表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

第47話 激震


--- テレス・サロス・ティザー視点 ---


 魔王はイボ痔帝国を滅ぼしてからおよそ5日、俺たちは都市国家群と南部王国連合の間にある山脈「グロウレジア山脈」を貫く大洞窟「ロドルの抜け道」へとやってきた。


 ロドルの抜け道とは全長50kmにも及ぶほぼ直線の巨大トンネルである。

 内部は2つの軍隊が行軍しながらすれ違えるほど広い。

 ちょうど中間の25km地点に国境が作られており数件の宿屋が営業している。

 徒歩で旅をする者はだいたいこの洞窟内宿屋に泊まる……が、宿泊料はかなりお高い、俺たちは馬があるから一気に通り抜けたい所だな。


 なのでトンネル入口の宿場町「北ロドル」で一泊することになった。



「ん~~~!」


 馬から降り体をほぐす、ずっと乗りっぱなしだと体がコリ固まる。

 ちなみにフィロは時々馬を降りて並走していた、実に元気な娘だよ。


「ねぇアリスちゃん、まだ時間あるけどもう宿に行く? それとも物資の買い出しに行く?」

「ん~…… 宿に行くにはまだ早いかな? 保存食もまだ余裕あるし……」

「じゃあギルド行ってみよっか?」


 数時間でこなせる依頼があったら受けてみるのもいいかも、馬は手に入ったけどまだまだ貧乏だから。

 情報も収集しておきたいし……


「そうだね、カードも更新しておきたいし」

「決まりだね、じゃ、ギルド行ってみよっか」



―――



「ようこそ♪ あなたの暮らしに寄り添う冒険者協会(ぼうけんしゃギルド)・北ロドル支部へ♪

 本日はどういったご用向きでしょうか?」


 受付のお姉さんはドコでも同じような事を言うなぁ…… やっぱりマニュアルがあるのだろう。


「は…はい、えっと…… カードの更新をお願いしまス」

「はい、ではカードをご提示ください、それから……」


 フィロが更新している間に、ちょっと依頼を見てみるか。



―――――――――――――――――


 討伐依頼Lv.C


 「魔王は耳毛がフサフサ団の討伐」


 あいつらのボスに女房を寝取られた、生け捕りにして拷問したいが別に殺してもいいです。


 ※ DEAD OR ALIVE ※


 依頼者:復讐に燃える正義の味方

 達成報酬:10000ディル

     :正義の味方カード№1


―――――――――――――――――


 討伐依頼Lv.C


 「魔王の体臭はエグい団の討伐」


 娘の連れてきた婚約者が全身ピアスとタトゥーで装飾した盗賊団構成員だった…… 「チィ~ッス☆」って挨拶された…… もうどうでもいいから殺してくれ。


 ※ DEAD OR ALIVE ※


 依頼者:娘の将来を心配する正義の味方

 達成報酬:30000ディル

     :正義の味方カード№2


―――――――――――――――――


 討伐依頼Lv.C


 「トンネル内に発生するスライムの討伐」


 トンネル内に時折自然発生するスライムを討伐してくれ。半年に1回程度被害者が出る、そろそろ奴らが湧くシーズンだ。


 依頼者:ロドルの抜け道管理委員会

 達成報酬:50000ディル

     :トンネル宿屋の宿泊券


―――――――――――――――――



 相変わらずロクな依頼がない、てか依頼人の正義の味方って何人居るんだよ? 前にもこの名前どっかで見たぞ? 一種の匿名希望みたいなものなのだろうか? まさか同一人物じゃないよな?


『おい勇者、この盗賊団討伐の依頼を受け……』

(だから受けねーよ、ここからだと来た道戻ることになるだろうが)

『むぐぅ……』


 これは正義の味方さん家の問題だ、そんなプライベートな事情に俺が首を突っ込むべきではない、せいぜい家庭が崩壊しない様ガンバってくれ……

 既に手遅れなような気もするが……


 この中ならトンネル内のスライム退治が一番まともか…… ただこの依頼も確実にスライムが発生しているとは限らないし…… 全く無駄足になる可能性もある、ナシだな。


 くそぉ~、相変わらずの貧乏旅行か。

 オブシディアン・ナイフとソードは出来るだけ大きな街で売りたいが、最悪の場合はナイフだけでも売っちまうか……


「アリスちゃん! アリスちゃん! アリスちゃーん!!」

「…………」


 フィロがお呼びだ……


「どうしたのフィロ? あんまり公共の場で人の名前を連呼しないで」

「ボクのレベルが25になったよ!」

「おぉ~、上がったね、良かったじゃん」


 以前のフィロのレベルっていくつだったっけ? 忘れちゃったよ……


「でもボクってそんなに経験になるコトしたっけ? 心当たりがないとちょっと怖い!」


 素直に喜べばいいのに、フィロは無駄に真面目だな。

 まぁいいや、俺の方も更新しておこう。


 カードを提示して魔道具に手を置く。


「はい、もう手を話して結構ですよ、え~と…… アリスティア・アグノス・ティアさん…… 51/99…… です」


 うわ…… すげぇ上がった、確か前に計った時はレベル10台前半くらいじゃなかったっけ?

