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村の復興と移住者

 タツヤが皇国に向かった二日後、兎人族の村に傭兵が十五人乗った馬車が七台、門前の広場に停まっていた。

 「門を開けろ!団長を連れて戻ってき!」

 自分達が吹き飛ばしたはずの門がある事を疑問に思わず、大声で叫んでいる。

 「おいっ!門は俺の魔法で無くなったはずだぞ。おかしくないか?」

 「あぁ・・・残った奴らが獣人に作らせたのだろう。早く開けろ!」

 すると門が開いた。中には傭兵団と見られる男が手招きしていた。

 男は冒険者で、倒した傭兵団から身包みを剥がし、成りすましていたのだ。タツヤが出立前に、傭兵の残党や新手が来るかもしれないと準備を指示していたのだ。

 「ご苦労!」

 団長のガルムが男に声を掛け、中へと進む。村に向かう道の両側に子蜘蛛が巣を張ってまっていたのだった。

 御者台に座る傭兵が子蜘蛛の糸で引きずりおろされた。そのまま巣まで引き摺られ、糸に絡まっていく。突然、馬車は制御が停まったので、後にいた傭兵達が降り立つ。

 子蜘蛛が糸を飛ばしていくが、魔法が打たれ五人は難を逃れた。

 「誰だ!」

 ガルムが叫ぶ。廻りを見れば、蜘蛛の巣に十人の傭兵が捕らえられている状態だ。

 「俺は冒険者のアコロムだ。縁あって村の守りを任されている。残っていた傭兵は既に捕らえている。お前達、大人しく武器を置いて負けを認めれば、命だけは助けてやるぞ」

 アコロムが一応の説得を試みるが

 「あぁ!何を言っている!闘いもせず負けもないだろうが!魔法を打て!」

 アコロムは巣の内側だ。魔法が飛んでくるが、巣に弾かれ当たらない。魔法を打つ魔術師の隙をつき、子蜘蛛が糸を飛ばし、巣へと引き込んでいく。最後に残っているのは団長のガルムだけだった。

 「畜生が!」

 アコロムに向けて走り出すが、蜘蛛の糸に絡まり、転がっていた。

 数分で全員が捕縛され、糸で全身を巻かれた状態で転がされていた。

 タツヤが乗り込んだアムナール伯爵邸には主力の傭兵は獣人の森に向かっていたため、戦闘が簡単に終わったのだった。こちらでも簡単な戦闘だったのだが。

 「タツヤ殿が戻るまで、このままでいいよな?」

 アコロムがアルベットに確認すると、頷いていたので、奴らが乗ってきた馬車の中に放り投げていた。




 タツヤは村に戻ったが、皇国からの輸送体は到着していなかった。変わりに門の傍には十五人の傭兵団が居たのだった。

 「団長は村に向かっていたのか。歯応えのない連中だとおもったよ。少しは梃子摺ったのか?」

 タツヤが笑いながらアコロムに問いかける。

 「いや、呆気なく片付いた。蜘蛛が強すぎだ。俺らは何もしなかったぞ」

 「子蜘蛛達は強いぞ。ガーダは更に強いけどな。この馬車、貰っても大丈夫だよな?」

 「大丈夫だ。襲ってきた奴らの物だ、戦利品として貰う権利があるぞ」

 馬車が手に入り、タツヤは口角を上げていた。悪そうな笑顔だ、アコロムは内心呟いていた。

 そのまま村長のところに向かい、攫われた村人は全員無事だと告げた。それを他の人達にも告げると皆が嬉しそうだった。

 「村長、補償については保留にしてあります。俺一人では決められなかったので。後日、皇国から何等かの話があると思います。食料は確保できているので、急がなくてもいいかと勝手に判断しました。すいません」

