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エルマーの案件 最終話 (全4回)

「これ内緒ですからね!

お父さん、お母さんに

これを見せると『どうぶつ島』に

行ったかどうかを根掘り葉掘り

聞かれるんです。

すごく心配しちゃうので…

言わないでくださいね」


「いや…言うね」

とエルマー。


「え?!そんな!」


コマオのビックリした表情。

ボリスはムッとしてエルマーに言う。


「なんで、そんな意地悪を言うの!?

エルマーらしくない!内緒にしてよ!」


「心配させたくないから内緒にする。

そうだね、内緒にした方がいいかもね…」


エルマーは真剣な顔で少し下を向いた。

そしてボリスとコマオを斜めに見上げながら、人差し指をビシッと突きつけた。


「だが、ことわるッ!!」


「「 なんでぇー!? 」」


「はははは!ごめんごめん!

別に意地悪してるんじゃないよ。

お父さん、お母さんには話して

おくべきだよ。

コマオくんの結界としてね」


エルマーは笑った。


「結界に!?…いや…でも、

攻撃力はありませんよ?」


コマオは不思議そうに聞く。


「どうして攻撃力が必要なの?」


エルマーは続ける。


「そらいろ高原を守るって、

人間をやっつけることだっけ?」


「…あ…そうですね。

お父さんの結界も……」


「そう、君のお父さんだって

侵入してきた人を追い返すだけ。

ねぇ、コマオくん。ボリス。

こんな作戦はどうかな?」


作戦を聞いて、

コマオは目をぱちぱちさせた。

ボリスは笑った。


_____次の日______


「私たちが侵入者役だぞー」


そらいろ高原と、

ごびごび砂漠の境界線。

そこに魔王の家族以外のマオ族が集結。

手を振っていた。

2人が女性。3人が男性。

普段はクワや鎌、肥料などを魔法で

生成している5人だ。

農具の具現化以外の魔法は

得意ではないそうだ。


魔王は体調を考慮し、ラセツが

押す車椅子で見守っている。


エルマー、コマオは

少し離れた場所から5人を見ている。

ボリスは上空から見ていた。


「じゃあ皆さん!

こっちに向かってきてくださーい!」


エルマーが大きな声を出す。


「承知した!」


マオ族の5人は悪そうな顔を作り、

そらいろ高原へ進撃してきた。


「ぐわーっはっはっは!悪い人間だー!

りゅうを捕まえに来たぞー!」


エルマーとボリスは役作りの下手さを

見て、いい人たちなんだろうなーと感じた。

コマオは手のひらを向けた。


5人の前に『ぴょん』!

1羽のウサギが出た。


「あら、かわいい」


女性の1人が反応する。


すぐに、ぴょん。ぴょん。

ぴょこ。ぴょこ。と連続して

ウサギとカエルが現れる。


「カエルちゃんも!かわいい!」

「いや、私はカエル苦手だなぁ」


5人がそれぞれの思いを声にしている

間に、10,000匹のカエル。

10,000羽のウサギが並んだ。


「なにこれ?」「すごい」「……圧巻……」


立ちすくむ5人の靴にカエルが突撃

してくる。ゲコゲコゲコ!


「「 うわあああ 」」


ゲコゲコゲコ!ぬるっぬるっ!


「「 えええええええ!? 」」


カエルで足払いされた5人を

ウサギたちがフワッと持ち上げる。

ぬるっ!ピョン!フワッ!

まるでトランポリンの波だ。


「「うわわわわわわ」」


トスーン!


カエルとウサギの荒波に飲まれた

5人は、いとも簡単に出発点へ戻された。


ラセツの肩が震えている。

顔を覆って笑っている。


「これは……」


魔王は笑っていない。

ただただ驚いている。


ボリスは上空から叫んだ。


「波の長さの10分の1以下だったー!」


「オッケー!ボリス、ありがとう!」


エルマーは答えた。


ウサギとカエルで作った

荒波の長さは約100メートル。

つまり侵入者役は10メートルに満たない

距離で追い出されてしまった。


「あ、あの、お父さん。どうかな?

