第6話 えっと…にゃあ?
ひとしきり泣き、ラークも気持ちが落ち着いたようであり、馬車の中で第一部隊の隊員たちと歓談を楽しんでいた。そんな中グリューナクはネックレスのことが気になったようだ。
「ラーク、すまないがそのネックレスを見せてもらえないだろうか。古代遺物収集の任を与えられているものとしてちょっとだけそのネックレス…というよりもその二つの指輪が気になってしまってね」
ラークは快くネックレスから指輪を外し、グリューナクに手渡した。グリューナクはその指輪を『古代遺物の真名』の端末にかざしてみた
『ピピッ!』
グリューナクの勘はどうやら当たっていたようでその指輪は古代遺物であることが判明した。しかし、『百の大槌』を鑑定した時とは少し反応が違っているようだ。
『ピピピッ! ニャア! ミーティアナンバー 22222 マシュノソウリン コウカ キンノユビワ ハ マリョク ヲ タメル ソノソウリョウ ハ サイダイ ヒャク ギンノユビワ ハ マホウハツドウジ ノ マリョクショウヒ ヲ ランダム ニ テイゲンスル ソノテイゲンリョウ ハ ゼロ カラ キュウジュウキュウ パーセント ナオ キンノユビワ ハ タメタマリョク ヲ ジュッカイ ニ イッカイ ノ ワリアイデシカ ホウシュツシナイ ギンノユビワ モ コウカ ノ ハツドウ ハ ジュッカイ ニ イッカイ ノ ワリアイ コノユビワタチ ハ ショユウシャ ヲ モトメテイル ニャア!』
ラークはその効果云々の前に心の赴くままツッコんでしまった。
「え!?いまコイツ『にゃあ』って言った!?猫なのかコイツ。いやでもあのバカデカハンマーを調べたときには『にゃあ』なんて言ってなかったような」
グリューナクは自身の勘が当たったことに安堵すると同時にこの古代遺物が想定外のものであったことに驚きを隠せないでいた。
「驚いた…古代遺物だとは思っていたが、まさか『ニャーティア』だったなんて!」
ラークはグリューナクの言葉に耳を疑い速攻でグリューナクの方に振り向いた。
「え、今グリューナクさんも『にゃあ』って言った!?しかも超真顔で!?帝都ってのは猫を真顔で愛でる文化でもあるんすか?」
ラークの視線に気が付いたグリューナクは照れくさそうな笑顔をしながら今起きていたことについて説明を始めた。
「ああ、すまない。君のことをすっかり置いてけぼりにしてしまっていたね。ちょっと珍しい古代遺物だったから私も驚いてしまったんだよ。
今の反応からしてこの指輪は二つで一つの古代遺物『魔手の双輪』というものらしい。魔法発動を手助けするものだけど、かなりの癖があるみたいだね。
それよりも私としてはこれがゾロ目の古代遺物であることの方が重要かな。ゾロ目の古代遺物は誰でも扱えるものではなくて『所有者を選ぶ』性質があるんだ。その気まぐれさはまるで猫のようだと揶揄されていて、調べるときには必ず『にゃあ』と端末が叫ぶから通称『ニャーティア』なんて呼ばれているのさ。
ちなみに皇帝陛下がかぶっている冠も実はニャーティアだったりするんだよ。皇帝陛下は『威厳が損なわれるからこの冠をニャーティアと呼ぶな!猫の皇帝なんてあだ名がついたら恥ずかしいじゃないか!』って言ってたりするけどね」
皇帝陛下の単語が聞こえてきたためラークは驚いてしまい、返された指輪をおずおずとグリューナクに差し出した。
「ヒェッ!こ、こ、こ、皇帝陛下愛用の品だったの!?あ、これ、お返しします。長年窃盗していたからって打ち首になったりしない!?ねえ、大丈夫!?」
ラークの行動を見てグリューナクはくすっと笑ってしまったが、指輪を受け取ることはなかった。
「フフッ。大丈夫、当代の皇帝陛下が偶然ニャーティアの所有者として選ばれただけでニャーティアのすべてが皇帝陛下の者ではないから安心して良いよ。危険な古代遺物なら回収も我々の任務だけど、その指輪はそういった代物ではないから君が持っておくといい」
記録を取るグリューナクにラークはふと思ったことを質問してみた。
「そういえば帝国騎士団の任務に『古代遺物の管理がある』って言ってたけど、本当に回収しなくても大丈夫なんですか?騎士団が全部管理していた方が危険とか少ないと思うんだけど…ほら、百の大槌だっけ?あれだって確率はすごく低いとはいえ最大で100倍の威力が出る結構危険なものなんじゃないですか?」
記録を取りつつグリューナクはその質問に答えた。
「そうだね。理想を言うならすべての古代遺物を騎士団の倉庫かどこかに集めたほうがいいとは思う。でも、古代遺物は推定で10万あるといわれているから、純粋に保管するためのスペースがないんだ。もちろん民間人が持っていて危険なものは騎士団が管理しているよ?でも、きちんと管理された状態の古代遺物であれば問題ないという認識になっている。だから『どこで管理されているのか』ということを記録するだけで問題ないんだ。
あと、『危険かどうか』の判断基準は『何もしてなくても被害を出す可能性があるかどうか』なんだよね。例えば百の大槌は間違いなく『人に向けて使えば』危険なものだ。でもそれは普段料理に使う包丁も言えること。正しく使えば便利な道具だが、人に向ければ立派な凶器、その道具そのものに危険性がなければあとはそれを人がどう使うか次第さ」
ラークはその言葉を聞いて頷きつつ納得した表情をしている。そしてふと視線を下の方にやった時、馬車の床にきらりと光る何かが見えた気がした。
「うん?なんか光るもの?ラマンドルおじさんが持たせてくれたお小遣いが落ちちゃったのか?」
ラークはその光る何かを拾おうと手を伸ばす。
「ぬおおあああ!なんじゃこりゃあ!」
ラークの大絶叫を聞いたグリューナクは驚いて記録の手を止めラークの方に向いた。
「どうしたラーク!もしかして敵襲…か…?」
グリューナクは自身の見た光景を疑った。なぜなら今まで所有者がいなかったはずの魔手の双輪がラークの右手と左手の薬指に装着されているのだ。そしてラークは指輪がはまっていること以上の「ナニか」に驚いているようだ。
「俺の手に指輪が?」
「やっと見つけたぞ…にゃあ」
「私たちのご主人様にゃあ!」
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