…… なんでこんな事ができるんだろう?


『コレこそが勇者テレスの体に染み付いた戦闘技能、つまり歴戦の経験なのだろう』


 そうか…… テレス様は1人でお父様を倒せるほどお強い、殺気を向けられると意識せずとも体が勝手に動くんだ。


『それにこの異常な攻撃力、防御力、スピード…… 恐らくコレこそがテレスが受け継いだ恩恵だろう』

(恩恵…… 初代勇者が神より賜った13の恩恵の1つ……)

『しかし一体どういう能力なのだ? 単純な身体強化とも思えんし、仮に超絶的な身体強化系ならテレスが魔法を一切使わなかったことにも説明がつく、コレだけの能力、魔力消費も激しいだろう……』ブツブツ


 お父様が念話でもブツブツ言い出した、テレス様の恩恵解析を初めてしまったんだ。

 でも魔力を消費している感じは無いんですが……


 …………


 おっと、今はそんなこと考えてる場合じゃなかった。


「どけ……」

「?」


 私を取り囲む護衛軍を割るように出てきたのはフロアマスターの1人、悪魔アモスだ。

 見た目はかなり大柄だけど普通のヒトと大差ない、ただし肌の色が薄紫色です。

 アノ人ちょっと苦手だ、いつも私のコトを餌を見るような目で見てきたから……


「行け、我が眷属たちよ」


 その言葉と同時にアモスの影から何十匹ものコウモリが飛び出し私を囲んだ。


「?」

「これは避けられまい」


 全てのコウモリの前に小さな魔法陣が展開される。


「地獄の業火に焼かれよ! 『闇獄炎(ダーグ・レイム)』」

「!?」


 私を取り囲んでいるコウモリたちに黒い炎が灯る、暗黒魔法『闇獄炎(ダーグ・レイム)』、術者が解除しない限り、対象を焼き尽くすまで消えることのない地獄の業火だ。

 例え完璧に近い炎耐性を持つ生物でもこの魔法は酸欠で敵を殺す。

 この炎に触れるのはマズイです。


「燃え尽きろ!」

「上級魔法『耐魔障壁(レジスト)』!!」


 …………


 あ、いつものクセで…… 魔法使えないんでした……

 ふと見ると…… すぐ隣には槍が肋骨に挟まって藻掻いている頭のない骸骨騎士(スケルトンナイト)2体がいる……


 …………


 ちょっとお借りしますです。


 2体のスケルトンの右大腿骨をそれぞれ1本ずつ抜き取り両手に持つ。

 黒い炎はすでに眼前に迫っていた!


「やっ!」


 両手に持ったスケルトンの大腿骨で迫りくる炎を端から叩き伏せていく。

 『闇獄炎(ダーグ・レイム)』の炎はモノに触れるとそこに張り付き燃え広がる性質がある、つまり自分の体に当たる前に別のモノに当ててしまえばいい。



 バシッ!  バシッ!



 理屈は単純だけど、全方位から飛んでくる炎を……



 バシッ!  バシッ!

   バシッ!  バシッ!



 1つ残らず叩き落とすなんて……



 バシッ!  バシッ!  バシッ!  バシッ!  バシッ!

  バシッ!  バシッ!  バシッ!  バシッ!  バシッ!



 ……意外と出来た……


「おぉ……」


 両手に持った大腿骨は松明みたいになっていた。


 よく見ると隣で転んでるスケルトンがのたうち回ってるようにみえる、もしかして骨が焼かれる感覚が伝わってるのだろうか?

 もしそうならゴメンナサイ。


 黒い炎は少しずつ大腿骨全体へ燃え広がっている、2~3分もしたらコレを持ってる私にも燃え移りそうだ、だからと言ってそこらに捨てると魔王城が燃えちゃうし…… どうしよう?


『ナニをしている、さっさと投げろ』

(え? 投げるんですか?)

『あの悪魔目掛けてな、自分自身に火が付けば消さざるを得ないだろ?』


 なるほど、よし!


「えいっ!」


 2本の大腿骨をアモスに向けて投げつける、だがここで予想外の事態が発生。

 予想以上の速度で飛んでいった2本の骨は、アモスに当たるより早く空中で激突、その場ではじけ飛んだ。

 勢いが強すぎたのか骸骨騎士(スケルトンナイト)のカルシウム不足か、骨は粉々に砕け散り、そのカケラは小さな種火となって護衛軍の半分ほどに降り注いでしまった……



 そこからはもう阿鼻叫喚だった……


「ぐわぁぁーーー! ヤバイ死ぬ!」

「消せ! はやく消せッ!!」

「助けてくれぇー!!」

「バカ! こっち来るな!!」

「触るなーーー!」

「テメェ! 触ったら殺すぞ!?」

「放っておいても死ぬんだ、だったらお前を道連れに!」

「アチチチチチチチチッ!!」


 大惨事です。


「アモス! はやく消せ! ドンドン燃え広がるぞ!」

「フン、この程度避けられない雑魚のことなど知らんな」

「アモス隊長、ヤバイですって!」

「フン…………」(無視)

「こ…… こいつッ!!」


 あぁ、アモス隊長に敵意が集中していく……

 大惨事を引き起こした私のことなど放ったらかしだ。


「? 何だお前ら上司に向かってその目は?

