57 シャノンシシリー公国
シャノンシシリー公国
帝都の北西部、フォード公国の南側に位置している公国である。
帝国内で、各国の権力差は表向きにはない。皇帝という絶対的統治者の元、一つにまとまる必要があるからだ。けれども、それはもちろん「表向き」。
実際には、帝都>「天使の血筋」が治める国>その他の国 で、また「各国王家の統治期間の長さ」で帝国内の力に順位があるというのが暗黙の了解だ。
そしてこのシャノンシシリー公国は、帝国内でも一、二を争うほど権力のある公国だと認識されている。
その理由は単純明快・・・
「え?じゃあこの国は「シャノン」と「シシリー」っていう二人の天使の血筋が最初に建国した国ってこと?」
『うん。その二人が結婚してこの国を興したんだ。しかも帝国ができて比較的早い段階で建国したから統治期間も他より長い。』
「あ~なるほどな。ただでさえ「天使の血筋」が治める国の方が権力があるのにそれも二人もいて、しかも統治期間が他より長い。……今言った条件と照らし合わせるなら、最も権力のある国になるな。」
『そういうこと。しかも国は平和で豊か。軍のレベルも高い。ある意味、最も帝都に近い国だね。』
「ほぉ~~~」
シリウスからそのような説明を受けた。双子は一生懸命聞いてなんとか理解しようとしている。可愛い。
シャノンシシリー公国の首都の名も、そのまま「シャノンシシリー」。
俺たちは今、その街の全貌を見下ろせる丘に着いたところだった。
「うわ~すっげぇ!!あれか?あれが湖!??」
『そうだよ。帝国最大の湖、イミタラッサです!!』
「うわ~…すごいね…!」
『ねぇねぇシリウス!あの大きい木は?!』
「おお!ほんとだ!大きすぎて全然気づかなかった!え、待って。大きすぎないか?!」
シャノンシシリーの街は湖のすぐ近くにあり、その巨大な湖の中に小さい島があった。そしてそこには天にも届きそうなくらい大きい樹が存在していた。
『あの木は「リノスペレンナ」だよ!帝国ができるより前に植えたんだよ。今、あの木は天空に繋がっているとも考えられていて、一つの信仰の対象にもなってるんだ。』
「へぇ~いやあ説得力あるなぁ!あんなに大きいと」
「すごい…!!!!」
『あの島行きたい!行こ行こ!!』
『残念だけど、あの島に行けるのはシャノンシシリー大公から許可をもらった人だけなんだよ』
「『「 えー……… 」』」
俺も双子も残念そうな声を出す。せっかくだから行きたかった…。
『あの樹は世界の全てをずっと見てきた「世界樹」だ。あの樹自体が歴史だと思ってもいい。だからこそ帝国民…特にあの樹の近くに住んでいる民はあの樹をとても神聖視しているんだ。……残念だけど、理由がないと大公ですらあの島には行けないんだよ』
シリウスが笑顔の冷たい顔で、まるで信仰自体を馬鹿にするかのようにそう言った。どうしてそんな言い方をするのかは、よくわからない。
そしてすぐにいつもの表情に戻り、俺ら三人に元気よく言った。
『さぁ!じゃあ街に降りてみよう!湖には行けるから!』
『わ~い!!!』
「行く行く!」
「……よぉし!行くか!!」
・・・
この街も他と同じように家の壁や屋根の色が統一されている。シャノンシシリーは壁が青色で屋根が鉄色に近い色だ。青の色は家々によって多少異なるがそれが逆に街並みを鮮やかさにしている。
『この街は湖から取った魚介が有名だよ。あと貝や魚の鱗で作られた装飾品とかも有名だね』
『えー!!!レベッカ欲しい!』
『はいはい。街でいいの見つけたら教えてね』
『うん!!』
「レイは?何か欲しいのないのか?」
「んー……魚食べたい。」
「あーそうか。シド国出てから食べてないもんなぁ」
何度も言っているかもしれないが、陸より海の方が芸獣が強く、その上芸獣との対戦が水の上になるため、帝国で漁はあまり行われていない。基本みんな肉しか食べない。一部…例えばシド国なんかは例外的に漁が盛んだった。
そして黒の一族は逆に漁のみを行っていた。二人とも全く文句を言わなかったが、ずっと食べ慣れない肉料理でしんどかったかもしれない。
「おぉし!歩きながら美味しそうな魚料理の店も探そっか!」
「いいの?」
「当たり前だろ?俺も久しぶりに魚食べたいからな!」
俺がレイの頭を撫でながら答えると、レイは嬉しそうに笑って礼を言った。
・・・
「そういやシリウス、今日どこに泊まる?どこかおすすめの宿ある?」
俺ら四人は美味しそうな魚料理と貝料理を出す店に入り、少し遅めの昼食を取っていた。オリーブ油で野菜、魚、貝を蒸し焼きにした一皿や小魚の乗っている平なパリパリパン、パエリアなどを食べながらシリウスに問いかけた。
『あ。ここに僕の家あるから大丈夫。』
「あ、そう。…って、え???ここにもあるの?!」
『うん。持ってる家の一つ。』
「ファ?!!!!!」
なんだこいつ。
なんだこいつ!!!!
当たり前感出しやがって!
俺が内心キレ散らかしていると、レイがシリウスに問うた。
「シリウスお家持ってるの?」
『ああ。もう少し先の方にあるよ』
『えー!すごーい!』
「お前はなんでそんなにお金あるんだよ!?」
俺の純粋な疑問にシリウスはニタリといやらしく笑って答えた。
『前も言ったけど、持つべきものは金持ちの友達なんだよ。』
あーあーあー
聞きたくなーい。
こいつ思ってるよりゲスい~
・・・
湖から数本離れた通りにある、御空色の壁に鉄色の屋根の三階建ての家にシリウスがノックをした。
コンコン
すると程なくして、小さくて可愛らしいおばあさんが出てきた。そのおばあさんはシリウスを見るとすぐに明るい笑顔になった。
『マルガ、ただいま。』
「…まぁ!!!!!シリウス様!!まぁまぁお帰りなさいな!まぁ~!あら、後ろの方々は?お客さん?」
『あぁ、彼らもここに泊まるよ。』
「まぁまぁ!わかりました。すぐにお部屋用意しましょうね!お昼は食べましたか?」
『ああ、食べてきたよ』
「じゃあ夕ご飯の具材買ってきませんとね!まぁまぁ忙しくなりますねぇ!」
『あはははっ。急でごめんね。』
「そんなのいいですよぉ!シリウス様がお帰りになられて嬉しいんですから!お三方、お名前を伺ってもよろしいかしらね?」
「あ、僕アグニです!」
『私レベッカです!』
「レイと申します」
俺ら三人、そのおばあさんに頭を下げる。すると、優しい笑顔で俺たちを迎えてくれた。
「まぁまぁみんな元気で!この家の管理をしております、マルガと申します。どうぞご滞在中はなんでも遠慮なく仰ってくださいな。」
「『「ありがとうございます!」』」
「それじゃとりあえず、応接間へご案内してよろしいですかねシリウス様?」
『ああ、頼むよ』
「かしこまりました。さぁさぁ!中に入って下さいな!すぐにお紅茶の用意もしますからね!」
ちょっと説明文が多くなってしまいましたね。
イメージ的に漠然と「地中海の街」って感じです。
なんとなくでも伝わりましたでしょうか?




