謁見の儀
Xもよろしければフォローをお願いします!!
Xはじめました↓↓↓
https://x.com/KazBgd
pixivにて新規キャライメージ画像更新中!
※AI生成画像
https://www.pixiv.net/users/15342558
※モチベーションに繋がります!※
いいね・ブックマーク・評価☆☆☆☆☆採点いただけますと励みになります。よろしくお願いします。
―――セキト城の中庭に集まる群衆の中から独りで前へ進み出る者がいた。
「……あれが皇帝―――ヴァンヘルム=ホウム・ヴァーミリオンよ」
そう耳元で囁く紅蓮の言葉に、イェンリンの心臓はドクンッと強く鼓動を打つ―――
無言のままでイェンリンと紅蓮、そして十二名の紅の戦乙女の前に進み出てきた皇帝ヴァンヘルム。
金髪に帝冠を被り、王族の貴賓を漂わせる礼服と白いマントを纏う皇帝は、皇族を統べる覇気を放ち一歩一歩近づいてくる様子にイェンリンはゴクリと息を飲んだ。
そしてヴァンヘルムの後には皇太子カイザエルを筆頭に、ヴァーミリオン皇族と貴族達が皇帝に続いていった。
正面から向かってくるこの皇国の上級階級である皇族、貴族の一団にイェンリンは早くも表情が引き攣っていく。
「あら?どうしたの?イェンリン―――面白い顔をしているわよ?」
「……この状況で平然と出来るほど、私の神経太くないわよ?」
元々が皇帝と直接謁見出来るような立場ではないイェンリンにとって、向かいくる皇帝の一団など一生のうちでも御目に掛かることなどない。
これまでの人生の中で最大の波乱の舞台と化している。
しかし―――
「……」
―――無言のままイェンリン達の前に並ぶ紅の戦乙女と対峙する位置まで歩み出たヴァンヘルムだったが、
「―――えっ!?」
イェンリンが驚きの声をあげたのは、この国の皇帝が目の前で突然地面へ膝をついたからだ―――
ヴァンヘルムが膝をつくと同じくそれに従う皇太子を筆頭に皇族、貴族達も一斉にその場で膝をついて平伏していった。
その光景にイェンリンは驚いたまま固まってしまう。
「……紅神龍様におかれましては、御機嫌麗しゅう存じます」
先頭で平伏するヴァンヘルムが紅蓮に向かって挨拶を述べる。
「久しいわね―――ヴァンヘルムも壮健そうで何よりよ。今日は私の御子が生誕したことについて、本人も連れて挨拶に来たわ」
「態々此方の要望を御許し頂きまして、恐悦至極に存じます」
「いいのよ、別に。御子の生誕の際にはヴァーミリオン皇国皇帝と謁見を行うというのは、アルタニアとの約束だから。あの子は皇国を愛して止まない子だったから」
「国母様にもこの日を迎えられましたこと、心より感謝の祈りを捧げさせて頂きます」
「それは、あの子も喜ぶことでしょう。それで―――此方にいるのが私の新たな御子なのだけど、此処ではなんだから場所を移しましょうか」
「ハッ!―――では玉座の間へ御案内致します」
そう告げて立ち上がるヴァンヘルムとそれに従う皇太子、そして重臣達は一斉に移動を開始し始めた。
「では―――どうぞ、城内へ」
皇帝自らが案内するというあり得ない光景を前に、イェンリンは紅蓮に従い城の中へと向かっていくのだった―――
―――城内の長い廊下を進んでいく間に、
「……」
皇太子カイザエル=ディスト・ヴァーミリオンは、そっと振り返りながら流し目を後方へ向ける。
―――その視線の先には、
苛烈な真紅の色に染まったドレスを纏い―――
―――その首には黄金の首飾りが纏われ、それにはこの場にいる誰もが見たこともないほどの大きな宝石が鏤められ、
手首には黄金の腕輪が輝き、それにもまた宝石が光る―――
―――その金髪に真紅の髪が混ざった長い髪を靡かせ、赤い宝石を鏤めた銀の髪飾りを飾る若き美女がいる。
(美しい……あれが神龍に選ばれる者だというのか……)
視線に捉えたイェンリンから視線が外せなくなるほど、カイザエルにとって超越した存在である神龍に選ばれた御子は、これまでの人生の中で最も神聖な宝玉と見紛うほどの存在に見えていた。
当のイェンリンは初めて足を踏み入れた皇帝の城に、思わず周囲をキョロキョロと見渡していく。
(紅龍城とはまた違った雰囲気の城ね……どっちも凄いのは同じだけど……)
そんなことを思いながら長い廊下を進んでいくと、突き当りに巨大な両開きの扉が見えてくる。
その前に立っていた衛兵達が、皇帝の接近に応じてその取っ手へ手を伸ばすと皇帝の足を止めさせることがないように絶妙なタイミングで左右へ大きく開いていった―――
