表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再創世記 ~その特徴は『天使の血筋』にあてはまらない~  作者: タナカデス
第1章 名はアグニ
27/268

27 決勝戦


初戦と同じような事を繰り返し、気づけば決勝戦進出が決まっていた。


振り返ってみると初戦の人は意外と強かったのかもしれない。8戦目までの人と同じくらいの強さだったから。



『どうした?緊張してるのかい?』


「あんまり。次は芸を出してもいいんだよな?」



決勝進出が決まり、大部屋から俺専用の小部屋に通された。

芸石や武器の調整を行うかららしい。


と言っても、俺の持ってる剣は芸石を取り付けられないから、首に付けて終わり。時間が余り、する事もないのでシリウスと座って待ってる状態だ。



シリウスは腕を組みながら答えた。


『うん。次は芸を出していいんだけど……解名(かいな)、つまり「ギフト」を使った芸は1つまでにしといたほうがいいかも』


   名前付きの芸って解名(かいな)って言うんだ。


「え、なんで?いっぱい使ったら変なの?」


『まぁ〜そうだねぇ。それぞれ向き不向きがあって、全部が得意って人は少ないから。例えば氷系が得意な人は炎系の芸ができなかったりするんだよ。』



「そうなんだ。じゃあいくつか絞って芸を出した方がいいんだな?」


『ああ。そうしてくれ。』


「わかった。気をつけとく」


ちょうどその時、係の人が来て呼ばれた。




   さぁー!決勝だ!


「行ってきます!!」


ガッツポーズを作ってそう言うと、シリウスはそれこそ『天使』のような笑顔で言ったのだった。



『ぶっ潰してこい』



・・・・・・・・・・



決勝の相手は筋肉の目立つ大人の男だった。


日焼けした肌に黒髪、黒目で長身。何よりも全体にバランスよく筋肉がついてる。ここまで見事な肉体ってことはたぶん軍人だろう。


短めの剣と同じくらい長さがありそうな穂の、十文字の槍で、柄の部分に赤、緑、青、黄色の芸石が付いていた。



『よろしくお願いします。』


「よろしくお願いします!」



互いに挨拶をして構えを取る。俺は中段に構え、向こうは槍を思い切り後ろに引いた。そのせいで相手の武器の様子が見えない。



『『   始め!!!!! 』』




審判の声と同時に、男は槍を前に突き出しながらこちらに走ってきた。

槍の周りに風が吹いてる。



一番最初に戦ったネズミの芸獣の事を思い出しながら、こちらはその場に留まる。


槍が俺の間合いに入り込んだ時、風の芸で思い切り右に避けた。


『っ!!??』


避けられるとは思わなかったのか、男が驚く。


   いや、さすがに避けますよ。死ぬやん。



俺は避けるついでに男の足元に少し氷を張っといた。


『くっ…!!!!』



戦闘中に足を滑らせるなんてことは実践なら確実に死に繋がるし、試合であっても相手に隙を見せてしまう。


もちろん、目の前の男もそれを知っている。



男は声を漏らしながら崩れた体勢を無理やり直し、その間もずっと槍を構え続けた。


   おぉ! さすが。


もちろん例え男が転んでも、その間は攻撃しないつもりでしたよ?さすがにね。試合だしね。



男はその後、槍に炎を纏わせた。


   おお……やりますねぇ……

   


何がやるのかっていうと、槍を持った男の間合いは俺より広い。俺がさっき自分の間合いギリギリまで引きつけて避けたことからこの方法に出たんだろう。



槍に炎を纏わせれば、槍の内側には入れないから確実に俺の間合いの外から攻撃ができるのだ。



「ほぉ…どーしましょーかねー…」



この槍で攻撃され続けたら俺は逃げ続けるしかない。


つまり体力切れと同時に勝敗が決まってしまう。



   んー…よし、いっそ当たってしまおう!!



試合の場合、当たってしまえば相手はその場で動きを止める。実戦ではないので殺すつもりでかかってきてないからだ。



   うん、唯一使う解名(かいな)は「治癒」にしよう!



俺は槍をほどほどに避けた後、自ら当たっていった。


男が俺のその様子に目を見張った。



    くっ………いってぇぇぇぇぇ!!!!



左脇が炎で焼け、全身を刺す痛みが生じる。


相手の男は案の定、炎を収め、俺から距離をとった。



「 っ……ギフト   治癒っ!」



俺の中から芸素が抜け、体の周りを金の粒が漂い怪我を負った部分を癒していく。



   あぁ〜生き返る〜練習しといてよかったぁ〜



怪我の部分を確認するとほとんど元に戻っていた。


視線を男の方に戻すと、顎が外れてるんじゃないかと言うくらい口を開けて驚いた顔をしていた。



   ……?治癒見るの初めてなのか?



けど俺はその様子に構うことなく風の芸で突進していった。

男ははっとし、我に返った様子で急いで槍で防御の姿勢を取ったが…



もちろん俺はそうすることも予測済みで

剣を槍に当て、武器ごと男を押し切る。



男はそのまま遠くに吹き飛ばされ、壁にぶつかって動きを止めた。



明らかに勝敗は決した。

なのに歓声はなく、静寂だった。



   あれ?・・・え、これなんの時間?

   もう帰っていいよね?いいよね?



「…あ、ありがとうございました~…」


俺はどうして良いのかわからず、そそくさと控室の方へ歩いてった…




・・・こうして決勝は終わり、



シリアドネ公国主催の武術大会は、

旅人の少年が優勝を飾るという異例の結果で幕を下ろしたのだった。







さぁ、優勝報酬をもらいましょう。


次はシリウス以外の「天使の血筋」と初対面です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