端緒
足を骨折した理由は、高い所から飛び降りてみたら、どんな感じなのか知りたかったから。そう言ったら、すごく、皆に引かれてしまった。足は治ったけど、精神科に通うことを決められて、奏人は、悲しくなった。
奏人の母親は、過保護で、奏人が少し浮世離れしているのを、この世の終わりのように捉えることがあった。奏人が授業中に、学校を飛び出して、ゲームセンターに行った時も、怒るというよりは泣き出して、ご飯も食べなかった。
奏人には、姉がいた。すごく大人しかった。お母さんの全ての関心は、末っ子(と言っても2人きょうだい)の奏人に向けられていて、美有の存在は、ほとんど無視されているくらいだった。
母親がパートに出る日、奏人は、学校をだいたいサボる。早退して、家でゴロゴロする。お母さんには、学校から連絡が行くこともあるけど、常態化させて、今は、お母さんにも必要な休養と認めさせている。
その日も家に帰ると、美有のローファーがあった。美有、家にいるのか…と思って、廊下を歩いていると、少し変な声が聞こえる。美有の声だ…。でも、何か気持ちっていうか、そういうのが、こもってない…。それに、何だろう、息切れの音?
奏人が美有の部屋を覗くと、裸の男の人が美有の上に乗っていた。「うわぁ!!」奏人が叫ぶと、男の人は、ビクッとして、奏人を見た。
「何、この子?」
と男が言うと、
「弟。」
と美有が答えた。
「弟?」
「うん。」
「…。俺、帰る。」
「そうして。」
男は、下着を着て、服を着て、出て行った。出ていく時、部屋の入口に立つ奏人の肩に、少しその男の服が掠った。




