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ネオワールドウォー・オンライン  作者: 清風裕泰
着任-チュートリアル-
5/5

第五戦 指針


「基地を放棄するってこと?」

「そうだよ。最早ここを拠点として使うメリットがない」


重要施設の大半が使用不能に陥っていて敵が易々と潜入してくるほど安全性も皆無。これでは基地ともいえないだろう。


「何よりドックが使えない以上、マウスを回復させるためには、ここではないところに向かうしかない」

「そうね...」


第77連隊に配属された途端、武装人形マウスが瀕死状態になっているからこれをどうにかしてほしいと頼まれた。

戦闘後、ダメージを受けた武装人形は基本的にドックで治療を受けたり、工廠で艤装の修理を受ける。

だが残念なことに、第77連隊はドックや工廠はおろか管制施設や倉庫など諸々が跡形もなく破壊されていて、修理出来そうな見込みはない。


「俺はこの周りの地形に詳しくない。だから」


すこしだけ思いついたことがある。


「アイゼン」

「はい!」

「第77連隊は第6師団の下にある。あってるか」

「はい!」

「葛城、周りの地形を確認できる地図は残ってるか」

「あるわ」

「出せ」


足が折れて傾いている棚から古い地図を取り出す葛城。背が小さい彼女は背伸びをしながらそれを取り出していた。次からは他の娘に任せよう。


「ここが第77連隊がある山ね」


葛城は俯いて左手で黒い髪を耳の後ろに回し、右手で山に思しきところを指差す。木の年輪みたいな等高線が幾重も重なっており、山頂より少し下のところに基地の敷地が描かれていた。


「何で第77連隊はこんな山奥にあるんだ?」

「第77連隊は最前線で敵を食い止める役割を担っているわ」

「つまり肉の壁だと」

「......」


葛城が睨みアイゼンは俯く。

だが現状を見るかぎりそれでしかない。第6師団の指揮官が誰か分からんが、同じく指揮官として活動したなら思考パターンを似ていくものだ。

彼はこの第77連隊を肉の壁として設置してぎりぎりまで保たせては、大事に育てた本隊で敵を叩くつもりだろう。


「第6師団には他にどんな連隊があるんだ?」

「ここの第78連隊」

「割と近いな」

「そしてここの第56連隊」

「ぐむ、軍港か」

「そしてここが第6師団の本部大隊よ」

「なるほど」


葛城が指した地図から見ると、第77連隊が最前線にあり、その後ろの丘に第78連隊、そして第56連隊が右側の浜辺に陣取っている。

そして一番後ろに第6師団の本部がある。


形としては一応第6師団本部にはよってたが、師団長がちょうど席をはずしていたとのこと。他の連隊長と仲良くするつもりもなかったし第77連隊に直行したわけだが、何なんだこの部隊は。


「でもおかしいわね。あんた第6師団によってたんだから第78連隊にもよってたってことでしょ? 何で知らないの?」

「はぁ? どういうことだよ。挨拶回りしなかったかってことか。自慢ではないが今の大佐たちの中で俺より先輩はいないぞ。俺が下手に出る必要は…」

「そんなことは言ってないわ。ここ見なさいよ」


葛城が指差したのは細長い道だった。所々切られてる道。描いてるときミスったわけではなく本当に道が切られてるのだろう。おかげで俺の尾骶骨が破壊されるところだったしな。


「これがどうしたって」

「バカね。ちゃんと見てみ? この道は師団本部から第78連隊を通って第77連隊に繋がってるわ。つまり」

「ここに来るためには第78連隊による必要があったと?」

「そう」


でも俺はよってない。本部近くのタクシー乗り場からタクシーに乗ってここの近くまで来た。

俺の話を聞いてそれを補足したのはマーズだった。


「旦那、来るとき道が荒れてなかったか」

「めっちゃ荒れてた。何なのあれ。税金はどこへ行った」

「あーじゃやっぱ旦那は民間道路に乗ってたんだよ。あそこは道汚ねぇからなぁ」


民間道路か。なるほど。では納得だ。

今までの情報を積み上げると第77連隊は捨て駒だという結論になる。なら第77連隊へ繋ぐ道など使い道がない。道だけにな。

未知の()に占領されることによって民間道路も捨てられたのだ。


この世界には二つの道路が存在する。

一つは俺が通った民間道路。そして残りの一つが軍用道路だ。

民間道路を民間企業が管理するのと同じように軍用道路は軍が管理する。


「確かに第77連隊への道があの様なら軍用道路を使うのがいいし、検問のため第78連隊を通るのは筋が通っている」

「でしょ? むしろ旦那は何で民間道路なんか乗ったのさ」


そりゃタクシーに乗って来ただけなんだが。


「確かにタクシーなら民間道路を走るねぇ。路面整理が出来てないことを覗けば安いしな」

「むしろ(エネミー)と遭遇してなかったのは運が良かったとしかいえないね」


俺たちの話を聞いた自由の乙女がそう評価した。

敵、通称「エネミー」。文字の意味どおりあれらは全部全人類の敵だ。最初は未確認不定型生物だの地球外生命体だの色んな憶測や勝手な命名が行われたが、やつらと地球をめぐって繰り広がれた10年の戦争を経て人類が得た情報は「分からない」だけだった。

