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紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第4章 王国激動編

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剣聖との邂逅

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―――半崩壊した屋敷の扉から外へ歩み出てきた人影が二つ。


それはオリネシア=エックスとギャバン=ゴルゴダだった―――


背後の屋敷からは崩れ落ちたところに埃が舞い上がり、しかし屋敷の外で待機していたマイベン=ビュラー侯爵の兵三百は何故目の前の屋敷が崩れ落ちたのか、その原因は分からないでいた。


「お怪我はございませんか!」


兵達の中から隊長らしき男がオリネシアへ駆け寄り、負傷していないか確認を取る。


「ええ、大丈夫よ。中にいたハリタスの残党達は全員殲滅したわ」


「オォ……」


情報では元ハリタス海洋自治領の残党は百名はいたと聞いていた隊長は、屋敷に入って間もなく殲滅したといって戻ってきたオリネシア達に驚嘆する。


するとそこへ―――


「―――なんだ!?これは!屋敷が崩れているぞぉ!」


その屋敷の門外に集まってきた街の人々が、突然崩れた建物に驚きの声を上げて騒ぎが広がっていく。


「……面倒なことになりそうね。後は任せてもいいかしら?」


オリネシアはその様子を少し面倒そうに見つめて、隊長に後始末を頼んだ。


「承知致しました。後の事は御任せください」


隊長はもうこの様なことに慣れているのか、オリネシアの願いを承諾して道を開けるように兵達へ叫ぶ。


「―――道を開けろぉお!!」


号令を耳にした兵士達が一斉に左右へ別れると、その間に出来た道をオリネシアとギャバンは敷地の外へ向けて歩いていく。


そうして敷地の外へ出たところに集まっていた街の者達は、ギャバンの銀色の鎧を赤黒く染めている血の跡を見て顔を顰めながら後退りする。


「……」


「……」


オリネシアとギャバンはそんな扱いに慣れているといった様に、街の者達が退いた場所を抜けて通りに出ると、


「これは一体何があったの!?」


駆けつけてきた長い金髪に紅い髪の混じった真紅の瞳の美少女を目に止める。


その少女はオリネシアの前に立ち、そしてギャバンの鎧の血を見るとすぐに視線を鋭くした。


「……貴方達……その血……何をしてきたの?」


鋭い視線はそのままに、低い声でオリネシアとギャバンに問い掛けた少女を無視してオリネシアは歩みを続ける。


「ッ―――ちょっと待って!」


少女がそう言ってオリネシアの肩を掴もうとした時―――


「―――フンッ」


―――オリネシアは一瞬でその少女の手首を掴むと、眉間に不快感を表す皺を作りながらゆっくりと告げる。


「……気安く触らないで」


手首を掴まれた少女は、そのことに驚くというよりもオリネシアの顔をジッと見つめながら固まっている。


そしてゆっくりと震える唇を開くと―――


「……エリシラ」


―――その少女、


『紅神龍の御子』イェンリン=ロッソは連れ去られた妹の名をオリネシアに告げた―――






―――驚愕の表情を浮かべるイェンリン。


「……エリシラ」


目の前にいる少女は成長こそしているが、間違いなく妹であるエリシラ=ロッソだと確信して思わず名を呼ぶ。


「……人違いよ。私はそんな名前じゃない」


そう言い捨ててオリネシアはイェンリンの手首を放す。


「そんな!……ちょっと待って……貴方……マルク!貴方、マルクでしょう!!」


オリネシアの隣に従う血塗れの鎧を着た青年―――


―――ギャバン=ゴルゴダをマルクと呼び、更に驚きを隠せないイェンリン。


「二人とも!―――やっぱり生きていたのねぇ!!……ああ……良かった……」


(父さん……母さん……エリシラを護ってくれて……ありがとう)