―――その先に見えてきたのは、
「此処は……」
扉から奥まで真っ直ぐに続く紅い絨毯の道と、その最奥に見える黄金で飾られた立派な二つの玉座だった―――
その絨毯の上を歩むヴァンヘルムと皇族達。
それとは別にこの場に集った貴族達は紅い絨毯の左右に別れて、紅蓮とイェンリンにその道を譲っていくようだった。
開かれた玉座までの絨毯を見て、イェンリンは再び息を飲んだ。
皇帝が玉座の前に到着した頃には、絨毯の左右に貴族達が立ち並んでいた。
そしてヴァンヘルムが振り返ると―――
―――それを見越した紅蓮が絨毯を踏み締めて前へ進む。
紅蓮の背中を追う様にしてイェンリンもまた絨毯の上を進んでいく。
やがて玉座の前で振り返ったヴァンヘルム達、この皇国の皇族達が少しだけ左右に別れて道を開けると、その間を紅蓮は真っ直ぐに玉座へと進む―――
―――イェンリンもまたその背中に従い、玉座に向かっていく。
二人が通り過ぎるとヴァンヘルム達は玉座に向かって振り返ると、再びその場で平伏した―――
―――それと同時に左右に並び立つ貴族達も一斉に膝をつく。
そうして壇を登り、そこに二つ並んだ玉座の前で振り返る紅蓮とイェンリン―――
―――すると紅蓮はその玉座に腰を下ろし、それを見届けてからイェンリンも恐る恐る玉座に腰掛けた。
「ヴァーミリオン皇国の皇帝とそれに連なる皆に告げる」
玉座に座る紅蓮が眼下で平伏する皇帝達に向けて言葉を放っていく。
「この度―――私は新たな御子を迎えて、この皇国に二百年振りの『御子』が生誕した」
そう告げると紅蓮は合図を送るようにイェンリンへ視線を向けた。
「ハァ……フゥ……」
(ここで……名乗りを上げるのが……『謁見の儀』……)
これまでの一連の流れは此処にくる以前に紅龍城で教えられていた通りに事態が動いていた。
しかし話通りであったとしても、イェンリンは大人びて見えると言っても十七歳の少女なのだ。
落ち着こうとして呼吸を整える間にも、玉座の間に集う者達の視線―――
―――期待
羨望―――
―――欲望
好奇―――
―――困惑
不安―――
―――各々の感情が浮かぶ眼差しを目の当りにして、イェンリンの頭の中が渦巻き、混乱し始めると、
【―――イェンリン】
「―――ッ!?」
そこで脳裏に響いてきたゴンドゥルの声に視線を並び立つ紅の戦乙女へと向けるイェンリン。
そこでゴンドゥルと目が合ったイェンリンに、再び声が頭の中で響く―――
【―――心配しなさんな。イェンリンはちゃんと出来ているよ。皇帝を前にしても平伏するなって言いつけも、しっかり守っていたじゃないか♪】
―――皇帝や皇族、貴族と対面しても平伏しないこと。
それはまず初めに紅蓮から教えられたことだった。
紅神龍とその御子が人間に跪くなどあり得ないことだと、なので誰に何を言われても膝はつくなと教えられていたからだ。
【こっちは膝が震えるくらいに怖かったわよ!】
『伝心』でそう言い返したイェンリンにゴンドゥルはニヤリとした笑みを浮かべる。
【何が起ころうとも、私と姉妹達が必ずお前を護るよ。だから―――今こそ此処で名乗りを上げる時だよ!】
ゴンドゥルの鼓舞がイェンリンの胸に安心感を植えつけた時、
「スゥ―――」
玉座で息を吸い込んだイェンリンは覚悟を決めた。
「我が名は―――炎零=ロッソ!!」
―――広い玉座の間に響き渡る御子の名乗りに、皇帝達が目を見開きながらジッとイェンリンを見つめる。
「ヴァーミリオン皇国の皆に告げる!紅神龍の御子となった我が身は、生涯この紅神龍―――紅蓮と共にあるわ!!」
左手に座る紅蓮に手を差し伸ばして宣言したイェンリン。
するとそこで紅蓮が続けて宣言する―――
「新たな御子より私は紅蓮の名を与えられ、契約を執り行ったわ。此処で皆に我が名も告げる―――この『紅神龍』紅蓮=クリムゾン・ドラゴンの名を努々忘れることのないように!」
「ハハァ―――ッ!!!」
紅蓮の宣言に皇帝達は一斉に深く伏礼するのだった―――
―――そこからは、皇帝達の番だった。
「御子殿―――改めて、余がこのヴァーミリオン皇国の皇帝ヴァンヘルム=ホウム・ヴァーミリオンだ。御見知りおきくだされ」
「イェンリン=ロッソといいます。皇帝陛下……此方こそ、よろしくお願いします」
皇帝と挨拶を交わす……それは十七歳の少女には余りに巨大な存在との邂逅だった。
