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エピローグ

三月の中旬。

私は、桜色の振り袖を着て、ホテルの一室に居る。

今日は、兼ねてから決まっていた、護との結納(婚約の誓い)の日。

私達は、まだ未成年だけど、結婚できない年齢でもない。

でも、親達の取り決めで、護が教職に着くまでは、結婚はお預けなんだ。

それでも、私はいいと思ってる。

その間に、自分磨きがしたいから。

「詩織、どうした?」

私に前に座ってる、スーツ姿の護の問いかけに。

「ううん、なんもないよ」

私は、笑顔で答える。

「そっか…。そうだ、これ」

護が出したのは、小さな箱。

「開けていい?」

「いいよ」

私は、その箱を開ける。

中には、クローバーを型どった指輪が入っていた。

「可愛い」

私が見とれていると。

「手を出して」

護に言われて、左手を出すと、その指輪を薬指に嵌めてくれた。

「幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーの中心にピンクダイヤをあしらって貰ったんだ」

あしらって貰った?

「これ、オレがデザインしたもの」

「エーーー」

何時に間にこんなの頼んだの?

「詩織に持ってて欲しいから、ネックレスチェーンも一緒にな」

そう言って、もう一つの箱を出して、見せてくれた。

「よかったわね、詩織」

お母さんが、横から言ってくれる。

「嬉しい。ありがとう」

私は、泣き笑いになる。

「こらこら、涙はいらないだろうが…」

護が、ハンカチを出して、私の涙を拭く。

「うん」

「詩織。お父さんとお母さんからもプレゼントがあるんだけど、いる?」

お母さんが、唐突に言う。

「エッ…」

私と護は、顔を見合わせる。

何だろう?

お母さんの方に向くと。

「これ」

どこかの鍵を取り出す。

「あなた達を見てたら、いても経ってもいられなくなったね」

お母さんが、ニコニコしながら言う。

どういう事?

そこに。

「護君は、詩織と同棲したがっていたよね」

お父さんが、護に向き直して言う。

「エエ…」

護も不思議そうに言う。

「この鍵、二人の家の鍵。その代わり、家の近くだがな」

って、お父さんが言う。

「護君が、覚悟を決めて、詩織と住む気があるなら、今からでも住めるようにはしてあるが、どうする?」

思わぬサプライズに護が。

「オレ…、僕は…」

って、言いかけて、私の方を一瞬見たかと思ったら。

「詩織さんと一緒に住みたいです」

って、堂々と言う。

「ならこれから行くか?」

「はい」

護のお義父さんも無言で頷いてる。

護の事、信頼してるから、出来るんだよね。



私達は、ホテルを出て、新居まで歩く。

着いたのは、護の家と私の家の中間にあるマンション。

「ここの四階の角部屋だ」

お父さんが言う。

「詩織。さっきの鍵で開けてごらん」

お母さんに言われて、玄関の鍵を開ける。

ガチャ…。

ドアを開けると、三LDKの部屋が見えた。

しかも、本当に今からでも暮らせるようにある程度のものが揃えられてる。

「後の必要なものは、自分達で揃えていきなさい」

お父さんが言う。

「ここの家賃は、お父さん達が払うから、気にしないこと」

護のお義父さんが言う。

「ありがとうございます」

私は、両親との護のお義父さんに頭を下げる。

「護君。詩織は、余り家事、上手じゃないから、期待しないでね」

お母さんが言う。

うっ、痛いところを突かれたなぁ。

「大丈夫ですよ。その分、オレが教えながらやりますから」

護が、笑ってる。

「どうせ、家事は苦手ですよ」

私が不貞腐れると。

「大丈夫だよ。直ぐに慣れるから」

護が優しく微笑む。

「さぁって、私達は帰ろうか、お母さん」

「そうね」

ドアに手をかけてる両親に。

「ちょっと待ってよ。私の服や制服とかは?」

「ちゃんと運んであるわよ」

お母さんが言う。

「じゃあ…」

って三人は帰って行った。


「二人だけになったね」

私の言葉に。

「そうだな」

言葉短めに言う、護。

「私、着替えてくるね」

突然二人になったのが恥ずかしくて、自分の部屋に向かう。

クローゼットの中を見ると、ほとんどの物が運ばれてきていた。

いつの間に…。

着物を脱ごうと帯に手をかけるが、硬くて取れない。

どうしよう…。

その時。

コンコン…。

ドアをノックされる。

「はーい」

ドアを開けて、護が入ってくる。

「ちょうどよかった。護、帯ほどいてくれないかな。硬くて取れないんだ」

「ああ」

ぶっきらぼうな返答をしながら、護が帯を解いてくれる。

「ありがとう。で、何か用?」

「コーヒー飲むかなって思って」

「私は、コーヒーより紅茶の方がいいな」

「わかった。じゃあ、買ってくる」

そう言って、護は出て行った。

あれ、なんか、そっけないな。

まぁ、いいか。

私は着物を脱いで、服に着替えた。

私は、リビングにあるソファーで寛いでいた。

「ただいまー」

護が帰ってきた。

「お帰りー」

私は、玄関に向かう。

護が、袋を抱えて帰ってきた。

「何を買ってきたの?」

「出たついでに夕飯の買い出し」

流石としか言えない。

護は、キッチンに行くと買ってきた物を仕舞いだした。

「詩織。これな」

紅茶缶を渡してくれる。

「ありがとう」

私は、護に言う。

「ねぇ、護。本当に一緒に住んでいいの?」

私が、改めて聞くと。

「今さら、何を言うんだよ。詩織は、嫌だったのか? オレは、詩織と一緒に居たいんだが…」

護が言う。

「嬉しい。私もこんなに早く、護と一緒に居られるようになるなんて、思ってもなかった」

「オレもだよ。本当にサプライズすぎだよ」

護がまだ放心してるみたい。

「まだ、半信半疑でいるんだ。夢じゃないかって思う」

護の動揺は、私にも伝わってくる。

「じゃあ、私も夢なのかな」

私は、護に抱きつく。

「夢じゃないな」

護にきつく抱き締められる。

「愛してる、詩織」

甘く、優しい声。

「私も、愛してる」

護の唇が優しく私の唇に重なる。

やっと、落ち着ける。

ここから、私達の生活が始まる。





あなたの傍に……。

読んでいただき、ありがとうございます。

本編は、これにて終わりです。

次回から、彼目線で届けられたらいいなと、思ってます。

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