イェンリンは両親に感謝の祈りを捧げながら、民衆がいても気にせずに涙ぐむ。


ゴルゴダ村でこの国の兵士に連れ去られていった妹が、まさかこれほど早く見つかると思っていなかったイェンリン。


それはきっと両親の導きに違いないと、イェンリンは溢れ出す感情を抑えることが出来ない。


しかし、そんなイェンリンに向けられたオリネシアの言葉は、


「……変な子ね……人違いした上に涙まで浮かべて……頭がおかしいのかしら?」


期待していた言葉とは裏腹に、氷のように冷たい視線と心無い言葉の共演だった。


「……えっ?」


しかしオリネシアの返事はまさに他人に対する台詞であり、そこには嘘を言っている様子は微塵も感じられなかった。


そのことが余計にイェンリンを困惑させていく。


「―――おい、イェンリン。大丈夫か?」


そこへ後を追ってきたブリュンヒルデがイェンリンの肩を揺すって問い掛ける。


「ブリュンヒルデ……この子、エリシラよね?分かるでしょ?……ブリュンヒルデも憶えているわよね!」


「落ち着け、イェンリン!確かに……面影はある。だが……私はブリュンヒルデという。失礼だが其方の御名前を伺ってもよろしいだろうか?」


ブリュンヒルデは努めて冷静に自ら名乗り、目の前にいる男女の名を問い掛けた。


「……マイベン=ビュラー侯爵の近衛騎士オリネシア=エックス」


「ハァ……同じくギャバン=ゴルゴダだ」


その名を聞いてイェンリンは瞳を見開くが、それはギャバンの名に驚いたからだ。


「ゴルゴダ!?―――ゴルゴダって、ゴルゴダ村のこと!?」


「ゴルゴダ村?……いや、そんな村は知らない。俺の名は後から付けられたものだ……だから本当の名ではない」


「本当の名じゃない……貴方、マルク=ラジウムでしょう?」


イェンリンは困惑しながらも妹と共に連れ去られた幼馴染の名を告げる。


「……悪いが俺は昔の記憶はない……名前が仮の名なのは、そういうことだ」


瞳を伏せながらギャバンがイェンリンの問いに答えた。


その言葉を聞いたイェンリンとブリュンヒルデの後ろには、いつの間にかゴンドゥルとアルヴィトもやってきて黙ってオリネシア達を見つめる。


「―――いつまで無駄話をしているの?ギャバン」


そこへグズグズしていることに苛立ちを覚えたオリネシアの声がギャバンに降り掛かる。


「ああ、すまない。そう言う訳だから、これで失礼する」


そう言い残してその場を去ろうとするオリネシアとギャバンの背中を見て、イェンリンの中で何かが爆発する―――


「ちょっと待って!―――」


―――追い縋ろうとするイェンリンに、オリネシアが再び振り返ると同時に右手が平手打ちしようとイェンリンの顔面に迫る。


一般の民だと思い込んでいるイェンリンに、その腕の速度も威力も命を奪うようなものではなかった。


しかし、だからといって戦いを知らない街の娘では確実に命中する一撃だ。


だが―――


「―――ッ!」


―――そのような威力の軌道を見切ることなど今のイェンリンには容易いことである。


平手打ちを見切った動きで回避すると同時に前へ出ようとしたイェンリンの身体から立ち昇る闘志を感知して、その筋肉の動きから此方へ向かってくると分かったオリネシア―――


(この子!―――只の街娘じゃない)


―――『身体加速』を発動したイェンリンの足が一瞬でオリネシアの懐まで迫ってくる。


その蒼い瞳にイェンリンの真紅の瞳が映るほど迫られた瞬間―――


―――オリネシアが後退した。


「いきなり人の顔を殴りにくるなんて、どんな育ち方してきたの……」


姉としてオリネシアを妹と確信して疑わないイェンリンは、その素行に複雑な心境だった。


エリシラと離れ離れになって七年―――


―――その間に体験してきたことはイェンリンも、人に胸を張り自慢出来るようなものではなかった。


「……貴方……冒険者?」


オリネシアはイェンリンの動きを見て、冒険者ではないかと疑っていた。


「さあ……どうかしら?」


真顔のイェンリンは周囲の人集りを気にして返事をはぐらかす。


「フ~ン……なかなか面白い子ね……いいわ、少しだけ遊んであげる―――」


そう言い終わるや否やオリネシアの姿が、イェンリンの視界から消えた。


すると次の瞬間、目の前にオリネシアが現れたかと思うとその手に剣を抜いている。


それを見てイェンリンは瞬間的にバックステップで間合いを取った。


(―――こんな人集りのいる中で剣を抜くなんて!?)