そのことは隠している心算であっても皇帝として長く生きてきたヴァンヘルムの眼をもってすれば、すぐに見抜けることだった。
(これが紅神龍の御子……報告にあった通り、只の娘に見えるが……しかし何故であろう……この娘からは妙に何か高貴な気配……気品と言えばよいのか……その様な気配を感じる気がする……)
イェンリンの漂わせる高貴な血の者が持つ特有の気配を感じ取り、ヴァンヘルムは問い掛ける。
「御子殿は……どこかの王族か貴族の御息女だったのであろうか?」
「―――えっ!?王族!?貴族?……い、いいえ、違いますが……」
「フム……であるか……いや、失礼した。御子殿から高貴な血を持った者のような、そんな気配を感じたものでな」
その言葉にはイェンリンよりゴンドゥルが視線を鋭くしてヴァンヘルムを睨む。
だが当のイェンリンはまったく心当たりがないために、困惑するしかない。
その時―――
「ヴァンヘルム……私の御子に何か不審なところでも、あるのかしら?」
―――静かにヴァンヘルムへ問い掛ける紅蓮だが、その冷たい声と張り詰めた『威圧』が玉座の間に一瞬で広がった。
「ウグッ!?―――い、いや、失礼致しました!どうか、ご容赦ください……」
(抜かった!―――御子の素性を探ろうなどと、余計なところまで足を踏み入れすぎたか……)
そして、その『威圧』を受けた皇族、貴族達は全員が青い顔に変わり、中にはフラつく者まで出てくる始末だ。
(こ、これが紅神龍様……これほどの美しさでありながら、何と言う猛烈で苛烈な気配なのだ……父上がこの玉座の天井画が示す意味は見た通りではないと言った意味はこれか……)
カイザエルはこの謁見の前に父であるヴァンヘルムから告げられた天井画の意味について理解した思いだった。
その天井画を見上げる皇太子の視線に気がついた紅蓮は、
「……」
張り詰めていた『威圧』を波が退くように消し去っていった。
玉座の間に張り詰めた、冷たく重厚な空気が退いたことで皇帝達は肩の力を抜いて息を吐く。
「私も少し気が張ってしまったわね……さあ、其方の挨拶を続けるといいわ」
鋭い視線を浴びせながら、謁見の続きを求める紅蓮に皇太子は改めて息を飲む―――
「紅神龍様!御子様!―――ヴァーミリオン皇国皇太子カイザエル=ディスト・ヴァーミリオンと申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
意を決したカイザエルの挨拶に紅蓮はコクリと頷く。
「ヴァンヘルムの子だったわね……貴方が生まれた時、まだ赤子だった貴方を連れてヴァンヘルムが紅龍城まで謁見に来てくれたわ」
「なんと……そうでしたか」
そう口にしながら初めてその話を聞いたカイザエルは共に跪くヴァンヘルムに視線を向けた。
すると続いて女の声が響く―――
「御子様に挨拶をさせて頂きます。皇帝ヴァンヘルムの妃―――ネメリア=ツイス・ヴァーミリオンです」
―――その声を上げた者は藍色の髪を纏め、皇妃の冠を被る芳年の女だ。
「お元気そうね♪ ネメリア」
ネメリアに対して紅蓮は微笑みを浮かべて声を掛ける。
「はい♪ 紅神龍様―――紅蓮様も相変わらず御美しいことで、羨ましいですわ♪」
その軽やかな口調と態度にイェンリンは、
(この方が皇妃様……ある意味、この場で一番大物なんじゃないかしら?)
微笑みを浮かべる皇妃ネメリアに大物の雰囲気を感じ取っていた。
「いいえ、ネメリア。本当に美しいのは貴女よ。人は生きて歳を重ねることで、その美しさを増していくの……生涯を通して輝いていくのよ」
「ありがとうございます♪ 紅蓮様の金言を忘れぬように、確かにこの胸へ刻みつけておきますわ」
ネメリアが紅蓮に感謝の言葉を告げた時、隣に控えていた者が声を上げる。
「御挨拶させて頂きます。ヴァーミリオン皇国第二皇女―――シータ=ヘイン・ヴァーミリオンと申します」
―――長い水色の髪をした蒼い瞳の皇女はイェンリンが目を見開くほど美しい少女だった。
これがイェンリンと、その生涯の友となる皇女シータとの邂逅だった―――
いいね・ブックマーク・評価☆☆☆☆☆採点いただけますと励みになります。よろしくお願いします。
レビューも記入して頂けますと励みになりますので、宜しくお願い申し上げます。
感想頂いてとても励みになります!
誤字報告も本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願い申し上げます!