 タウヤが頭を下げると村長は

 「いえいえ、皆が無事に帰ってくるだけで十分です。この先のことは我々で何とかしていきます」

 「村長、お願いがあるのですが。この村に住まわせていただけませんか?」

 「えっ?この村に?兎人族の村ですよ?よろしいのですか?」

 「はい。この村に住みたいです。すでにドワーフ国にあった家は引き払ってきました。お願いします」

 「それは構いませんが、こんな森の中で辺鄙な村ですが、よければどうぞ。村の者たちも反対しないでしょう」

 「ありがとうございます」

 俺は村に住む許可をもらった。これで浮浪者は免れた。

 村長と話をして、門から村に向かう道の途中に家を出すこととした。ここなら皇国から人が来ても気づく場所だな。

 廻りの木を切倒し更地を作る。家の周りに馬車を置く場所、走竜の厩舎を立てる場所も同時に作った。

 更地の土を少し収納し、窪地を作る。そこに外壁と同じレンガを平に並べ、家を上に出した。

 「いい感じだな」

 一人呟き、収納した土で厩舎を作るのだ。厩舎は一面の無い小屋なので、簡単に作りレンガの上に置いた。

 そこにアコロムが来た。

 「タツヤ、捕虜はどうする?俺達で皇国に運ぼうか?」

 「それは村人が戻ってくるときに役人も居ると思うので、その人たちに任せましょう。うまくすれば依頼料がもらえるかもしれませんよ」

 「そうだな、少しでも稼がないとな。いつごろ着く予定だ?」

 「早くて明後日くらいかな?」

 「判った。待つことにするよ。そこの家は誰が住むのだ?」

 「俺の家ですよ。この村に住もうとドワーフ国から持ってきました」

 「ほう、タツヤはココに住むのか。ここは発展しそうだな。俺もここに住もうかな。そろそろ冒険者も引退しようと考えていたのだけど、どう思う?」

 「どうも何も、村長の許可がもらえるのか分りませんよ」

 「そうか、村長に確認して許可がでれば、嫁と子供を連れてこよう!」

 「メンバーはいいのですか?」

 「ああ、あいつらも一緒に移住だろうな」

 そう言って村長の家に走っていった。

 翌日、壊された門を修復し女神様にもらった魔法陣を使用することとなった。

 門だけでなく、橋にも使用する予定だ。これで、堅牢な外壁となるだろうとウキウキしながら魔力を流してみた。すぐに終わると思ったのだが、魔力の吸収が止まらない。大丈夫なのかと思いつつ、二十分ほどして魔力を受け付けなくなった。これを使える人はいないだろうなと思った。

 うむ、見た目は何も変わらない。確認ができないので、その辺に落ちていた木切れにも使用した。魔力の使用料は多くなかったので、体積?質量?に応じて魔力が必要なようだ。

 木切れを持ってアコロムの所にいき、折れるか試してみた。

 「こんな細い木も折れないのか」

 と笑いながら力を込めていたが、曲がる事もない。真赤な顔で力を込めていたが、埒が明かないと思ったのか、木切れを地面に刺し剣で斬りつけていた。

 パキっと音がして剣が折れていた。アコロムは放心状態だ。折れた剣を見つめていた。

 「あぁぁぁっ 高かったのに!」

 両膝をつき声を上げていた。

 ここまでとは思わなかったが、この魔法陣は使い方を間違えると拙い品だと理解した。

 俺はその場を離れようと歩きだしたが、肩を掴まれた。

 「この木はどこにある?これを武器にする。もっと長い物はないのか」

 アコロムが涙目で聞いてきた。だが、不懐となった木に興味があるようだ。

 「それは異世界の木で、もう入手できないのですよ」

 「お前、知っていただろ?俺の剣を返せ!今すぐに返せー」

 アコロムが騒いでくるが、ゴメンと謝ってその場を離れた。後で俺の作った陶器の剣を渡すとしよう。ドワーフの王級が作った剣とよりは劣るがそれなりの性能なはずだ?

 「村長に許可はもらえたよ。街に一度戻って準備してから移住だ。よろしく頼むな」

 笑顔で自分のテントに戻っていった。

 俺は他の村へ外壁の強化に向かった。道が分かるか不安だったが、ガーダが覚えていると言ったので、道案内を頼み出立した。一日で廻る予定だが、大丈夫だろうか。


 全てを廻り終えたのは翌日の夕方で、家に戻った時には暗くなっていた。途中で出会った魔物はガーダが倒し、その場では収納だけして、俺が強化中に子蜘蛛と一緒に食べていた。もちろん視界に入らないよう、少し離れた森の中で。

 村に戻るとシルバーナが待っていた。

 「婚約者の私が来たのに、どこに行っていたのだ!待ちつかれたぞ」

 うん?婚約者?そんな話聞いていないし、した覚えもないぞ。

 「婚約した覚えは無いが?」

 「いや、あの・・・父上と約束したのだ。タツヤと婚約できれば、この村への移住を認めると。タツヤが住む村なら面白そうだし、移住したい、その為に私と婚約してくれ。素材も夫婦の共有財産として使わせてくれ」

