エルフの森へ
タツヤはアリエッサと二人でエルフの森に向かっていた。道を知らないので案内を探したところ、彼女が他を押しのけてきたのだ。
「このまま走れば十日程度で境界に着くにゃ。その先に私は行かれないにゃ」
「何故?普通に行けるだろ?」
「許可の無い者は森を抜けられないのにゃ。森の中は迷路のようになっているのにゃ。同じ場所を何回も歩いたり、元の場所に戻ったりするのにゃ。タツヤはエルフから誘われたのにゃ?それなら向こうから現れるはずにゃ」
いわゆる迷いの森になっているのか。確かに話はしているが、大丈夫だろうか。最悪はガーダが居るから迷子は避けられると思う。
「境界に着く雨にダンジョンがあるのにゃ。そこに入って魔石を手に入れるにゃ」
途中にあるダンジョンにアリエッサは入りたいようだ。俺も入ったころはないので、寄り道するのはありだな。
「ダンジョンに寄るのはいいぞ。中の様子をしっているのか?」
「そこは草原タイプだにゃ。三階層からにゃる小さなダンジョンにゃのにゃ。鼠と兎、猪の魔物がでるのにゃ。猪は三層にゃので、二層までがいいのにゃ」
「分かった。二層まで行ってみよう。だが、俺の攻撃はダンジョンには向かないと思う。一回見てくれ」
俺は魔力球を取り出し、近くの木に投げつけた。爆音とともに木が爆ぜる。
「にゃにゃっ、この攻撃は駄目にゃ。ダンジョンでは使用禁止にゃ」
「それだとダンジョン行きは中止だな」
「仕方にゃいのにゃ。自爆は嫌にゃのにゃ」
途中の魔物を狩りながら進んでいった。
梃子摺ることもなく、順調な旅を続けていた。
「この先がエルフの森にゃ。私の案内はここまでにゃ。この先は迷いの森、同じ道を何回も通らされたり、入口に戻ったりするにゃ。タツヤにゃら跳ね除けられると思うのにゃ」
俺はアリエッサと別れ、迷いの森と呼ばれる森に足を踏み入れた。
「ガーダ、気配は分かるか?」
『主、人の気配、分る。遠い』
ガーダが足で指す方向に進んで行く。俺には左右方向に曲がっていくように思えるが、真直ぐに進んでいるのだろう。俺の間隔で真直ぐに進むと迷路に入ってしまう。これが迷いの森の正体なのだな。
一時間も歩いているとガーダから
『このまま真直ぐ。三日掛かる』
と言われた。ガーダが探知する範囲はどれだけ広いのだろうか、聞いてみた。
『真直ぐ、五日分。廻り、一日分』
との回答だった。周囲を広範囲に探知すれば徒歩で一日分、二十キロ程度。直線で探れば百キロ。凄い能力だった。
途中で野営しながら森を進んだ。魔物も出るが、子蜘蛛達の食料となっていく。
ガーダの探知とおり、五日後にエルフが表れた。六人いるが、弓を全員が持っている。
「ここはエルフの森。人族が何の用だ」
少し好戦的に言ってくる。
「エルフのエルナンドさんに誘われたのでエルフの森に来た。彼と話がしたいのだが」
「彼はここから三日ほど進んだ集落に居る。彼から他に言われたことは無いか」
「特には言われていません。待っていると言われただけです」
「そうか、この方向に進めば三日で着くだろう。途中には魔物も出るが、注意して進んでくれ」
そう言うと彼等は去っていった。周辺を見回っているのだろう。俺は示された方向に足を進めていた。
「ガーダ、人の気配はあるか」
『主、ある』
確認もできたので、そのまま進む。
この辺りは木々の間隔も広く、森の中だが明るかった。エルフが間伐を行っているだろうか。木々も高く成長している。木漏れ日がさす森は綺麗だな。
教えられた通り進むと三日で集落に到着した。
外壁は土でできており、高さが五メートルほどと低かった。ここまでの森には魔物も出なかった。エルフが周囲を巡回し、魔物を狩っていると思う。これで十分なのだろう。
門には二人の兵士?狩人?が立っていた。
「すいません、タツヤと言いますが、エルナンドさんに会いに来ました。取り次いでいただけませんか」
「エルナンドの客人か。少し待っていろ」
一人が村の中へ向かった。
「黒目、黒髪、君がエルナンドの言っていた異世界人なのか」
「多分、そうだと思います」
「そうか、ドワーフの国からだったな。よく来てくれた。歓迎するよ。だが、エルナンドが来るまで、少し待っていてくれ」
ここでも鑑定されるかもしれない。最近、自分でも把握していなかったので確認した。
名前 高達達也
年齢 十六歳
種族 人族(異人)
職業 陶芸職人
レベル 二千百十七
スキル 陶芸 無限収納 投擲 解析
抽出 従魔 生活魔法
スグンターナ神の加護
アーステラ神の加護
変化していないよな?年齢が上がっている程度か。それなら問題無い。確かスキルは覚えやすいって女神様が言っていたけど、何も増えていないな。
貴族と揉めたのが二回、他は獣人の村に壁を作った程度、これでは増えないな。独りで納得していると、エルナンドさんが向かえに来てくれた。
「久しぶりだな。エルフの森へようこそ。歓迎する」
「ご無沙汰しています。お言葉に甘えて来ました。突然で迷惑ではなかったですか」
「問題無い。今は集落の警備を担当している。集落まで案内する。着いてきてくれ」
「はい」
俺はエルナンドさんの後を着いて歩いて行く。俺の知識だとエルフは木の上に家を建てているのだが、ここは普通の平屋がある。地球のイメージと違った。残念である。
「ここが長の家だ。これから紹介するが、万能薬のことは後にしてほしい」
「了解です」
二人で家の中へと入っていく。扉も開いたまま、鍵をかけないのかな?治安がいいのだろう。人間の街とは違うね。
「長、客人を連れてきた」
奥から足音が聞こえてくる。
「エルナンドさん、お客様ですか?父は畑に行っています。直ぐに呼んできますから、中に入って待っていて下さい」
「手間をかけるな。中でまたしてもらおう。タツヤ殿、彼女は長の娘、トリシアだ。トリシア、彼はタツヤ、異世界から来た客人だ」
「初めまして、トリシアです」
「初めまして、タツヤです。お邪魔します」
挨拶が終わるとトリシアさんは走って出て行った。畑は遠いのだろうか?
「直ぐに戻ると思う」
俺は表情に考えが出ていたのだろうか、エルナンドさんが答えてくれた。
椅子に座って待っているとトリシアさんが戻ってきた。一緒に居るのが長なのだろう。長と言ってもエルナンドさんと見た目が変わらない。種族特性なのだろう。
「お待たせしました。ここの長、ギルモアです」
「はじめまして、タツヤです」
「貴方が異世界の方ですか?」
「はい、異世界から来ました。よろしくお願いします」
「何も無い集落ですが、ゆっくりしていって下さい」
「長、タツヤ殿にはエルフの森を巡ってもらおうと考えている。最終的には四賢人の所に案内したい」
「ほう、あの場所へ連れて行くのか?」
「それは賢人たちの判断ですが、タツヤ殿なら認められると思います。タツヤ殿が知りたかったこと、そこなら教えてもらえるかと思います」
俺の知りたかったこと、万能薬の作り方を知る方法がある。その可能性だけで十分だ。
「お任せします」
エルナンドさんに一礼する。
その晩は長の家に泊めてもらい、翌日から集落を巡るのだった。




