瀾(二)
「どうする気だよ?」
「1つだけ……手が有ります。……最後の手段ですが……。ヤツの言う『ゲーム』の『ルール』を一瞬で無効化する方法が……」
私と桜さんは……泥水の中を歩き続ける。
辺りには……逃げ遅れたヤクザ達の死骸。
桜さんは強化服の背中に有った大型アームを除装していた。
その大型アームで持つ事を想定して作られたガトリング砲を2人がかりで運んでいる。
私の体も……2度も「火事場の馬鹿力」を無理矢理引き出した以上……痛みは鎮痛剤で押えているから何とか動ける状態だ。
「でも……ここまでのフザケた真似が出来る相手を……どうやって倒すんだ?」
「いくらでも……核兵器を使うとか……」
「あのなぁ……真面目に聞いてんだぞ」
「攻撃力は怪獣並でも……体は普通の人間です。『怪獣一匹倒す為なら……何十万人が巻き添えになっても知った事か』……そう考える事が出来るクソ野郎なら……ヤツを殺せます」
「おい……ちょっと待て……あ、そうか……」
「そうです……。人に混って町中に居る怪獣とは戦う事さえ迂闊には出来ない。そんな事をすれば……確実に一般市民が巻き添えを喰らう。けど……もう……この辺りからは、一般市民は退避している」
「じゃあ……その……お前なら、どうする」
「この状況なら……ええっと……駄目だ……火薬か何かが要る……」
「えっ?」
「一番簡単なのは……ヤツが駅に入ってくれるなら……駅の建物ごと爆破とかですが……」
その時……この状況では一番聞きたくない声が直接通信で入って来た。
『瀾……「おっちゃん」の言った通り……逃げているんだろうな?』
「えっと……映像送ります。ちょっと移動が困難な状況なので……」
後が恐いが……どうせ、ここまでやらかした以上、もう少しばかりマズい真似をしても……その後の運命に大した違いは無いだろう……。
もっとも、生きて帰れたらの話だが……。