僕の結界」


唖然(あぜん)とする魔王にコマオが

聞いた。


「なんてことだ。

こんなものを『結界』と呼べるものか……」


「えっ!?」

「ちょっと!あなた!」


泣きそうになるコマオとラセツ。


「はっ!いや、すまん!

驚きすぎて、言葉を間違えた!

これは『結界』どころではない。

『結界』のさらに上のレベル。

我が一族でも伝説の『切界(せっかい)』だ」


普段の優しい魔王の言葉に、

2人とも普通の表情に戻ったが、


「「せっかい?」」


どうやら初めて聞く言葉だったようだ。


「うむ。知らないのも無理はない……

あ!イタタタ……」


「お父さん!」

「あなた!大丈夫?!」


「うむ!興奮しすぎた!

切界については皆がいるところで話そう!」


___▶ログハウス魔王邸__


「痛くないのはいいけど、ぬるっぬるで

ザラっザラだよ」

「本当ねー、ひどいもんだわ。

でも、アタシ、ちょっと面白かった」

「いや、私はもう二度とごめんだ」


ウサギとカエルの荒波に飲まれた5人は

それぞれ魔王邸でシャワーを浴びたあと、

ふんわりしたタオルで身体を拭いた。


ウサギとカエルと人間が飛び跳ねる。


まるで着色された鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)

傍(はた)から見ると面白いが、巻き込まれた方は乗り物酔いみたいになるし、ヌルヌルになるし、最後は砂漠に出されてザラザラの衣(ころも)をつけられる。


痛くはないが、心を削られる。


ログハウスのリビング。

長く広いテーブルの中央に魔王が座っている。


字面だけ見ると無駄に大きい玉座に

座っているようだが、

背もたれのある普通の木製イスに座っている。


ラセツ、コマオ、エルマーも座っていた。

ボリスはエルマーの横で4本の足をくずし、

リラックスしている。


ガチャ。ドアが開く。


「お待たせしましたー」

「コマオくん!本当、すごいねー!」

「なかなかスリリングな体験でしたー」


身体を洗って着替えた5人がリビングに

入ってきた。

そして、空いている席に座る。


皆が座ったのを確認し、魔王は話し始めた。


「皆さん、お疲れ様でした。

今回はご協力ありがとうございました」


礼儀正しい。『皆の者、ご苦労だった』って

言いそうな外見なのに、面白い。

とエルマーは思った。


「今から皆さんに『切界』について

お話します。こちらをご覧ください」


テーブルにトン!と魔王は

フリップを置いた。

魔法で作ったフリップではなく、

自分で手書きしていた。


「『切界』という言葉、知らない方も多いと思いますが、それもそのはず。

我が一族に伝わる秘中の秘であります。

どういうことかと申しますと……」


さすが元科学者。プレゼンが上手い。

ただ、難しい単語もところどころあった。


要約すると、

本来、体に反映されるはずの思念体を、

体の外に反映させる能力。


突き詰めれば、何でも生み出せる。

神になりうる秘技だという。


幸か不幸か、今のコマオに生み出せるのは、

自分が好きで観察し、詳細まで

把握したものだけ。


しかも、具現化したものは

魔王とラセツの高度な魔力探知にも

引っかからない。


わずかな魔力と思念体で、圧倒的な物量を

生み出せる。

つまり、人間の魔法や魔道具では、

対処することすら難しい。


世界を断絶してしまうほど異質で、

世界をそこで切ってしまうほどの力だから

『切界(せっかい)』と呼ばれてきた。


魔王は今の結界を今日中に解除し、

ラセツの治療を受けることを宣言。


侵入者の有無の確認は、皆に協力を

お願いしたい、とのことだった。


「なんか難しい言葉は、

よくわかんなかったけど〜、

『切界』だっけ?」


ボリスが笑顔で言う。


「コマオの『おせっかい』が

高原を救ったってことでいい?」


「ボリス!言い方がわるい!」


コマオが思わずツッコむ。


「『お』をつけてるから丁寧でしょ?」


「なにそれ!?」


ボリスとコマオのやり取りに一同が笑った。


_____▶︎湖のほとり______


エルマーが帰路へ出発する5分前。

エルマーとボリスは

湖のほとりで談笑していた。


「エルマーさん!」


コマオが走ってきた。


「エルマーさん!