やつらの生態は勿論のこと、どうやって数を増やすか、何を目的で人類だけを攻撃するのかなど。

疑問は増えていくばかりで何も得られなかった。

そして人類は共生への道を捨て敵を一匹も残さずこの地球から消すことを選んだ。


「で、指揮官。どうするの?」


自由の乙女の質問とあわせみんなの視線が俺に向けられる。

どうするかって。そんなの決まっている。最優先すべき案件は武装人形マウスを修復させることだ。


「第56連隊に向かう」

「何でよ。ドックを借りるだけなら第78連隊でも出来るはずよ」


俺の指針を聞いた葛城がそう聞く。他の娘たちも同じ意見らしい。


「よく聞け。お前らの元指揮官が戦死したときもお前らの基地がこんな有様になって尚、第78連隊は動きを見せなかった」

「......」

「消えていったお前らの先輩たちもそれを見込んで最後まで第78連隊に縋らなかったはずだ。それに本部がそれらを黙認してること自体が更々おかしい。グルと見て妥当だろ」

「そう...かも」


人間から捨てられたかもしれないという事実で気を落とす人形たち。


「だとしたらおかしくないかい、指揮官?」

「というと?」

「第56連隊もグルである可能性が高いのでは? 同じ第6師団だし」


自由の乙女の質問に葛城やアイゼンも頷く。まぁ普通ならそう思うわな。

でも少しだけ考えたら答えは出る。


「地図を見てみ」

「?」

「指揮官が着任するときどの道を使う?」

「そりゃみんな空の道で本部に向かって第78連隊を通ってここに来る」

「そうだ。でも俺は空でも陸でもない海できた」

「だからタクシーで着たのか!」

「そういうことになるな」


普通にヘーリーや輸送機に乗ってきたら本部直轄の滑走路を浸かることになる。だが俺は船で来た。一度飛行機に乗って墜落しかけた体験があってどうも空を飛ぶ乗り物は苦手だったからだ。


「でもそれだけで第56連隊を信頼するのは早計じゃないかしら」

「別に早計なわけでもないぞ」

「どういうこと?」

「きっと俺の予想が正しかったとしたら、元から第6師団は第76連隊から第78連隊に数字が連番だったはずさ。この地図を見たら分かる」

「あ!」


俺が指した地図の図面を見てみんな理解したみたいだ。


「見づらいけどちゃんと見たら分かるぞ」


既に敵に占領された地域には元第76連隊の敷地らしきものがかすかに描かれていた。


「第56連隊は後になって再編入されたはずさ」

「そうかもね」

「だから怪しさが半端ない第78連隊や本部よりはマシだということ。海できた俺を第78連隊に行かせるような素振りも見えなかったし。多分第6師団の管理がまだ第56連隊には及んでいないだろう」

「......」

「何よりマウスが危ないそうだろ?」

「そうね」


俺の説明に何となく納得したのか皆が覚悟し始めた。

これから作戦に向かっての俺に命令が決まる。いきなりハードモードからのリプレイになったけど、ゲーマーならこれもこれで乙なものだろう。


「これから民間道路を使って第56連隊に向かう。今の補給状態で武装(アーム)は邪魔でしかないから小銃でも拳銃でもいい、とにかく軽いやつを装備しろ」

「「はい!」」

「出発時刻は今から20分後。日が暮れた以上戦闘時の不利は避けられない。各自で夜間スコープを十分装備すること」

「「はい!」」

「作戦指示とマウスを背負う役割は俺が担う。葛城は俺の補佐」

「わかったわ!」


自分の陸での戦闘力が最低だということを理解しているせいか戦いたいと駄々をこねてこなかった。こねてきても聞く気はないがな。


「すまないが弾薬やその他諸々はマーズが担ってくれ」

「勿論さ旦那! 力仕事は任せてくれ」


俺の指示にマーズが気持ちいい笑顔で答える。


「先鋒はアイズンとタマ」

「タマって?」

「猫ちゃんに決まってるだろ」

「...それが私の名前?」

「安直で悪いと思ってるがそれしか浮かんでこなかったわ」

「いい。これでいい」

「そ、そうか」


あまり気にしないタイプだったみたいだ。むしろ猫のしっぽをまっすぐ伸ばしているから気に入ったのではないだろうか。


「二人は前方で敵とそれ以外を見分けし、敵と分かったら俺に指示を仰いでくれ。でもそんな余裕がないなら各自の判断で発砲しても構わん」

「はい!」「...了解」


相変わらずの無口無表情なタマと違ってアイゼンはやる気に満ちていた。


「最後は」

「僕だね、指揮官」

「ああ。最後尾頼むわ」

「任せて」


こんな集団作戦で指揮塔と同等に大事な役割が最後尾だ。てきが追跡してくるときに殿を務めたり列から落ち零れた者を拾ったりするのである程度練度が高いものが勤まる役割だ。


「一直線上の道だし移動もそれに沿うからこの陣形は必然だということもわかる。でも指揮官。側面からの攻撃には脆いでは? 指揮官が危ない」


当然な自由の乙女の指摘。そうだ。この陣形は側面からの攻撃に脆い。

だが、俺を単純なひよこ指揮官と見間違っちゃ困るね。

脇の下に隠しておいた拳銃を見せて笑って見せた


「これでも俺は大佐だぞ。戦闘経験はこの中で一番さ」

「ふふ、じゃ信じてみるよ」

「おうよ」


では


「各自準備にはいれ。15分後ここに集合。いいな」

「「はい!」」


初めてはチュートリアルであるはずだと高を括っていたがまさかこんなことになろうとは夢にも思わなかった。まさかのハードモードだけど、ネオワールドウォーオンラインはこれで3週目になるのでね。

まず第56連隊にいってから真相を確かめてやる。部隊運営はそのあとだ。


仕事で忙しかったり病気を患ったりして筆を取る気にならなかったですが

何となく書くことができました。

宜しくお願いします。

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