プロローグ 人生最悪の日
人生とは時に運に弄ばれるものである。
「人生を運に振り回されてたまるかよ!俺はこの手で未来を掴む!」
人生を運に振り回されないために筋トレをする少年。名をラークという。まあ意気込みは良いのだが、既に息が上がっている様子だ。
「ハア、ハア、い、今に見てろよ…!俺のことを『ドラゴンから出たトカゲ』とか言いやがったやつらめ…!明日の成人の儀の時には…!絶対に馬鹿にされない最強のスキルを貰ってやるからな…っ!そんでもって…いつか…!俺のことを置いていったあのバカ親父を殴り飛ばしてやる!それまでは…っ!死ぬほど鍛錬あるのみ!死んじゃあ意味ないけどな!っとお、ウォーミングアップ終了!さてと、素振り用の剣はどこに行ったかな…」
町の面積の7割が畑となっているのどかな町【ラムア】。朝の陽ざしが優しく差し込み住民たちは徐々に活動を開始する。そんな静寂の中ラークは一人鍛錬に励んでいるのだが…
「んににに…!あ、あれ?素振り用の剣こんなに重かったか?まあいいか。いよっし!目標回数30回!いってみよー!」
「ラーク?そこまでにしておきなさい」
1人の男性が家の中から出てきてラークに声をかけた。彼の名はラマンドル。ラムアの町で薬屋を営む男性で、ラークの叔父兼育ての親である。
「普段素振りをしているはずの剣が重たく感じるということは君の筋肉はもう限界ということ。今日の午後の鍛錬はやめにしなさい。これ以上やれば明日の成人の儀に出られなくなってしまうぞ?
鍛錬の代わりと言っては何だが午後からは薬草採取の手伝いをしてくれるかい?」
ラークは口をとんがらせながらも渋々家の中に入り、汗を流すため風呂場に向かった。
「ヘイヘイ。おじさんの言うこと聞かないと後で薬の実験台にされるから言うこと聞きますヨーダ」
風呂場に向かうラークと共に家に入ったラマンドルは朝食の準備をしている妻に声をかける。
「おいフェイル。ラークの風呂上りに薬湯を飲ませるから湯を準備しておいてくれ。私は薬の準備をしておこう」
聞き捨てならない言葉を聞いたラークは慌ててキッチンに走ってきた。
「ダーッ!おじさんやめて!薬の実験台にしないでって言ったじゃん!言うこと聞くって言ったじゃん!おばさんも淡々とお湯の準備やめてよお!筋トレも含めて今日は鍛錬しないから!ちゃんと薬屋の手伝いするから!」
ラークの慌てふためく姿を見てラマンドルもフェイルも吹き出してしまった。
「あっははは!この薬湯は筋肉痛に効くものさ。毒物じゃないから安心しなさい。って、ラーク、そういうことを言うってことは鍛錬をこっそりするつもりだったのかい?そうなると薬湯の成分をアレとかコレとかに変えなきゃいかんかな?」
そう言うとラマンドルは明らかに危ない色をした薬草の入った瓶を見せつけるようにしてきた。だが、その顔はにこやかであり決して本気ではない。しかし、隠れて鍛錬をしようとしていたことを自白してしまったラークはその場でへたり込んで苦笑いを浮かべるほかなかった。
「ハ、ハハッ…こりゃツイてないぜ」
翌朝ラークは『成人の儀』を受けるためパリッとした一張羅を着て教会に来ていた。
「ようラーク!おまえ、いいスキル貰えると良いな!」
「なにせ君のステータスはもやしとタメを張るレベルですからねえ」
「おうアーガス。たまにはいいこと言うじゃねえか。って、シレモロは余計なこと言うんじゃねえよ!」
成人の儀では15歳になった少年たちを大人として認めるだけではなく神父による祝福の祈りと共に「ユニークスキル」というものが授けられる。このユニークスキルというものは女神ニュンベルが人々に必ず一つ与えるものであり、その人の将来の道しるべともいえるものなのである。
「…では続いてユニークスキル授与の時に移行する!新成人たちは前へ!」
ながったらしい神父の説教を乗り越えてついにメインイベントがやってきた。一人ずつ神父とニュンベル像の前にひざまずいて祈りの姿勢を取る。その姿勢を確認した神父が彼らの頭の上に手を置き祝福の言葉を述べると共に各々ユニークスキルが授けられる。
女神に仕える神父だとしても彼らにどんなスキルが授けられたのかまでは神託として知ることはない。そう、例外を除いて…
「…女神の力の一端を分け与えたまえ。スキル授与!…お?この反応は?なんだ!?いまだかつてないほどに女神からの力を感じる!ラークよ!そなたに神託が下った!このユニークスキルは世界を一変させるだけの力がある!皆の衆心して聞くが良い!彼のものに与えられしスキルの名は【隠しステータス】である!」
神父はラークにかざしている手からすさまじい女神の力を感じ、教会に集まった人たちを静まらせ、大々的に神の神託としてスキル名を宣言をしたのであるが…
「…【隠しステータス】?」
神父は自身の口から出た言葉に首を傾げざるを得なかった。それもそのはず、この世界では念じれば自分や他者のステータスを確認できるのであるが、プライバシーに配慮してなのか基礎ステータスとユニークスキルを除く項目は隠すことができるのである。もちろん「隠しているステータスorスキル」があるということはばれてしまうのだが、ステータスを隠すということは誰でもできる『スキルですらない』普通のことなのである。
教会内に一瞬の静寂とどよめきが走った。だが、この出来事に最も衝撃を受けていたのは他ならないラーク自身であった。今起きていることへの理解が全く追い付かず、真顔に目が点、口は△の形のまましばらく動けずにいた。
「え…?は…?俺の最高で最強のスキルは…?」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
続きが気になると思ってくださったら、下部のブックマークに追加や評価で応援していただけると、執筆の励みになります!