 ゴブリン数万匹殺したからか? しかしゴブリンだけでここまで上がるものだろうか? レアモンスターの痔主が大量に経験値を持ってたのかもな。


「うわ……凄いですね、こんな高レベル冒険者、私始めて見ましたよ? 何でこんなトコロにいるんですか?」

「え~…… まぁ旅の途中ですので……」


 受付のお姉さんに驚かれた、しかしそれも当然だろう。

 こんなトコロにレベル50台の冒険者がいるのは不自然だから。


「ア…… アリスちゃんにアッという間に追い抜かされた……

 それも物凄い勢いで……

 目にも留まらぬ速さで……」


 フィロが落ち込んでる、いやいや喜んどけよ、仲間が強くて損することはないんだから。


「もう魔王城とかさ…… アリスちゃん1人でも簡単に辿り着けるんじゃない?」


 いや、無理だって、アリスは体力もなければ金もない、魔王城へ至るにはフィロの勇者特権が必要なんだ。


「今回はたまたまだよ、たまたまレアモンスター倒したから一気に上がったんだよ。

 そのうちフィロにも倒せるよ」

「………… 次…… 見つけたら譲ってくれる?」

「う……うん、譲る譲る、だから元気だして」

「ハァァァ~♪ アリガトウ♡ アリスちゃん大好き♡」


 そりゃど~も



「あのぅ…… お二人は魔王城を目指してるんですか?」

「え? はい、そうですが」


 受付のお姉さんが遠慮がちに聞いてきた、以前のレベルなら鼻で笑われてたトコロだが、今のレベルなら夢物語じゃない。


「ウワサなんですけどね…… 魔王城への旅、無駄になるかもしれませんよ?」

「はい?」

「実は…… 魔王が倒されたってウワサが入ってきたんです、まだ真偽の程は定かではありませんが……」


「お」

「え? は? え? だ…… 誰が?」

「第7勇者テレス・ティザー様だと言われてます」

「は…… はぁぁぁぁああ!!?」


 ついに来たかこの時が!

 勇者テレスの名が歴史に刻まれる瞬間が!!


『おい! 我は倒されてなんかおらんぞ!』

(いやいや、お前忘れてるかもしれないけど、お前の体も裸でどっかに飛ばされてるかもしれないんだぞ? しかも中身は小動物(ティッペ)かもしれない、社会的には死んだも同然だ)

『……ッ……ッ わ…… 忘れてたぁーーー!!』


「嘘…… テレスお兄ちゃんが……? だって旅立ってまだ半年くらいしか…… そ……それに……」


 フィロが遠慮がちにチラ見してくる。


「ア…… アリスちゃんはテレスお兄ちゃんのこと……」

「うん?」

「あ、いや…… ナンデモナイです、それよりアリスちゃんはまだ魔王城目指す……よね?」

「もちろん」


 普通に考えれば魔王が倒された魔王城に用はない、でもアリスの真の目的はテレス(の体)に会うことだ、当然旅を続けるし、最初の契約通りフィロにも付き合ってもらう。



―――


――




 その日は北ロドルで一泊し、翌日 馬を走らせ「ロドルの抜け道」を一気に抜けた。

 これでようやく南部王国連合に入った。




 そして現実を知ることになる……




 南ロドル ギルド併設酒場……


「おい聞いたかあのウワサ?」

「あぁ、勇者が魔王を殺してその立場を乗っ取ったってやつだろ?」


「…………」


「しかしそんなことが可能なのか? 普通は仲間が止めるだろ?」

「それがたった一人で魔王を倒したらしい」

「げ! ボッチかよ! そりゃ魔王になるのも納得だ」


「…………」


「しかもそいつ、例の第7分家の勇者らしい」

「あ~…… それは2代目魔王より酷いことになるんじゃないか?」



 こんな噂話がそこかしこから聞こえてくる、酒場のみならず街中からだ。

 多分一週間としない内に世界中で話題になるだろう。


『な~んで我が死んだことになっておるんだ?

 な~んでお前が我の後継者みたいに言われてるんだ?

 不愉快極まりないぞ』


 やかましい、不愉快極まりないは俺のセリフだ。

 寄りにもよって変態ロリコンの後継者とか……

 俺にまで先代魔王の負のイメージが伝染る!


(アリスさん…… いったい何してくれてんのぉ?)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