 素材が目的かよ。困った王女だ。

 「無理です。帰って下さい」

 「いやいや、移住の為に鍛冶師と文官も連れて来たから、役に立つ。婚約して移住を認めてほしい」

 鍛冶師と文官、他にも数人が来ている。ドワーフ三人は鍛冶師、獣人の二人は文官かな。残りは冒険者の人族だろうか。

 「私も入れて六人が移住する。お願いだ」

 「この村で一緒に住んで、お互いに様子を見ましょう。それでいいですか?ところで村長の許可は得られたのですか?」

 「村長の許可は貰った。あとはタツヤの返事を待っていたのだ。これから、よろしく頼む」

 六人か、これからも増えるかもしれないな。アコロムも家族で移住するし、少し外壁を広げる必要がありそうだな。

 その日は門前の広場で宴会となった。婚約祝いではないことを何度も説明した。アコロムは笑い転げていたが、こっそり剣を渡すと、頬ずりをしていた。気にいったようだ。

 「ふむ、その剣はタツヤ殿が打ったのか」

 王女に同行したズリムが聞いてきた。彼とは何回か面識がある。

 「陶芸で作った剣なので、打ったというか、焼いた剣です」

 「ほう、業物と言ってもいい出来栄えだな。少し見せてくれ」

 アコロムから渡された剣を見て

 「儂には打てない剣だな。しかも属性を付与しているな。いい品だ。大切に扱えよ」

 「付与まで分かるのですか」

 「細かいことまでは分からない。だが、剣に魔力の残像があることは分かる。これが魔剣や聖剣なら魔力が籠っている。その程度だな」

 持っていたジョッキの酒を一気に飲み干した。ドワーフは酒に強いな。この酒、俺が一気飲みすれば倒れる酒精なのだが。

 「この付与はタツヤ殿が?」

 アコロムが他の冒険者に剣を自慢しにいくと、ズリムが聞いてきた。

 「・・・」

 「誰にも言わないと約束しよう」

 「ええ、俺が付与しました。不懐です」

 女神様に武器には付与できないと言われていたのだが、陶器の剣には可能だったのだ。

 「! 不懐!それはドワーフが望む最高位の付与でもある。しかし、それに勝る剣を打つのも我らドワーフの願い。異世界人の能力とは恐ろしいのだな」

 もう一杯、一気に酒を飲みほした。

 「儂は不懐を超える剣を打ってみたい。この村に来てよかったぞ」

 俺は先ほどの木切れを収納から出し、ズリムに渡した。

 「これにも不懐を付与しています。参考にでもして下さい」

 「いいのか?この木切れでも付与するには上級、いや王級魔術師ほどの魔力を必要とするのだが。やはり規格外だな」

 そう言って笑っていた。そこへ王女がやってきた

 「家、家を建てるよ。間取りも決まった!これを見てくれ」

 見せられたのは数枚の羊皮紙。一枚一枚が一階を表していた。全部で五枚、五階の建物を建築するらしい。

 「一階は工房とエントランス。右が私で左がズリムの工房にする。二階はホールで晩餐会もできるぞ。三階が厨房と住居。四階が内務関係の執務室と客室。五階が私の部屋だ。いい案だろう」

 何か間違っているようにも思ったが。

 「いい案ですね。建築、頑張って下さい」

 「えっ?タツヤが建ててくれると思ったのだが?」

 「嫌です。そもそも城みたいな家、作れません。俺が作れるのは、これくらいです」

 そう言って、村人用に作った家を出す。

 「ちいさっ!これ小さくない!仮にも王女が住む家だよ。これは無い!」

 俺は彼女と二人で村長の元へと向かった。

 村長にシルバーナが王女であると伝え、屋敷の話をする。横で満足気に頷く彼女であったが、村長の一言で顔色が変わった。

 「この兎人族の村、しいては獣人の森に王は居ません。ですが、熊人や虎人、狼人が覇を唱え争っています。彼等を倒し王と名乗るなら問題ありません。このまま王と名乗れば彼等は向かってくるでしょう。それが終わるまで村の外で過ごして下さい」

 「いや、王と名乗るのではなく、ドワーフ国の王女と名乗ろうかと・・・」

 「同じですよ。彼等の許可を得ない限り、どの国の王族、貴族も名乗ることはできません。過去に各国の貴族が来ましたが、一致団結して追い返していました。この森に貴族を名乗る者も王族を名乗る者も彼等は認めません」