もう帰っちゃうんですか!?」


「うん、もう帰るよ。ぼくの方からも……」


そこで、エルマーは言葉を切った。


39歳になったエルマーは、

ドラゴンの抜けた歯や、ヨダレ、糞などを

利用して街で財を成していた。


今まではその財力を使って

何かを成すことに面白みを感じられず、

むしろ億劫(おっくう)に思っていた。


だが、今回のコマオの頑張りを見て、

侵入者を自分なりの方法でも

防ごうと思った。


王様やお偉方に働きかけよう。

必要なら財産を使ってもいい。


『ドラゴン狩り禁止令。ドラゴンを

狩ろうとする者には金貨100万枚の罰金』


そんな法律を作ってもらおうと

思い立ったのだ。


エルマーは笑顔で言った。


「実は、ぼくなりの『お切界』を

つくろうと思ってね」


「なんですか、それ!?

ボリスの真似ですか?」


コマオも笑顔になった。


「うん。ありがとう。

ぼくはコマオくんのおかげで、

少し大きくなれた気がする」


「え!?そうなんですか?!

あ!ちなみに僕は思念体と魔力を使う

練習を重ねるので、

当分このままの大きさらしいです!」


「え?そうなの?!当分って?」


「200年ぐらいです」


「ハハハハハ!」


エルマーは笑いながらも

頭によぎってしまった。


200年後に自分はいない。


寿命の長さが生物によって違うのは

しょうがない。


コマオが人間を好きになり、

『切界』を極めたとしたら、

人間の細胞に干渉し、

不老不死も可能かもしれない。


だが、それは世界のバランスを崩す。


ボリスじゃなくても口を挟みたくなるような

『お節介』に他ならない。


魔王やコマオ、ボリスの

長い長い歴史の本があるとしたら、

ぼくはその本の何ページ分になるのだろう?


栞(しおり)や付箋(ふせん)が

ついているといいな。


そんな不安や哀愁を

表情に出さないこともできるぐらい

大人になってしまった。


「ハハハハハ!!」


39歳のエルマーは、さらに笑みを強めた。


「絶対、また遊びに来てくださいね!」


コマオはキラキラした目でエルマーに

訴える。


「うん!またね!」

「コマオ、またあとでねー!」


エルマーとボリスが答える。


精神的に大きく成長したコマオは、

外見的に1ミリも大きくなって

…いない。


『いない』が形容詞かどうかは

どうでもいいのかもしれない。


それぞれが自然なカタチで

楽しくあること。


それでいい。


それがいい。そういう世界。


そらいろ高原の湖は、

空を飛ぶエルマーとボリスを

水面に少しだけ映した。


〜完〜

ここまでお読みいただき、

ありがとうございました!

エルマーもボリスもコマオも

キャラ的に一人称が、みんな「ぼく」

なんです。エルマーは「ぼく」

ボリスは「ボク」、コマオは「僕」と

読みやすくするマイルールを決めたんですが、

厳守できてないかも。

中世風に仕上げたかったのに、私の学の無さから、すっごい日本よりになってしまった!

なんでしょうね、「魚」の4つ点眉毛とか、

鳥獣戯画って( ´ㅁ` ;)


自己反省も多々ありますが、

一応の完結ができて、なによりです。

ここまで、お読みいただき、

改めて…

ありがとうございますぅぅぅッッッ!!

˚‧·(´ฅωฅ`)‧º·

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