「キャアアア―――ッ!!」


「ああ、『剣聖』が剣を抜いたぞぉおお!!!」


周囲の民衆からは悲鳴と共にそんな声が上がり、蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ惑っていく。


「―――『剣聖』?」


街の者達の声から『剣聖』という言葉が引っ掛かったイェンリンだったが、民が逃げて行ったことを確認して『収納』から紅蓮剣=業炎を引き抜いた。


剣を握ったことを鋭い視線で射抜いたオリネシアは、


「受けてみなさい。凌げたなら、貴女を認めてあげる―――」


そう告げたと同時に、再びその場から姿を掻き消した。


その場から消えたオリネシアを追う様に視線を振るイェンリンだが、


(右じゃない!―――上だ!!)


次の瞬間、右から振れた残像のように現れて剣を横薙ぎにするオリネシアを無視して、手にした業炎を横へ向けて上に構える。


―――その瞬間、業炎の刃で激しい火花が散った。


「フッ……フフッ……本当に防いだ……」


正面にその姿を現したオリネシアが両手で握りしめた剣は、横に構えられた業炎の刃と打ち合い、ギリギリと金属が擦れる音を響かせながら押し込もうとしていた。


そんな中で乾いた笑いを浮かべたオリネシアが、スッと剣を退いて後ろに下がる。


「面白い子ね……私の剣を本当に凌ぐなんて」


オリネシアがそう言い放つと、そこで崩壊した屋敷の敷地から騒ぎを聞いて隊長と兵達が此方に向かってくる。


「―――『剣聖』様!!」


先頭の隊長が叫ぶ様子を見て、


「―――ここは一旦退くよ!イェンリン」


ゴンドゥルがイェンリンの肩を掴み強引に後ろに引きつけた。


「でも!―――ゴンドゥル!!あれは!!!」


「分かっているさ!だけどあんなに兵士が集まってきたら只じゃあ済まない!関係ない者まで斬るのかい?」


「うっ……クゥ!」


業炎の柄を握りしめたイェンリンは、その場で跳躍すると隣の屋敷の屋根の上まで一気に飛び上がる。


するとそれに続いてゴンドゥル、ブリュンヒルデ、アルヴィトも追い掛けるように、その場から跳躍して屋根へと飛び上がった。


そして屋根の上から地上を見つめたイェンリンは、


「エリシラ……マルク……」


一言そう呟いて、屋根の上を疾風のように駆け出した。


「逃がすなぁ!!―――追い掛けよ!!!」


地上の兵を率いる隊長は屋根の上を掛けていくイェンリン達へ追跡を命じる声を上げる。


その様子をオリネシアとギャバンは見ているだけだ。


「……お前の剣が防がれるのを見たのは初めてだ」


そう声を掛けるギャバンにオリネシアは振り返ることもなく、


「あれを見抜けた者はいないわ。その度に皆が違えず頭をカチ割られて逝ったもの……」


静かに答えながらも、その胸の内では『剣聖』の剣を防いだイェンリンに対する底知れぬ感情が湧き起こるのを感じていた。


(あの子は一体……)


自分のことを妹だと言ったイェンリンの姿が、オリネシアの脳裏に鮮烈に焼きつけられて離れることはなかった―――



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漫画をご担当くださいました森あいり先生!本当にありがとうございました!!

商業案件はこれにて終了ですがこれからも、どうぞ宜しくお願い致します☆


レビューも記入して頂けますと励みになりますので、宜しくお願い申し上げます。

感想頂いてとても励みになります!

誤字報告も本当にありがとうございます!


これからも宜しくお願い申し上げます!

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