 シリバーナは項垂れたまま戻っていった。

 俺は村長から詳しい話を聞いていた。

 獣人達はそれぞれ尊重しあっている。だが、力の強い獣人族はお互いに一番を目指し争っている。過去に犬人族の村に狼人族が押し寄せ従属させようとした。しかし、他の獣人族が団結し、それを阻止した。それ以来、覇を求める種族は他種族に宣言をするように定められた。その宣言をしているのは三種族だけで、他は静観となっている。

 この森は獣人の縄張りと認識されているので、人間が縄張りに入ることを三種族は許さない。それが結論だった。

 「俺や冒険者たちは大丈夫なのですか?」

 「ええ、王だとか貴族だとか言わず、普通に住むには問題無いです。人族の方が住んでいたことも多々ありますから」

 縄張りか。それは国境という考えに近いものだろう。だとすれば、縄張りは必要かもしれないな。

 その後、村長と家と畑の位置について話をした。今までの位置でいいと言われたが、ドワーフも人族も増えるかもしれないと伝えると、先ほどの件もあるので、控えてほしいと言われた。

 まだ周囲には余った土地があるので、そちらを使うのは了解してくれた。

 門を入って右がドワーフ、左が人族として家と畑を作るのだ。一番の優先事項は兎人族の家を設置することだ。

 これは村人が戻ってから行う事となった。中には農作業のできない家族も居るのだ。希望を聞いて、便利な配置にしたいと村長は考えていた。

 俺は陶芸で家を作り、村人の帰りを待っている状態だ。

 ドワーフたちには三棟の家を出し、二棟の工房を作っていた。工房は平屋で何も無い箱でいいそうだ。入口と窓だけのシンプルな家だが、二十メートル四方と大きく壁を一メートルとしてあった。

 その中に炉を設置し、横を作業場としていたので、仕切りは不要なのかと尋ねると、余計な物は要らないとズリムに言われた。

 シルバーナの工房も同じ作りにしたら、文句を言われたが、

 「王級の鍛冶師より立派な工房で、神器でも作ってくれるのかな?」

 と嫌味を言ったら大人しくなった。虐めるのは止めようと思った。

 冒険者には五棟の家を渡し、好きに使ってもらう。畑用地は木の伐採と整地だけして、後は当人に任せることにした。

 両方の敷地に井戸も一か所ずつ掘っておいた。水は重要だ。

 「兎人族は酒を造れるか?」

 ズリムが村長に訪ねていたが、答えは否だった。水が無い生活をしろと言われているような顔をしていた。酒を造る人を国から呼びたいと村長に懇願し、苦笑する村長に受理された。

 「穀物は必要ないのか?」

 俺が尋ねると、麦があれば作れると言うので、ドワーフの区画にも畑用地を用意した。

 「我らドワーフに畑仕事は無理だ。それより酒造りの工房を用意してくれ」

 そう言って去っていった。俺にどうしろと言うのか、困った問題になりそうだったが、村長から農具や生活用品と交換で麦は渡せると言われ、安心したのだった。

 鍛冶工房と同じ建物を二棟、外壁の傍に立てた。周囲から離れていたほうが美味い酒ができる、そう言われたので壁際にした。理由が解らない。




 皇国から村人が戻ってきた。家族と再会できて泣く者もいるが、悲しそうな表情の者もいた。彼等は家族を失った人たち、思い出していたのだった。

 その日は疲れを取ってもらい、翌日から家の設置が始まった。と言っても収納から出すだけの簡単な作業だ。

 場所は元と同じ場所で決着していた。いろいろ考えたようだが、今までと一緒。そう結論したようだ。

地均しは必要なく、テントを畳み設置を繰り返した。畳んだテントは倉庫に運び入れ、非常時の備えとなった。

 ここで俺が以前から考えていた噴水を造ろうと思った。水の循環と浄化、使っても減らない噴水だ。井戸から水を汲む作業は疲れる。まして手足を失った人の多い村だ、何とかできないか考えていたのだ。

 形は陶芸で作った。土に魔石の粉を混ぜてあるので、魔力を籠めることができ、無くなるまで動き続けるだろう。だが、魔道具として使うには細工が必要なのだ。

 俺はエルフの元に向かう事にした。


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