 ………… なんだ、俺に触るな。

 ………… ちょっ! ちょっと待て!? ヤメロ! 俺に触るな! 減給するぞ!

 ヤッ、ヤメッ!! ヤメロー!! アーーーーーッ!!!!」


 あ、炎が消えた……


 アモス隊長はボコボコにされて倒れてる、炎が消えた後にも何人かが殴り続けていたからなぁ……

 きっと私以外にも餌を見る目をされた人たちがいて、その人達がやったんだ。


 そして……


「クソッ! コレが勇者の所業か! こいつトンデモナイことしやがって!」

「たった一人で魔王城に乗り込んできただけのことはある、力だけじゃなく頭もキレるらしい」


 誤解です、今のは狙ってやったワケじゃナイです。


「こうなると物量で押すしか無いか…… 当然犠牲も出るが……」

「そうだな、相手は1人、休みなく攻め続ければ必ず倒せる!」


 え、ちょっと待って下さい、そんな命懸けの攻撃しなくても放っておいてくれたら勝手に逃げますです。


 どうしよう…… 逃げなきゃ…… でも大勢に包囲されてる状態じゃ……

 強行突破するしか無いのかな? その方が護衛軍の被害は少なくて済みそうだし……


 そんな時だった。


「待ちなさい……」


 今にも戦闘が再開されそうな雰囲気の部屋の中に女性の声が響いた。


 ザワザワ…… ピタ!


 その声は興奮状態にあった護衛軍をたった一言で冷静にさせた。


 ……今の声は……



 スーーー



 私を取り囲んでいた護衛軍が左右に割れる、その奥から一人の人物が現れる。

 車椅子…… と言うより、車輪付きのベッドに座して現れたその人は……


「お義母様……」ボソ


 ことある毎に(アリス)をイジメていたお父様の後妻だ。

 嫁いだ時は美しかったらしいけど、今ではその面影はない、体重なんか当時の5倍以上、自力では歩くことも出来なくなってしまった。



 スッ ザザァー!



 お義母様が軽く手を振ると護衛軍は全員片膝を付き臣下の礼をとる……

 アナタ達は一体誰の護衛軍なんですか? 確か魔王護衛軍って呼ばれていたような気が……


「妾はテオドラ・ユスティニアヌス・スキアー、魔王軍総司令官である」


 え!? 魔王軍総司令官!? そんな役職あったんですか?


「第7勇者テレス様……ですね?」

「ッ…… はい……」

「その圧倒的な力、敵に対する無慈悲な姿勢、そしてその漆黒の衣……

 アナタこそ我らが王、3代目魔王にふさわしい」


 …………


「はっ!?」

「どうぞ我らを導く新たな魔王になってください」


「いやいや、ちょっと待って下さい!

 わた……じゃなくて、俺は勇者ですよ!? 後ろ見てください! あの水晶柱の中、魔王プラトンをあんな目に合わせた張本人ですよ!?」

「…………フッ」


 あ、封印されてるお父様を見て鼻で笑った……


「あんな短小変態ロリコン包茎クソ野郎、退治してくれて感謝こそすれ、怨みなどカケラ程もございません」


 うわ…… お父様に向ける視線がまるでゴキブリでも見るような感じだ……


「ホントだぜ、あのロリコンの部下なんて恥ずかしくて親戚に言えなかったぜ」

「あ、俺も俺も、親戚縁者には警備会社に勤めてるって言ってた」

「お前もかよ~♪」


 あぁ…… 何かお父様のことが可哀想になってきた、テレス様から世界的性犯罪者だと聞かされていたけど、まさか部下にまで嫌われてたなんて……


「失礼ながらテレス様の実力を試させて頂きました。

 アナタ以上に魔王にふさわしい者はこの世に存在しないでしょう」

「いや、そんなこと言われても……」


『アリスたんよ、コレはチャンスだ、新しい魔王になれ』

(お父様!? 正気ですか!? 大体そんなことしたらテレス様の立場も……)

『今は元の体に戻ることを優先するべきだ。

 魔王になればその権力を使って本体を探すこともできる』

(あ……)

『さらに自分が魔王城に居ることを世界に喧伝することになる、向こうもこちらを探しているのは間違いないからな』


 確かに聞けば聞くほどメリットの有るプランです。

 でも…… でも…… それらを帳消しにして余りある大きなデメリットが…… それに……


(お父様は構わないんですか? あんな事を言われて……)

『……………………

 別に? 気にならないな』

(あぅ…… そうですか……)




 結局、止めてくれるヒトがいないため、押しに弱いアリスは言われるがまま3代目魔王に就任してしまった……


 コレが新たな魔王の誕生秘話である……




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